ポルトガルのブランド、AJPが発売している水冷単気筒エンジンを搭載した250cエンデューロモデル“SPR250”。それを夏のスキーゲレンデコースでテストライドできた。独特な作り込みによる走りはいかなるものか。
文:濱矢文夫/写真:関野 温
“扱いやすさ”は大きな魅力である
AJP SPR250のスタイリング
高い走破性がありながら乗り手を選ばないやさしさ
とにかくエンジンや足まわりに、乗り手を選ぶようなとがったところがない。でも、試乗した広大な夏のスキー場にあった急な上り下り、ホコリ立つ乾いた土、水分を含んだ土、凸凹が大きく、ときには石がゴロゴロした場所などで困ることなく、走破していける実力を持っている。ポルトガルで誕生したAJPブランドのSPR250に乗ってみた感想を手短にまとめるとこうなる。ストリートで使える国産デュアルパーパスモデルよりオフロードバイクとして確実に高性能で、レーサーに近い。だけどオフロード入門者が乗ると取って食われるんじゃないかと思うような、レース専用車にありがちな荒々しいところは皆無。
他メーカーのモデルにも使われている中国ゾンシェン製ショートストローク水冷単気筒249㏄エンジンは、AJP独自のECUセッティングになっていて、スロットルを開けるとガツンと急に大きな力が出てくるのではなく、角をおとしたような印象。低回転域からフラットなトルクが出てくる。決してパワフルではないけれど、誰もが怖がることなく使えるフィーリングなのだ。
前後300㎜と、凸凹道をいなして走るのには申し分のないストロークを持ったZFザックス製クッションユニットを使っていて、どんな場面でもリヤタイヤを路面に押し付けトラクションさせやすい。足はフロントも含めて初期の動きが実にソフトでスムーズ。さらにフルアジャスタブルだから自分の好みやシチュエーションに合わせたセッティングを追求することもできる。
これに加えて、9ℓ容量の樹脂製燃料タンクを一般的なライダー前ではなく、サイドパネルをかねたシート下に配置しており、バッテリーは右シュラウドの中。これらによって手に入れた前後の重量バランスからきていると思われるのだが、連続する起伏を乗り越えるときの、ライダーを中心にして前後に回転しようとする動きの収まりがいい。この特性はサスペンションのおかげだけではないだろう。
とくに気に入ったのは、オフロードで必要になるスタンディング姿勢がとりやすいところ。樹脂燃料タンクの側面がオフロードブーツの内側ではさみやすい形状でホールド感がよく、そのまま腰下で操れるような感覚だ。
あまり目を三角にしないエンデューロレースから、ナンバーを付けて林道を楽しく走ることまで幅広く使える魅力。レーサーまでは必要ないが、一般的なトレールモデルよりもっと高性能なモノがほしいと思っている人にぴったりくる1台だ。
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- 問い合わせ先
- AJPモトジャパン
- URL
- http://www.ajp-moto.jp
※記事の内容はNo.243(2022年6月24日)発売当時のものになります