激戦のミドルマルチ戦線にホンダが満を持して投入したCBX400F。斬新な発想から生まれた数々の革新的なメカニズムを搭載して新時代を切り拓く。そして多くの若者たちから絶大な支持を集め、空前の大ヒットモデルとなった。
写真:南 孝幸
最新技術と普遍の融合。ミドルコンセプトの礎に
ホンダイズムを感じる斬新な先進技術の結晶
1979年のカワサキ・Z400FXを皮切りに、翌80年のヤマハ・XJ400、そしてスズキのGSX400Fと、新開発のミドルクラス4気筒マシンが各メーカーから続々と投入され始めた80年代初頭。4気筒マシンのパイオニアであるホンダも、81年10月に開催された東京モーターショーにて、満を持して最後発となるミドルクラスの4気筒マシンを発表。同年11月には早くも販売を開始したのだ。それが今回紹介するスーパースポーツモデル、CBX400Fである。
数々の新技術を搭載したニューモデルであったCBX400Fは、燃焼室のコンパクト化により高圧縮化を図り、最高出力48psを発揮するDOHC4バルブ4気筒エンジンを搭載。高出力、高回転なパワーユニットながら新設計キャブレターなどの採用により、低中速から高速域まで扱いやすいフラットなトルク特性を追求しているのも特徴だ。
また、特殊鋳鉄製ディスクローターがホイール内に内蔵される世界初のインボード・ベンチレーテッドディスクブレーキを搭載。フルカバードによる放熱性への懸念も、エアインテークから走行風を取り込み冷却し、さらに遠心ファンによって強制排出することで解消。あらゆる環境下での安定した性能追求から生まれた独創的な新機構であり、開発陣はその真綿を締めるようなフィーリングを称して“真綿フィーリング”と呼んだ。
さらに制動時にフロントフォークの沈み込みによる車体の荷重変化を抑え、後輪の接地性を高めて安定性を図るアンチダイブ機構は、ハードなブレーキングには強く作動し、弱ければ比例してソフトに作動するTRACと呼ばれるブレーキトルク応答型。効き具合も4段階に調整可能となっていた。
足まわりに関しても、一般走行時にはソフトに作動し、大きな負荷のかかったコーナリング時にはハードに効くプログレッシブ特性を持ったプロリンクサスペンションを、ロードモデルに初めて採用。スイングアームは量産車では初となる高剛性で軽量化にもすぐれる中空アルミキャストタイプ。すぐれた操縦安定性を誇っていたのだ。
その他にもブーメラン型スポーツコムスターホイールや、シリンダー前部でクロスした4into2のエキゾーストパイプを持つ左右2本出しマフラーなど、まさに先進技術の結晶ともいうべき数々の機構を搭載。ライバルモデルをリードする高性能なマシンだった。
HONDA CBX400Fの主要スペック
- 全長×全幅×全高
- 2,060×720×1,080(㎜)
- 軸間距離
- 1,380㎜
- シート高
- 775㎜
- 乾燥重量
- 173㎏
- エンジン形式・排気量
-
空冷4ストロークDOHC並列4気筒・399㎤
- 最高出力
- 35.3kW (48ps)/11,000rpm
- 最大トルク
- 33.3N・m (3.4kgf・m)/9,000rpm
- タンク容量
- 17ℓ
- 燃費(60km/h低地走行テスト値)
- 40㎞/h
- タイヤサイズ
- F=3.60-18・R=4.10-18
- 発売当時価格
- ツートーン:48万5,000円、ソリッド:47万円
※本記事は『Under400』No.03(2007年1月8日発売)に掲載された当時の内容を再編しています