イタリアの名門、ベータの2023年エンデューロ・クロスカントリーモデルに乗ってきた。その中でも注目は2ストローク単気筒エンジンを刷新したRR2T 125だ。どう進化したのか、その感想と魅力をお伝えしよう。
文:濱矢文夫/写真:関野 温
縦横無尽に走れる楽しさは格別!
BETA RR2T 125のスタイリング
扱いやすさはそのままにパンチ力を上乗せする
ベータはイタリアのメーカーで、競技用トライアルバイクで知られてきた。10年ちょっと前からオリジナルのエンデューロ・クロスカントリーモデルも開発し、発売をはじめた。基本的にラインナップにオンロードモデルはないオフロードバイク専用ブランド(モタードはある)。エンデューロ・クロスカントリーモデルには2ストロークエンジンと4ストロークエンジンの機種があり、KTM軍団のように、幅広いラインナップがそろう。近年は日本でもユーザーが増え定着してきた注目株。
オンロードではほぼ絶滅した2ストロークエンジンが、この分野ではメリットがあるから現役なのがおもしろいところ。この2ストローク125㏄エンジンのRR2T125は、2023年モデルでエンジンが刷新された。クランクシャフトを小径化し、フライホイールを軽量化。これはピックアップ、スロットルを開けて回転数が上がっていくツキをよくすることと、高回転域の伸びのよさを求めたものだろう。
しかし、低回転域を捨てたわけじゃなく、寛容さは失なっていない。ベータ ジャパンが用意してくれた富山県のスキー場コースの、土と石で硬くしまった斜面で気をつかわずに登っていけた。回転が落ち込んだところからでも、スロットル操作だけでつながっていき、急な上りでも困ることはない。
同じ2ストロークには200・250・300といった排気量が大きいモデルがあるが、比べるとさすがに前に進ませるトルクは弱い。けれど、それとトレードオフで、重い鎧を脱いだような車体の軽さがある。上ったら下るのだが、車体が軽いことから下りながらのコントロールが本当にやりやすい。楽に扱えるこの自由自在感が最大のメリット。舗装路を走るオンロードモデルより三次元的な動きが多いオフロードモデルにおいて、車体の重量は重要な要素だ。
高回転域では鋭い加速の伸びを見せ、しっかりパワフル。この辺が新エンジンの真骨頂なのだろう。その領域でも扱いにくさはなく、回しきれるまで回転を上げつつ、微妙なスロットル操作と体重移動、サスペンションの動きでタイヤは地面をつかんで押し出し進む。トライアルのノウハウを豊富に持ち、モトクロッサーを持たず、エンデューロ・クロスカントリーモデルだけに絞った作り込みをしてきたことが活きていると思う。
これまでの125をベースに高回転のパンチ力を追加したようだ。公道で乗れる4ストローク125㏄車と比べてどうだ、なんていうと失笑されそうなくらい段違いにパワフル。より排気量が大きいのに乗っている人から上りで追い越されても、下りの機敏さで追い抜けばいいやと思わせる。レースだけでなくファンライドマシンとしてもとっつきやすく、怖くない。林道を楽しんでいる人ならパワーを使い切る走りができるだろう。高性能で懐が深い前後サスペンションも含めて、デュアルパーパスモデルと同じ“オフロードバイク”とくくるのを躊躇したくなるほど走破力の次元が異なる。
そのぶんシートも高いけれど、ベータはKTM軍団の同カテゴリーよりシートが低くコンパクトに感じる。さらに2023年モデルは、前に向かって手を広げるような形状だったシュラウドが、やや内側に入り細くなった。これからエンデューロやクロスカントリーのレースに出てみようかと思っている入門者にもちょうどいい。ライダーの技量によるけど、加速が強く速度が出しやすい、もっと排気量が大きなモデルにトータルで勝てる素質は十分にある。もちろんオフロード走行を純粋に楽しみたい人にもうってつけだ。
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※記事の内容はNo.248(2022年11月24日)発売当時のものになります