昨今“煽り運転”の報道で注目を集めるようになったドライブレコーダー。もちろんバイク用もラインナップに存在していて、各社からリリースされている。しかし使ったことがある人はまだまだ少数派だろう。そこで「バイク用ドライブレコーダーって何さ? どうなのよ?」という疑問を解決すべく、ここでは解説していきたい。
悲しいかな冷たい現実もある日本の交通事情
昨今はニュースとして取り上げられる機会が減っているが、少し前まで世間を賑わせていた“煽り運転”。故意に相手の運転を妨害したり著しく安全を損なう交通行為には減点15点(免許取り消し)と1年以上の失格期間を設けることを検討中だそうだが、煽り運転のニュースが流れるようになってから、俄然注目を集めているのがドライブレコーダーだ。
バイクは残念ながら、交通というピラミッドにあってクルマの下位にいる存在だ。クルマとバイクが接触事故を起こしたとして、バイクが一方的に無謀運転していたと見なされることはめずらしくない話だ。交通弱者であるバイク側は、そんな世間の偏見からも身を守るための手段を用意しなければならないのが、悲しいかな現実。事故に遭ったのが目撃者が多いであろう都心部ならまだしも、山奥をソロでツーリングしているときに事故に遭ったとしたら、誰が自分の正当性を第三者として証明してくれるのだろうか?
そう、「身を守るため」とは先に書いたが、ドライブレコーダーは直接的にはライダーを保護してくれるわけではない。最悪の事態になったとき、そのうえ汚名を着せられるのを防ぐための防御策ともいってしまっていいだろう。最後の最後にライダーの名誉と尊厳を守るため、事故の真実を客観的に記録するためのツール。ものすごく大げさに言ってしまえばそういうことだ。
事故時の現実と注意しておくべきこと
- 事故に巻き込まれた時、いまだに残る偏見からバイクの方が不利な立場に置かれる可能性がないとは言い切れない
- 重要なのは自分の正当性を証明してくれる客観的証拠
ドライブレコーダーは、いつ起きるかわからない事故や交通トラブルを記録し続けてくれる
基本的に、事故はどんな状況で発生するのかわからない。事故を起こしそうだと予見はできたとしても、相手もいる以上は完全に防ぐことが困難だ。そのためドライブレコーダーは稼働時間が10時間だとか、あるいはエンジンがかかっている状態をつねに保存可能にしていることがほとんど。そして衝撃を検知するための加速度センサーを備えることで、事故発生の瞬間および直前を録画できるモノも多い。しかも録画時にも衝撃を検知したらデータを上書きせずロックしたり、位置や速度、衝撃が生じた時刻を正確に記録するためのGPS機能も搭載されていることがめずらしくなくなった。さらに、ドライブレコーダーは車両の前後にカメラ2台を備えるモノもあるので、真横から突っ込まれたといった不運な状況であっても、カメラの画角の広さでほぼバイク全周を記録できるのだ。
肝心の画質はというと、いわゆる4Kや8Kほどとはいかないまでもハイダイナミックレンジ(HDR)といった技術を駆使し、はっきりと状況を記録するためにチューニングされている。そのためたとえば夜間、あるいは逆光下でも鮮明に状況を記録可能となっている。
ドライブレコーダーの特徴
- 長時間または常に走行時の映像を取り続けてくれる
- 単純な画素数よりも証拠能力としての画像の鮮明さを重視
製品によって付加されている様々な機能
以下の機能は全ての製品についているものではないが、選ぶ際に比較検討のためのポイントとなるだろう。ただし機能が充実するほど価格も高くなる傾向があるので、自分がどの機能を重視するかを予算と相談しながら選ぼう。
前後同時撮影機能
2台のカメラを設置することで、前方だけでなく後方の映像も同時に撮影。特に後方から煽られるなどの被害には効果的。
衝突検知機能・Gセンサー
事故時の衝撃や急な減速を検知して映像を上書きしないようロックしたり、専用のフォルダに保存してくれる。
GPS機能
映像と共にGPS信号を記録することで、走行時のルートや速度を専用ビューワーアプリなどで確認できる。
HDR/WDR機能
ハイダイナミックレンジやワイドダイナミックレンジの略で、逆光や夜間といった映像中に明るい部分と暗い部分が混在していても鮮明に記録してくれる。
LED信号機に最適化されたフレームレート
目に見えない速さで点滅しているLED信号機を、肉眼と同じように記録するために通常のカメラと異なるフレームレート(27.5fpsや29fpsなど)を採用。
アクションカメラ機能
バイクから外して内蔵バッテリーで駆動し、アクションカメラとしても使用できる。専用のアタッチメントと組み合わせて身につけたり、水中を撮影できる製品もある。
バイク用とクルマ用とでドライブレコーダーの性能に違いはあるのか?
ちなみにバイク用はキチンと防水仕様になるなど全天候型のモノがほとんどなのでご安心を。雨天だから使えないようでは意味がないからだ。そういった意味で、安価なクルマ用をバイクに転用するのは正直、賛成しがたい。バイクとクルマとの間には決定的な違いがあるからだ。それは天候
まず天候の影響だが、クルマ用ドライブレコーダーは基本的に車外に装着されない。装着場所はリヤウインドの内側だったり、ルームミラー下側に配置するといった具合だ。そのため防水性は皆無ともいっていいだろう。その点、バイクは幸か不幸かすべてが露出する形になるので、カメラやレコーダーなど積載パーツには高い防水性が求められている。そのため安心してバイク用は全天候型として使用できるのだ。
続いて振動についても触れよう。バイクユーザーは“バイクとはエンジンや路面の凹凸により多少は振動していてあたり前”として認識している人も多いだろうが、バイクは車体の前後、というか末端になるほどに振動が増幅される。ウインカーやナンバープレート、ミラーがブルブル震えたり、グリップに振動が伝わってきやすいのはそのためだ。さて、それを踏まえてドライブレコーダーはどこに装着しよう? そう、車体の全周、とくに前後を広く撮影するには、前後の末端が一番望ましい。だからバイク用は自然と耐震性が高められているモノが多いのだ。しかしクルマ用はそうもいかない。そもそもクルマの車内に設置する前提なのだから、そういった耐震性を考慮する必然性が低い。クルマ用に安価な製品も多いのは、そういった対策をせずにすむのでコストを抑えることができるからだ。もちろん耐震性に乏しい製品をバイクに装着すれば、どうなるかは明らか。万一に備えるという目的でドライブレコーダーを装着したいなら、バイク用を使うよう強くお勧めしておきたい。
クルマ用に比べバイク用が優れている点
- 雨に濡れても大丈夫なよう防水仕様になっている
- クルマ用に比べ耐震性能が高いものが多い
これから、ドライブレコーダーの需要はますます増加すると見込まれていて、各社からさまざまなラインナップがリリースされている。みなさんも万一に備えるうえでもドライブレコーダーをぜひ活用していただきたい。