2020年に登場した1290スーパーデュークRに、電子制御サスペンションというさらなる武器を手にしたエボが登場した。最新でデュークシリーズ最高峰の走りをストリートで味わった。その印象はいかなるものなのか?
文:濱矢文夫/写真:関野 温
最上級の野獣はスポーツ度も最上級!
高性能&ハイパワーを自由自在にできる楽しさ
1301㏄としては軽い方だが、動き出すとさらに軽く感じる。適度な前傾姿勢で思った方向へすばやく動けるフットワークはすべてのデュークシリーズに通じるもの。とくにこの最上級のビーストは当然のように走りのレベルが高く、公道のスピードでへこたれるような部分なんて見当たらない。自由自在な感覚はスポーツライディング好きのツボにハマる。
コーナーへ向けてリーンさせ始めると、速度に合わせて自然にステアして、そこから急な動きがなく安定したまま、さっと旋回が終わる。スロットルを開けていくと、180㎰を発揮する水冷4ストロークDOHC75度Vツインエンジンが “待ってました!” と、ライダーを “速い” という言葉以外思いつかないほど加速が楽しい世界へ連れて行く。
ライディングモードを “スポーツ” にしてもレスポンスは鋭くなるが、取って食われるような恐怖心はない。よりマイルドな “ストリート” モードとは違い、電子制御の介入がひかえめとなり、何も考えず不用意にフルスロットルをすると、さっきまでしっかり抑えてくれていたフロントが持ち上がる動きがいくぶんか開放されたのがわかるくらい。ところどころ路面が荒れていたり、うねりがあったりしても、足はしなやかに追従。スタビリティやトラクションさせる能力はいかにもモダンスーパースポーツといったところだ。
野獣のごとく荒々しいイメージながら、インテリジェンスを感じさせる節度ある落ち着いた特性。スピードをのせていってもφ320㎜のディスクローター2枚をブレンボ製モノブロックキャリパーで挟み込むフロントブレーキと、純正タイヤのブリヂストン製S22の安定したグリップ力による減速は強力無比で制御もしやすい。
1290スーパーデュークRをベースにしたこのエボの最大の注目ポイントは、足まわりのアップグレードだ。電子制御ダンピングを備えたセミアクティブサスペンションになっている。この試乗では走行状況に合わせたダンピングを瞬時に変更してくれる “オート” で走った。具体的に他のダンピングモードと比較するまでは至らなかったが、不満となる動きは日常領域で出てこず、安定感は損なわない。トリッキーな動きはこれっぽっちも見せず旋回もたやすい。スタイリッシュな姿にひかれたならば、ビギナーでもおもしろく乗ることはできるだろう。ただ、すぐれた電子制御技術が山盛りで、エンジンの特性も選べるから、もっと走りをロジカルに判断できる知識と経験があったら、さらに深く楽しい世界を楽しむことができるぞ!!
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※記事の内容はNo.245(2022年8月24日)発売当時のものになります