2023年のベータ製4ストロークモデルには、排気量が小さい方から350・390・430・480がある。今回はその中から“390”にライド。そして4ストロークの真骨頂を味わった。
文:濱矢文夫/写真:関野 温
イージー+パワフル=楽しい!
BETA RR4T 390のスタイリング
高パフォーマンスながらトレール車のように簡単
ベータの4ストロークエンデューロ・クロスカントリー用モデルには、350がありながら、この385・6㏄の390が存在する。そのワケはなんだろうと試乗前に考えていた。いざ乗り比べてみると、なるほど、2台はきっちり違いがあり、住み分けができている。350は高回転域の伸びが気持ちよく、回して速いマシン。振動が少なくて、レブリミットまできっちり使って走ると楽しい。レースで使うことを前提とするなら350を選ぶだろう。
だけど、この日乗った2ストロークと4ストローク2023年モデルの中で、もっとも気に入ったのがこのRR4T390だった。2022年モデルのRR2T300を所有していて2ストローク好きを公言している筆者だが、この390にはやられた。ほれた。回すと350より豊かなトルクがフラットに続いて、いろいろな状況でリヤタイヤが路面をとらえやすい。試乗したスキー場の斜面を上下しながら、自在に走り回ることが簡単にできるんだ。
4ストロークモデルは全車トラクションコントロールを装備した。オンロードのスーパースポーツのような6軸IMUを使った高度な制御ではなく、リヤタイヤの空転だけを検知してECUの制御に介入するモノだと思う。ダートでは、オンロードよりダイナミックにサスペンションが動いて、グリップがよかったり悪かったり変化が大きい。なのでトラクションコントロールがどこまで利いているのか実感はなかったけれど、スライドしながらでもアクセルを開けていきやすく、横滑りじゃなく縦方向へ確実に進んでいくので、ちゃんと働いているのだと思う。
そもそもアクセルの開閉に機敏すぎず、力がなだらかに出ながら回転が上昇していく出力特性がいい。間髪入れずドンっと強くトルクが出るのではなく、じわーっとした出だしから高まっていくようなフィーリング。そのじわーっとした部分でタイヤがしっかり路面をかんで前に進んでいく。さらに、前後のサスペンションが2ストロークモデルより上下にゆすられる動きが少なく、しっとりと路面に追従するのも味方をしている。車体を制御するライダーの負担も小さい。
私が2ストロークを選んだ理由に、高出力を追求した4ストロークエンジンは必然的に圧縮比が高まり、そのせいで極低回転でストンっとエンストすることが多くなるのが好みじゃないというのがある。ところが、このRR4T390はそこでエンストしない。180度方向を変えるタイトなターンに飛び込んだとき、アクセルを開けていけるまでに低速で回転数が落ち込んでもエンジンが止まらない。その粘りがあるから気をつかわずに、減速→旋回→脱出の動作に集中できる。
極端な表現をすれば、公道を走れるトレールモデルなみの乗りやすさ。トレールバイクより足もエンジンも高性能なんだけど、このたとえがピッタリ。それでいて、トレールバイクとは比較にならないほどパワフルで速い。燃料なしで107・5㎏の重量もそれほど気にならない。ヒルクライムも強そう。2ストロークファンクラブを脱退しそうなくらい好印象。買うとしたら、エンジン特性が異なる350もいいから、どっちにするか悩む。すぐに慣れて「なんて乗りやすいんだ!?」とヘルメットの中でつぶやいた。
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※記事の内容はNo.248(2022年11月24日)発売当時のものになります