インドで生産され、先にインド国内で発売されていた原付二種スクーター“アドレス125”と“アヴェニス125”が日本国内でも販売開始。エンジンやシャーシなど基本を同じくする2台だが、違うのは見た目だけではない。乗ってその違いを詳しく説明する
文:濱矢文夫/写真:関野 温
リーズナブルな通勤快速で終わらない魅力
基本的な構成は同じでも明確な違いがある
丸っこいスタイルのアドレス125と、尖ったアグレッシブなスタイルのアヴェニス125。見た目はまったく違うけれど、空冷124㏄の4ストロークOHC2バルブSEP(スズキ・エコ・パフォーマンス)単気筒エンジンはまったくの共通で、前後の足も同じ。フレームも基本は同じで、お尻上がりのアヴェニスはシートフレーム部分を後ろに向かって少し持ち上げているだけ。ただ“乗っても同じだろう”と考えるのは早とちりだ。機能はもちろん、乗り比べてみると違いがわかる。
まずはアドレス125について話そう。タンデムのしやすさをを考え、シートの広さを確保し座面をフラット形状に近付け、ハンドルカバーにヘッドライトを埋め込んだレトロなスタイル。原付二種のアドレスというと、移動の足として90年代から人気のあったV100とV125といったコンパクトなVシリーズのイメージを持っている人もいるだろう。その感覚からすると大きくなったと感じてしまいがちだが、Vシリーズ特有の先の尖ったカタチを継承したこれまでのアドレス125より、実際は全高以外サイズダウンしている。そしてホイールベースも20㎜短い。だからふっくらと見えても取りまわしのよさで前モデルに負けているなんてことはない。
フロント12・リヤ10インチのタイヤサイズも旧型と同じだ。それほど外径は大きくないけれど、インナーチューブがφ35㎜と太めのテレスコピックフォークなこともあり、荒れた道や、うねりのある道でも安定した走りをみせる。ちょっとした段差では、さすがにドンっ!と手応えはあるが、それでヨロヨロと不安定にはならない。特別性能が高いわけではないけれど、不満にならない。コーナーでのハンドリングもニュートラルで、トリッキーな動きをせず気持ちよく走れる。ABSがない代わりに前後が連動したコンバインドブレーキになっており、それも違和感なく、減速性能は十分。各部の能力もあるが、燃費のことなど考慮して軽量化したことが、ひらひらと軽快ながら落ち着きのあるハンドリングの印象につながっているのかも。
吸排気系やCVT設定を見直した強制空冷エンジンはのけぞるほどではないけれど、発進から力強い。アクセルを大きく開け続けて加速すると、60㎞/h手前くらいからプーリーが高速よりに切り替わってエンジン回転数が落ちる。レスポンスと加速にこだわる領域と、回転数を下げて燃費を伸ばす領域ですみわけているのがわかる。逆に、アヴェニス125は同じエンジンとCVTながら、ECM(エンジンを制御するコンピューター)プログラムが違うことから、もっと加速が続く。だからヨーイドンなら最終的にアヴェニスが少しだけ前に出る。重箱のすみをつつくなら、走行性能に直接的な影響はないけれど、2台ともアイドリング時にブルブル震える振動がやや大きめ。
アヴェニスは着座位置がアドレスより前にあってフロアも少し狭い。アドレスは座ってお尻が当たる小さい段差まで余裕があり、ヒザの曲がりはゆるやか。その姿勢の自由度の高さが魅力。そしてアヴェニスの適度にタイトで力強く踏んばれて、クイックな走りをしやすいのも魅力。居住性はアドレスが勝り、スポーツ感はアヴェニスが勝る。見た目どおり。アヴェニスに長く乗っていると、減速時など、お尻が前に出ようとするのをやや足でおさえたくなる場面があった。長時間乗るならアドレスの方が楽チン。部品は同じだけどブレーキはアヴェニスがほんの少しハードに利く印象。重心が前にありフロントフォークのセッティングも変えてあるから、コーナー進入のフロントの入りがすばやく、向きが変わりやすい。
平成32年(令和2年)国内排出ガス規制に適合させながらフリクションロスを低減したり、すばやく効率的に混合気を燃焼させるなど工夫をして、これまでと同等の走りとすぐれた燃費を追求したとスズキは説明。各部の軽量化など、デザインも含めて30万円を切る価格の普及型原付二種スクーターながら、力の入れようがすごい。あなたはどっちを選ぶ?
SUZUKI ADDRESS125 & AVENIS125のディテールを比較!
姿・機能・味付けが異なる! キャラクターの違いは明確!!
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※記事の内容はNo.249(2024年12月4日)発売当時のものになります