ブレーキの比率は前7:後3、タイヤをロックさせない事が大事!急制動

教習項目の急制動では40㎞/hまで加速してから、指定された位置で止まる練習をすることで、短い距離で止まる技術を磨くことになる。急ブレーキをかけるため転倒する確率も高く、苦手な人も多い。

しかしながら、人やクルマが急に飛び出してきたりなど、道路を走っていれば、やむを得ず急ブレーキをかけなければならないときがある。そんなときにできるだけ短い距離で止まることは、自身の身を守るうえでも重要なことだ。正しいブレーキングを覚えれば、急ブレーキでも安定した停止ができるようになる。そんな急制動のポイントをここでは紹介しよう。

急制動の手順

急制動図解

急制動の手順図解、①3足まで使って加速 ②前後ブレーキをかける ③足を着いて停止

種別 指示速度 急停止区間
乾燥時 湿潤時
大型二輪/普通二輪 40㎞/h 11m 14m
小型限定普通二輪 30㎞/h 8m 11m

普通二輪免許の場合、急停止区間(制動開始地点から停止距離境界線まで)の距離は晴れ(ドライ路面)で8m、雨(ウェット路面)のときは14mだ。この距離内で完全に停止することが求められる。

①3速まで使って加速

急制動の教習で加速している様子

 

3速でパイロンにさしかかるのがルール。とはいえあまりに急いで3速までシフトアップしてしまうと、規定の40㎞/hに到達できないことも。これは加速力が大きい1速や2速をあまり使えていない証拠だ。しっかり1速と2速で35㎞/hくらいまで加速してから3速にギヤチェンジしよう。

 

加速エリアの最後はアクセルを完全に戻して惰性走行でパイロンに向かうのが教官のオススメ。そうすることで、パイロンにさしかかってからアクセルをオフにする操作が一つ減り、ブレーキングに集中できる。ただし、惰性走行では速度が少しづつ落ちるので、速度不足にならないように注意しよう。

急制動の制動開始地点より、これぐらい前に40㎞/hまで加速
これぐらいの距離までに40㎞/hまで加速できれば余裕がうまれる

②前後ブレーキをかける

急制動で前輪が制動開始地点のパイロンにさしかかったらブレーキング開始

 

前輪がパイロンにさしかかったら、前後ブレーキをかける。前7:後3ぐらいの割合でブレーキをかけるとバランスよく減速でき、タイヤもロックしづらい。この時、停止線が気になると思うが目線が下がりすぎると車体が不安定になりやすいので注意すること。

 

クラッチを切るタイミングは停止する直前にしよう。早い段階からクラッチを切るとエンジンブレーキが効かなくなり制動距離が伸びてしまう。急制動ではエンストしても減点はないのでブレーキングに集中しよう。教習所によってはクラッチを切らずエンストするように指導される場合もあるぞ。

③足を着いて停止

右足はリヤブレーキを踏み続け、左足をついて停止しよう。ギヤを1速まで落とすときは足を踏み変えて操作する。

 

 

タイヤのロック、転倒を回避するためのコツ

タイヤのロックとは?

バイクの後輪がロックしている状態
これは後輪がロックした状態。前輪は回っているが、後輪は回転を止めているのがわかる。うっすら見える白煙は、路面とタイヤが激しく摩擦し合って生まれたもの

 

タイヤがロックするとはどういうことなのか? 端的に言うと、車体が進み続けているのにタイヤの回転は止まっていて、タイヤが路面上を滑っている状態。前後ブレーキのバランスがうまく取れておらず、全力で急ブレーキをかけるとこの状態が起こりやすい。

実際に経験をしたことがないと、思いっきりブレーキをかけて“ギャギャギャッ”と音を鳴らすようなブレーキングの方が早く止まると思っている人がいるかもしれないけれど、それは大きな間違い。タイヤがロックして路面上を滑ってしまうと制動距離が伸びてしまうだけでなく、操舵が効かなくなり最悪の場合、転倒の危険性もあるぞ。

 

急制動の項目では、一瞬のブレーキングの間でも段階的にブレーキをかけ、“これ以上強くかけるとタイヤがロックしてしまう”という感覚を教習中に養うことが重要だ。

 

停止の基本は前後ブレーキ

 なかには“フロントブレーキの方が強く効くから、急制動ではフロントブレーキだけ使いたい!”という人や“フロントブレーキはにぎりゴケしそうだから、リヤブレーキだけ使いたい!”と考える人もいるかもしれない。

しかし、どちらも間違いだ。実際に試してみるとわかるが、フロントブレーキだけだと車体が前のめりになって、フロントブレーキがロックしやすくなり、転倒する可能性が高くなる。

一方、リヤブレーキだけだと、リヤタイヤがロックする可能性が高くなるうえに制動力が足りなくて指定された停止位置を通りすぎてしまうケースも。

前後どちらかだけの急ブレーキは、タイヤがロックする原因になることを忘れずに。

 

ブレーキは、前後を7:3ぐらいの割合で両方とも使うようにしよう。短い距離で止まるために、制動力の大きいフロントブレーキをメインに使うことになるのだが、リヤブレーキも使うことで車体が後方にも沈み込み、車体が前のめりになって不安定になることを防いでくれるのだ。

フロントブレーキは段階的に握ろう

バイクのフロントブレーキを段階的にかけている様子
最初は“グッ”と、徐々に”ギュゥウウ”と段階的に握りこむ

 

個人の握力にもよるので一概には言えないが、人によってはフロントブレーキをいきなりガツン!と握ると、フロントタイヤがロックしやすい。

フロントタイヤをロックさせないコツは、はじめに指の第2関節がやや曲がる程度まで“グッ”とにぎり、そこから徐々に“ギュゥウウ”と握り込むようにすること。

一瞬の間でも段階的なブレーキ操作を心がけよう。練習を重ねるとブレーキングによってタイヤがどの程度路面に押し付けられているのか、レバーにかけた指を通して伝わってくるハズ。タイヤのロックを防ぐ大切な技術だ。

ニーグリップを中心とした正しい姿勢でのぞもう

安定したブレーキングができるようになるには、手先足先のブレーキ操作だけでなく、姿勢も大事だ。急制動の際は、減速に伴って前方へと大きな荷重がかかる。このとき、ニーグリップができていない上に、腕に力を入れて突っ張っているような状態ではブレーキ操作に支障をきたすだけでなく、ハンドルが振られて転倒しやすい。

ニーグリップをしっかりすることで、制動時も体幹でしっかりと上半身を支えられる。それでもかかる上半身の荷重は軽く曲げた腕で吸収するようにしよう。

 

注意しよう!検定中止・減点ポイント

転倒・急停止区間超過は検定中止

転倒してしまったり、決められた距離内で停止できなかった場合は即検定中止になってしまう。

速度不足が2回続くと検定中止

制動開始時の速度が足りなかったときやブレーキをかけるのが速すぎた場合はもう一度挑戦できる。しかし、2回目も同じミスをすると検定中止になるので注意。

タイヤをロックさせると減点

単にタイヤがロックしただけのときや、ロックしてふらついた場合などで減点数は変わってくる。急制動ではタイヤをロックさせないように気をつけよう。

この記事が気に入ったら
いいね!とフォローしよう

タンデムスタイルの最新の情報をお届けします