昨年の暮にドゥカティが発表した“デザートX”をストリートで試乗。アドベンチャーツアラーよりもっとダート走行に特化した仕様だが、舗装路ではいったいどんな走りなのか? レポートしよう!
文:濱矢文夫/写真:関野 温
21インチホイールを感じさせない旋回性
DUCATI DESERT Xのスタイリング
舗装されたストリートもないがしろにしていない
ドゥカティにはムルティストラーダというすぐれたアドベンチャーモデル、いわゆるマルチパーパスツーリングモデルがある。にもかかわらず、新たにこのデザートXを登場させた。“デザート=砂漠や荒野”という意味を車名に入れて、オフロードバイク定番のホイールサイズ、フロント21インチ・リヤ18インチを履く。これだけで、誰もがこの機種がよりダート走行に特化したモノのだろうと容易に想像できてしまう。実際、メーカーのホームページでも、砂漠で飛んでいたり、荒野を駆け抜けている写真が多数使われている。
そんなデザートXを舗装路だけ乗るなんて“目の前においしいモノがあるのに食べられないような意地悪な状況じゃないか”なんて、ブツブツいいながら試乗開始。信号待ちから発進、交差点を曲がって、ちょっとしたコーナーをクリアして、空いた道で少しペースを上げて都内を駆け抜ける。早いうちに思っていたのと違う走りに“へぇー!? ”と感嘆の声が出た。
オフロードに特化した排気量が大きいモデルを、最近ではアドベンチャーと切り離して“ビッグオフ”と呼ぶことが多い。国内メーカーではヤマハのテネレ700がそれにあてはまる。そのテネレ700のハンドリング、乗り味はまさに大きなトレール車といった感じで、アドベンチャーとは一線を画している。“デザートXもそれに近いのかな”という先入観を持っていたけれど、サスペンションはフロント230㎜・リヤ220㎜とたっぷりのホイールトラベルがありながら、減衰が効いていて、深く沈み込みながらも、ただ柔らかいだけではなく、路面に追従して節度のある動きをする。
ピレリのスコーピオンラリーSTRタイヤを履いてのコーナリングは、21インチと大きな前輪を意識させないほどニュートラルなハンドリングで、19インチに近い感覚で車体の向きが変わる。トレール車感がほとんどない。軽くリーンさせられ旋回が気持ちよく、タイヤのグリップもよくわかる。937㏄エンジンで車重は223㎏と重くはないが、軽いともいいがたい“順当”という表現がちょうどいい車重からイメージするよりフットワークが軽く、スイスイと思ったとおりに走らせることができた。そしてライダーが前後に揺れるピッチングモーションが適度に抑えられており、ストリートのいろいろなところを走ったが、予想以上に快適だ。乗り心地がいいのである。
ホワイト基調のカラーグラフィックとスタイルから、往年のパリ・ダカールラリーレーサーと、そこから生まれた市販車、カジバ・エレファント(ドゥカティの傘下にいてエンジンを使っていた)を連想してニヤリとするのもあり、中身はド直球に荒れ地専用だと思っていたのに、いい意味で拍子抜け。クイックシフトも付いており、都市部での日常使いからアスファルトだけのツーリングまで、オンロードだけでも楽しく気持ちよく使える。思い描いていたより上質さを持っていた。
熟成が進んだ水冷Lツインのテストストレッタエンジンは、最高出力は110㎰で最大トルクは69N・mと、スーパースポーツ950やモンスターと発生回転数も含めほぼ同スペック。“スポーツ” “ツーリング” “アーバン” “ウェット” “エンデューロ” ”ラリー”と、6種類のモードがあり“スポーツ”にするとレスポンシブルで、これぞドゥカティといったスポーツ度の高いシャキシャキした加速が楽しい。“アーバン”と“ウェット”はパワーが少し抑えられていて、神経質さのないスムーズな走行が可能。バランスがいいのはフルパワーながら流して走りやすいマイルドさもある“ツーリング”。まずこれにしておけばどんなシチュエーション、どんなライダーでも大丈夫。“エンデューロ”と“ラリー”については、また今度、ダートで乗ったときに話そう。各モードのキャラクターがはっきりしているから、積極的に選択したくなる。パワフルながら柔軟性があるエンジンの懐をさらに深くしたようだ。
オフロードにがっつり重心を置きすぎず、オンロードの走りもしっかり作り込んできた。このあたりは巧みだ。そうなると、やっぱりオフロードでの走りが気になってしょうがない。今のところストリートでは好印象。次は荒野へ乗り出そうじゃないか。
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※記事の内容はNo.247(2022年10月24日)発売当時のものになります