スクーターらしからぬスタイルで圧倒的なオリジナリティを感じさせるドラッグスター。181㏄エンジンを採用する200と共通の車体と124㏄エンジンの組み合わせははたしてどうなのか? そのパフォーマンスに迫る。
写真:南 孝幸
走ること自体に楽しさを感じさせてくれる
ITALJET DRAGSTER 125のスタイリング
そのフィーリングはまるで2ストロークモデル
239号で200のインプレッションを掲載したドラッグスターの125バージョンのインプレッションだ。ざっと車両に関するおさらいをすると、ドラッグスターというスクーターが最初に登場したのは1998年。フルカバードされた車体が一般的だった時代にハブセンター・ステアリングとむき出しのトラスフレームを組み合わせた斬新なスタイルは大いに注目を集めた。
その後、一度メーカーが倒産するなど紆余曲折があり、国内においてもその名前がほぼ忘れ去られた2019年に、イタリアのEICMA(ミラノショー)で新型ドラッグスターが発表されたのだ。初代のスタイルをオマージュしたハブセンター・ステアリングと丸見えのトラスフレームを採用し、さらに時代性を加味したスタイルは、日本国内においても大いに注目を集めた。当初は早々に発売されるはずだったが、新型コロナウイルスの影響などでなかなか生産がスタートせず、この春にやっと国内デリバリーが始まったのである。
125は先に紹介した200と共通の車体に124㏄のエンジンを搭載している。そのため2車の間に外観上における差はほぼない。車重も同じで、200㏄クラスだと乾燥重量124㎏は軽量な部類に入るけれど、原付二種クラスだと重めとなる。とはいえ実際に押し歩く際の印象は軽い。ハブセンター・ステアリングだとハンドルの切れ角が確保しずらいといわれているけれど、意外と切れて取りまわしがしづらい印象がなかったことも付け加えておこう。
またがって最初に“おっ!”と思ったのはシートの硬さだ。多くのスクーターは快適性を求めて厚みのあるウレタンを採用した柔らかめのシートになっている。ところがドラッグスターはスーパースポーツのような硬めのウレタンを使った薄手のシートで、その形状もスーパースポーツのそれに近い。座り心地も硬さを感じるのだが、座り続けていてもすぐにお尻が痛くなるようなことはない。逆にお尻を動かした積極的な走らせ方をする際には、この硬さがちょうどいいのだ。
先に断っておきたいのが、試乗車両にはアクラポビッチのマフラーと駆動系にマロッシのパーツが組み込まれていたこと。その状態で国産の原付二種モデルのような感覚でゆっくりめにスロットルを操作すると、発進時にもたつく印象を受けた。そう、かなり回転数が上がってからクラッチがミートするのだ。そこでそのタイムラグを考慮して勢いよくスロットルを動かすようにすると、そのフラストレーションからは解放された。
クラッチがつながってからはパワフルな加速を見せてくれる。そう、まるでパワーバンドが狭い昔の2ストロークモデルのようなフィーリングなのだ。これを味ととるかは個人の裁量だが、高回転を維持して走る技術を身に付けることは、ライディングテクニックの向上につながることは間違いない。
ブレーキは前後のキャリパーに定評のあるブレンボ製を採用して、ローターはフロントφ200㎜、リヤφ190㎜の見た目の印象もいいペータルタイプを使用する。この組み合わせで必要十分な制動力があるし、効き具合も把握しやすい。
サスペンションは、前後ともプリロード、フロントの減衰力も調整できる、クラスを超えたショックを採用する。これはセットアップして走りを楽しんでほしいというメーカーからのメッセージとも受け取れる。さらにフロントのハブセンター・ステアリングの動きが特徴的だ。フロントブレーキを強めにかけてもノーズダイブしないから、最初は違和感がある。ただし、慣れてくればその安定性に裏打ちされた安心感で、コーナーに対して積極的になっていける。そう、ゴミゴミした街中だろうとワインディングのような快走路だろうと場所を選ばず、とにかく走らせることが楽しいのだ。乗り始めでようす見的にゆっくり走っていたときは、ちょっと車体の剛性が高い印象があったけれど、走らせる楽しさに急かされるようにペースアップしていくと、その感覚はなくなっていった。
原付二種スクーターでも、単なる移動の足としてだけじゃなく、走る楽しさを存分に味わいたいと思っている人だっているだろう。シート下トランクの容量が少なかったりと、利便性が犠牲になっているところはあるけれど、ドラッグスターであれば、その思いを十分に叶えてくれることは間違いないだろう。
インプレッション by スタッフ・カトー
見た目がとにかく異端児なドラッグスター。実は走りにもその異端さが表れていて、ハブセンター・ステアリングの搭載により、フロントブレ―キをかけてもフロントが沈まない。だからといって乗りづらいというわけではない。走りに関してはスポーティそのもので、キビキビとした走りがとても得意なのだと感じた。停止状態からスロットルを思いっきり開けば力強く発進し、コーナーではタイトな場所でもテンポよく切り返しが可能。ハンドルの切れ角は、リッタースーパースポーツ並みに狭いものの小回りは利き、ハンドリングも軽快だ。
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※記事の内容はNo.244(2022年7月23日)発売当時のものになります