坂道発進とは、上り坂の中腹でバイクを停車し、後方確認をした後に発進するというシンプルなもの。検定で失敗する人は少なく、比較的難易度は低い項目ではあるが、スラロームやクランクなどと異なり公道で実際に使うことが多い項目である。
一度停車するのは混雑時に停車することを想定しているからで、後ろに下がってはいけないのは後ろにクルマがいることを想定しているためだ。平地での発進と異なるのは、アクセルの回転数を平地より上げる必要がある点。通常、少しの回転またはアクセルを開けていない状態でもクラッチをつなげばバイクは動き出すけれど、上り坂だとクラッチをつないだだけでは後ろに下がろうとする力が勝り、エンストしてしまう。そのため半クラの維持とアクセルの回転数を高めに保つことが重要なのだ。
坂道発進のポイントは“あわてずに順序を踏む”こと!
①坂の中腹に停止
まずは坂道の中腹に停止。この項目では1速以上は一切使わないので、ギヤチェンジは必要ないぞ。リヤブレーキを使うため、左足を下ろし、右足はリヤブレーキの上に置くこと。もちろん、停止してから乗せ換えてもOK。
また、停止時はフロントブレーキも使って停止すること。足を乗せ換える場合はフロントブレーキを握っていないと後ろに下がってしまうぞ。
②後方確認は怠らない!
いつ、何が起こるかわからない公道を想定しての坂道発進。後ろに危険がないか目視で確認してから発進しよう。この時点でアクセルを開けたり半クラにする必要はなく、ふらつかないように停車姿勢を保っておくことが重要だ。足の着いていない側にバイクが傾くと不安定になるので要注意。タイムを計測されることはないので、慌てずゆっくり行なおう。あせりは禁物だ。
③エンジンの回転数を2,000~3,000回転でキープ
リヤブレーキをしっかり踏んで、後退しないことを確認し、フロントブレーキから手を離してアクセルを開け始める。大体2,000~3,000回転をキープ。アクセル回転数は平地での練習段階でキープできるようになっておくと、発進がスムーズにできるようになるぞ。
④半クラ状態をキープしてスタンバイ!
アクセルを安定させたらリヤブレーキは踏んだまま、クラッチを半クラ状態にする。半クラになっている感覚がイマイチわからないという人は、“音”に注目してほしい。徐々にクラッチをつなげていくと、音が変わるところがあるのだ。
これがクラッチが切れていた状態からクラッチがつながりはじめ、走り出せる状態になった証拠で、いわゆる半クラだ。半クラになったらそれ以上つないでしまわないよう注意して、キープする。リヤブレーキを踏んだまま、完全にクラッチをつなぎ切ってしまうとエンストしてしまう。
⑤リヤブレーキは“じわ~”っと離す
アクセルを2,000~3,000回転で固定し、半クラにする、あとはリヤブレーキを離せばバイクは進みだす。このとき、いきなりリヤブレーキを離してしまうとスピードが出すぎてしまうので、ゆっくりジワーっと繋いでいくことで、急な発進を防いでくれる。リヤブレーキは足の指の腹で踏むと微細な調節を行ないやすい。
エンストしても慌てない!
エンストをしても慌てないこと。1速に入った状態なら、少しだけ後退したとしてもそのまま下っていくことはない。一度深呼吸をして、再びエンジンをかけ、発進までの動作をやり直そう。
まとめ
坂道発進は順序よく行えば決して難しい内容ではない。検定ではタイム設定がないので、慌てずひと息ついてから行なうといいだろう。慣れれば③〜⑤の手順をほぼ同時にこなすことができるけれど、慣れないうちは一つひとつ確認しよう。
下り坂ではどうするの?
上りと同じ要領で。クラッチを切ったまま下るのは×
下り坂での発進も基本は同じ。ただ、回転数を2,000~3,000回転まで上げると下りのためスピードが出すぎてしまうため、回転数は下げて発進しよう。クラッチを切ってしまえば勝手に下ってくれるわけだけれど、これはタイヤに動力が伝わっていない状態で車両が不安定なので、基本的にクラッチを切って進むことはしない。
気をつけるべき坂道発進検定の減点ポイント
後退は検定マイナスの原因!下がりすぎには要注意!
❶30㎝以上~50㎝未満 ⇒ 10点減点
❷50㎝以上~1m未満 ⇒ 20点減点
❸1m以上 ⇒ 検定中止
実は下がった距離によって減点点数が異なるのだ。上記のとおりで、1m以上後退してしまったら検定中止だ。後退してしまう原因はただ一つ、リヤブレーキを早くに離してしまうことにある。アクセルを回して、クラッチを半クラ状態にし、いつでも動き出せる状態を整えてからリヤブレーキを離すこと。
4回エンストをしてしまうと検定中止
1~3回目までは減点だけれど、4回エンストすると検定中止だ。1度エンストしてしまったからといってあわてず、落ち着いて発進の動作に移るべし。エンスト時は1速に入っているためそのまま後ろに下がっていってしまう心配はないぞ。慌ててクラッチを握らないこと。
転倒はいつでも検定中止!
基本中の基本だけれど、転倒はNG。傾斜が付いているため不安定になりがちで、エンストしてバランスをくずしてそのままガシャン…、なんてことが想定される。また、リヤブレーキを踏んでいないといけないため、足の乗せ換えが怖い場合はあらかじめ左足を下ろすことを意識しよう。