HARLEY-DAVIDSON PAN AMERICA 1250 SPECIAL

HARLEY-DAVIDSON PAN AMERICA 1250 SPECIAL(2022年モデル)ダート走行

クルーザーモデルを長年手がけてきたハーレー・ダビッドソン(以下=ハーレー)が、2021年に送り出したのが“パン・アメリカ”だ。ハーレーが導き出したアドベンチャーツアラーとは一体? 今回は上位機種の“スペシャル”をピックアップした。

文:谷田貝洋暁/写真:関野 温

とにかく足つきのいいADVがほしいアナタに!

HARLEY-DAVIDSON PAN AMERICA 1250 SPECIALのスタイリング

アメリカ大陸初のアドベンチャーモデル

HARLEY-DAVIDSON PAN AMERICA 1250 SPECIAL(2022年モデル)走行

まさかハーレーまでアドベンチャーツアラーのジャンルに進出してくるとは…。あらためて“ブームってすごいことなんだな”と思い知らされたのが、このパンアメリカ1250だ。“どんなモデルなんだ?”とみんなが注目するなか、2021年に登場。同年の日本二輪車文化協会が主催する第4回日本バイクオブザイヤー2021の外車部門において最優秀金賞を受賞することになったが、それだけ世間の注目度が高かったということだ。

 

さて、このパンアメリカ1250。ホイールサイズはオールラウンドタイプのフロント19インチを採用。同社初のアドベンチャーツアラーということもあってだろう、車体のキャラクターに関してはオーソドックスなスタイルを採用したというわけだ。

 

ただ、その一方でこのパンアメリカ1250には、とんでもない機構が上級モデルの“スペシャル”に搭載されることになった。停車中と走行中で車高(シート高)が変わる、魔法のようなサスペンションが組み込まれたのだ。開発したのはサスペンションメーカーのSHOWAで、その名もアダプティブ・ライド・ハイト(以下=ARH)。前後のサスペンションにジャッキ機能を持たせ、走行中に起こるピッチングモーションを使って、走行開始から約30秒で油圧によるジャッキアップが完了。デフォルト設定では、停車寸前にジャッキの油圧が抜けてスッと車高が下がるようになっているのだ。

 

なぜこんなことが必要なのか? すべては足つきをよくするためだ。アドベンチャーツアラーは高速巡航性能のために排気量が大きく重い必要があるうえに、オフロード走行を想定すれば、ある程度の最低地上高とサスペンションストロークが必要になる。…つまりアドベンチャーツアラーとしての性能を求めると、車体が大きく、そしてどんどん車高が高くなっていく。するとどうなるか? オフロード性能のためとはいえ、大きく重く足つき性が悪くて支えにくいバイクで“本当にダートセクションに走りに行けるのか?”というジレンマが生まれる。

 

そんなジレンマを一気に解決! 停車時には足つき性がよく、走行すれば最低地上高も高くなり、サスペンションストロークを犠牲にすることがないという、夢のような機構がこのARHというわけなのだ。

 

ハーレーのモデルは排気量やシリーズ問わず足つき性のいいモデルが多い。そんな既存のハーレーに慣れたライダーにも、このパンアメリカ1250スペシャルなら受け入れられやすいという側面もある。実際の売れ行きに関しても、ちょっと古いデータではあるが、2022年の春にハーレー関係者に“パンアメリカは、ARH付きのスペシャルとスタンダードの販売比率はどれくらいか?”と聞いたら、ほぼ99%スペシャルを選んでいるとのことだった。

見た目だけじゃない!冒険できるハーレーだ!!

そんなARHが目指したオフロード性能はというと“意外に走る”というのがウソ偽りない感想だ。それに全9モードというライディングモードの豊富さにも舌を巻いた。スポーツやレイン、カスタムといった基本的なモードに加え、オフロード用がなんと4種類! 実際、電子制御に関してはかなり細かいセッティング変更が可能で、腕に自信があればトラクションコントロールの介入度を低くしたり、切ったりしてスライドコントロールも楽しめる。

 

確かに長年アドベンチャーバイクを作り続けてきた他メーカーのモデルと比べてしまえばアラもある。岩角へのヒットや転倒時の破損の少なさといったタフネス性に関しては、やはりKTMやBMWに一日の長がある。しかし、こいつはハーレー初のアドベンチャーツアラーなのである。初モノでこれほどの完成度に仕上げてきたところがすごい。

インプレッション by 吉田

タイヤの空気圧を落とすと走りやすくなった

車両を乗り替えながらロケをするのだが、パンアメリカ1250スペシャルに初めて乗ったのはダートの入り口前あたりから。停車時はシート高が下がるので不安はないが、走り出せば上がる。なのでけっこう緊張した。舗装路を走ってきたので、タイヤの空気圧は高いまま。ロケ場所は大小の石がゴロゴロしており、その状態のままだとタイヤを弾かれヒヤヒヤ…。その後、エア圧を落とすとなんとか走れるように。万一倒れた場合、一人で車体を起こせるかは微妙なところ。なおオンロードは楽チンそのもの。防風効果も高いし、直進安定性も高い。ただ車格が大きいため、小回りは利かない。Uターン場所は選びたいところだ。

インプレッション by 濱矢

他とは違いながらちゃんとADVしている

水冷DOHC4バルブのVツインエンジンはスムーズでフラットに近いトルク。高回転まで回せば加速は伸びるけれど、豊かなトルクに任せて5,000rpm以下でクルージングするのが心地いい。水冷のVツインエンジンのバンク角はハーレー伝統の45度ではなく60度と、これまでとはまったく違うけれど、ビッグツインのテイストがしっかりとある。セミアクティブサスペンションはライドモードによって減衰特性が切り替わり、258㎏と軽くはない車両重量ながら、想像以上にダートが走れてしまうからおもしろい。一般的なアドベンチャーツアラーとはスタイルも含めて似ていないながらも、マルチパーパスとしてちゃんと作り込まれている。

次ページ:HARLEY-DAVIDSON PAN AMERICA 1250 SPECIALのディテールを紹介!

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問い合わせ先
ハーレーダビッドソンジャパン カスタマーサービス
電話番号
0800-080-8080
URL
https://www.harley-davidson.com/jp/ja/

※記事の内容はNo.248(2022年11月24日)発売当時のものになります

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