ほんの少し時をさかのぼれば、驚くほどのラインナップで盛り上がりをみせていた50㏄クラス。自転車から原付にステップアップするのは大人への階段を数段飛びで一気に駆け上がるようなワクワク感があった。高校生キッズあこがれの乗り物であり、仕事の移動手段であり、主婦の買い物の足でもある。そう、老いも若きもみんな大好き50㏄! そんな懐かしのカテゴリーに存在したモデルたちを、いま一度振り返ってみよう。Love Fifty!!
キーレス時代を先取り?!
バイクに興味がない人に“知っているバイクの名前”を聞いたら、『ジョグ』はかなり上位にランクインするだろう。それくらい、50㏄スクーターの代名詞として君臨する1台だ。しかし1999年の排ガス規制により50㏄業界にも4ストローク化の波が押し寄せ、また車両のデザイン的にもホンダ・トゥディやスズキ・レッツといったレトロ系モデルが増えていった。そういった流れを考えると、2008年まで2ストロークエンジンを搭載し続け、デザイン的にもパフォーマンス的にもスポーツ路線を貫いたジョグは、むしろ“個性ある1台”なのではないだろうか。
今回紹介するのは、歴代ジョグシリーズの中でも通称“リモコンジョグ”といわれる一台。2ストロークエンジンを積んだ最後のモデルということもポイントだが、一番の特徴はその名のとおり、リモコンを装備していること。盗難防止機構である“Gロック”の解除やシートオープンなどがカギを使わずボタン一つでできるという画期的?な装備だった。
現在はバイクもキーレス化モデルが増え、大型のファンモデルだけでなく125㏄クラスの小排気量モデルにも搭載されるようになったスマートキー。機能的な差が大きくあるにしろ、リモコンジョグは20年以上前に“キーレス”を先取った稀有なフィフティといえるだろう。
YAMAHA リモコンJOG(2006)の主要スペック
- 全長×全幅×全高
- 1,670×640×1,005(㎜)
- 軸間距離
- 1,160㎜
- シート高
- 710㎜
- 車両重量
- 76㎏
- エンジン型式・排気量
- 空冷2ストローク単気筒・49㎤
- 最高出力
- 4.6kW (6.3ps)/7,000rpm
- 最大トルク
- 6.6N・m (0.67kgf・m)/6,500rpm
- タンク容量
- 5.7ℓ
- 燃費(30km/h低地走行テスト値)
- 63㎞/h
- タイヤサイズ
- F=90/90-10・R=90/90-10
- 発売当時価格
- 15万7,500円(スタンダード14万7,000円)
キャッチコピーは“ヨベバ・コタエル・スクーター”
2001年発売の初代リモコンジョグは発売当時価格16万7,000円で4カラー展開だったのに対し、リモコンレスのスタンダードが15万9,000円で2カラー展開と、メーカー的にもかなり“リモコン推し”だったことがうかがえる。CMキャラクターには当時某刑事ドラマで人気を博していたユースケ・サンタマリアを起用し、その画期的な機能を全面にアピールしていた。
歴代ジョグを振り返り
2001年の初代ジョグ以降、スポーツグレードが追加されたりエンジンのブラッシュアップや機能の充実が図られるなど、熟成を重ねていったジョグシリーズ。1999年の排ガス規制後、2ストロークエンジンを搭載したモデルは2008年に生産終了となった。かわりに2007年にはVOXをベースとした水冷4ストロークエンジンを搭載したジョグが登場し、マイナーチェンジを受けながら2017年まで継続。2018年からはホンダと業務提携し、ホンダ・タクトのOEM供給としてヤマハ・ジョグがリリースされ、現在もラインナップされている。
2022年には自社生産の125が登場!
2022年に登場したジョグ125は、ホンダのOEM供給である50㏄シリーズとは違い自社生産のニューモデル。歴史が長いぶん、過去にはいろいろなバリエーションや80、90といった50㏄以外の排気量もラインナップされたてきたジョグシリーズにあって、初の125㏄エンジン搭載モデルだ。
軽量コンパクトなボディにスポーティな外観でキビキビ走る、という50㏄モデルを踏襲するスタイルはそのままに、フロントドラムブレーキやアナログメーターといったシンプルな車体構成で25万5,200円という低価格を実現し、気軽に乗れる125㏄モデルとして人気を博している。ジョグ125については、あわせてインプレッション記事もチェック!
インプレッション:軽さが持ち味のお手ごろスクーター YAMAHA JOG125
※本記事はNo.056(2006年11月24日発売)に掲載された内容を再編したものです