2018年に大きくモデルチェンジされ、2021年にも仕様変更を受け、2023年にも仕様変更され、ちょっとその差がわかりにくいフォルツァ。その辺りの変化も含めてフォルツァのキャラクターに迫ってみよう!
文:谷田貝洋暁/写真:関野 温
250㏄スクーター随一のスポーツ性能
HONDA FORZAのスタイリング
ファンライドに応えるハイエンドスクーター
今から20年以上前の2000年3月に、スポーティで高級感あふれる大型スクーターとして登場したフォルツァ。ヤマハのマジェスティとともに2000年代のビッグスクーターブームを支えたモデルである。だが、2018年以降の直近のフォルツァとそれ以前のフォルツァでは、名前こそ同じであるものの、そのキャラクターはまったく異なる別のモデルと言っていい。
初代から2018年までのモデルは、いわゆるジャパニーズスクーターである。“ギヤがなくて操作が簡単”、ポジションもソファに寝そべるような“安楽ポジション”。ブーム当時の日本では250㏄クラスのビッグスクーターといえば、この手のジャパニーズスクーターが主流だったのだ。
そこから大きく舵を切ったのが2018年のこと。日本国内におけるビッグスクーターブームの終焉とともに、スクーター市場の中心はヨーロッパへと移り、フォルツァも欧州の嗜好に合わせたスクーターへの変化に迫られたというわけだ。
ではジャパニーズスクーターと欧州好みのヨーロピアンスクーターの違いはというと、一番わかりやすいのがポジションである。寝そべるというか、若干猫背になるようなポジションで、シートが低くベタベタに足がつくのがジャパニーズスクーター。一方のヨーロピアンスタイルは、シートが高くてアイポイントが高いうえに、背筋を伸ばして乗るような姿勢になる。
走ってみても車体のキャラクターの差は非常に顕著。楽さや快適性を重視するジャパニーズスクーターはマシンを操るというよりは“バイクなり”で走る雰囲気だ。これに対し、ヨーロピアンスタイルのスクーターは、しっかりフロント荷重を意識して、肩からコーナーに飛び込んでいくようなスポーティな走りが楽しめる。
2018年のモデルチェンジでは、フォルツァもそんなヨーロピアンスクーターへ進化するために、ホイールサイズを前15・後ろ14インチと、それまでのモデルに対して両輪とも1インチほどサイズアップ。前後のタイヤの荷重バランスも42:58から44:56と、フロントタイヤの荷重を増やし、ロードスポーツバイクのようなスポーティな走りができるキャラクターへと大変身。あわせてスリップダウンを防ぐトラクションコントロールも装備した。
その後、2021年にもフレームの一部変更を行ない、燃料タンクとラジエターの搭載位置を変更するなどのブラッシュアップを実施。今回のモデルチェンジでは、フロント&テールまわりのデザイン変更と平成32年排出ガス規制(いわゆるユーロ5)が主な変更点であり、スポーティなヨーロピアンスクーター風のパッケージングに関してもまったく変わりはない。
走り出せば、フロント15インチサイズの大径ホイールのおかげで低速から高速域までしっかりとした安定感が出ている。また車体も、このフロント15インチホイールのキャラクターに見合う高剛性なフレームが与えられているため、スポーティなコーナリングをしても、車体負けして不安を感じるようなことはない。それどころか、むしろスポーツバイクのような肩からコーナーにリーンインしていくような攻めの走りが可能なのだ。この手のスポーティなライディングは、快適性重視で剛性が低めに設定されたジャパニーズスクーターでは到底マネできない…、というかそもそもそんな走りをやる気にすらならないものだ。
「とにかく足つきがいいのはいいけど、楽チンポジションでダラダラ走るのはきっとつまんないよね…」。ビッグスクーターにそんなイメージを持っているなら最新のフォルツァに一度試乗してみるといいだろう。スクーターでここまでスポーティな走りができることにきっと驚くはずである。
IMPRESSION by 吉田
足つきの悪さは楽しさとトレードオフ
ひと昔前のビッグスクーターは移動手段としては、荷物も積めるし、クラッチ操作不要で気軽に乗れるので優秀だと感じていた。が、乗ってて楽しいかといわれるとそうでもなかったのが正直なところ(ヤマハのTMAXは除くが)。ただ2018年以降のフォルツァを含め、ビッグスクーターは楽しくなった。排出ガス規制対応で燃費こそ低下しているが、今回のフォルツァも走る楽しさは変っていない。そのぶん足つきは悪くなってしまっているが、それは走る楽しさとトレードオフだと割り切れるレベル。171㎝(短足)でも不安はない。防風性能も高いので、ロングツーリングにも活用できる1台だ。
※記事の内容はNo.251(2023年2月24日)発売当時のものになります