新車納車時はまだ完璧な状態にはなっていない。ならし運転で愛車をベストコンディションまでもっていこう
工業製品であるバイクは、厳格な検査を経てから僕らのもとへとやってくる。しかし、実際に走らせてみて外気温の変化や激しい振動にさらされると、各部に異常が起きるという可能性もゼロではない。また、新車時は各部のパーツ同士が十分になじんでいないため、穏やかに動かすことでそれらのパーツの組み合う部分にあたりを付けていく作業も必要となる。初めは本来の性能を安心して引き出せる、ベストコンディションではないのだ。
そういった理由から必要になってくるのがならし運転。いきなり最大の性能を引き出そうとせず、穏やかな操作をしてマシンを安定した状態にするのだ。もちろん、現代の加工技術は飛躍的に進歩しており、出荷時にはバリ(材料を加工する際にできる突起物)もほとんど残されていない。納車されてすぐアクセルを全開にしても直ちに壊れるということはないが、ならし運転をした方が故障する時期が遅くなるともいわれているぞ。慣らし運転が終わったら、初回点検を受けに行こう。
具体的にどんな操作をするの?
- 回転数をタコメーター最大値の半分までとする
- フルスロットルにしない
- なるべく多くのギヤを使う
- 急停止、急激な加速はできるだけ避ける
これらを大体1,000km走行するまで行ない、初回点検を受ける
エンジンは金属部品の塊である!
エンジン以外もならしが必要!
もちろんエンジン以外だって各種部品が組み合わさってできている。公道で実際に生じる振動などにさらすことで、それらも接続部がなじんでいくのだ。エンジンの扱い方以外にも、発進、加速、停止、旋回…すべての動作を丁寧に行ないたい。
のんびり走るという訳ではない!
“ならし運転期間中は各部に負荷をかけないよう、ゆっくり運転すればいい”と思ってしまいがちだが、それは間違い。低速ギヤばかり使用していると高速ギヤがなじまないし、高速度域での負荷に車体がなじまない。適度にアクセルを開けるべきところでは開け、ギヤをチェンジしよう。その際はラフに開けるのではなく丁寧に開ける。ゆっくり運転するというより、丁寧に操作すると心がけてほしい。
レッドゾーンは高効率の状態ではない!
よく“レッドゾーンはエンジンがもっともハイパフォーマンスになる回転数”と勘違いしている人もいるが、それは間違い。もっとも運動効率がいい回転数はスペック表の“最高出力”に示されている数値で、それ以上はいくら回しても効率がよくならない。レッドゾーンは過剰なまでに回転数が上がりエンジンに負荷がかかっている状況で、そこを使い続けているとエンジンが破損してしまうぞ。
自分の体もならそう!
機械部品にばかり触れてしまったが、ライダー自身がそのバイクになれることもならし運転の目的の一つ。加速具合はどの程度なのか、どのぐらいまでバンクできるのか、ブレーキはどの程度の効きなのか…、などがよくわからないまま急のつく運転をすることは危険だ。1,000km走ったあとでも、運転が不安だと思うならならし運転を続行しよう。
タコメーターがない場合は?
タコメーターがない車両の場合、エンジンの回転数がわからないためギヤチェンジのタイミングがわかりづらい。取扱説明書に各速度域で使用するギヤが書いてあるので、参考にしよう。実際に乗ってみるとわかるが、エンジンが苦しそうな音を上げたらシフトアップを、車体がガタガタと揺れノッキングを起こしているようなら早々にシフトダウンしよう。