TRIUMPH STREET TRIPLE 765 RS

並列3気筒エンジンを搭載するストリートトリプルがさらに進化。高性能を十分に体感するため試乗はサーキットで行なわれた。Moto2マシンの血統を持つマシンのフィーリングをレポートする！

文：横田和彦／写真：吉田 朋

並列3気筒搭載のミドルモデルがさらに進化！

TRIUMPH STREET TRIPLE 765 RSのスタイリング

高性能を引き出しやすいフレンドリーなキャラ

1885年に創業されたトライアンフが並列3気筒エンジンを搭載したバイクを発表したのは、なんと1968年のこと。T150トライデントと名付けられたマシンは、世界最速をねらって開発された意欲的なモデルだった。しかしホンダ・CB750FOURをはじめとした高性能な日本車に押されて業績は悪化。1970年の中ごろにはトライアンフ自体が表舞台から一時消えることになってしまった。

 

再びトライアンフが動き出したのは1980年代に入ってから。当時、日本はバイクブームのまっただ中。レーサーレプリカに夢中になっていた若いライダーたちにとって、トライアンフは過去のメーカーというイメージが強かった。しかし1990年に突然発表された新生トライアンフは、当時の流行に沿ったモダンなスタイルを採用。そのラインナップに並列3気筒モデルがあったことから、トライアンフ＝並列3気筒という印象が強くなったのだ。

 

その後、さまざまなカテゴリーで数々の名車を生み出し現在へと続いてきたトライアンフ。近年で最大のトピックは2019年からFIM世界ロードレース選手権シリーズMoto2クラスに765㏄並列3気筒エンジンを供給し始めたことだろう。それまで使われていた600㏄並列4気筒エンジンよりもパワフルで、レースシーンを盛り上げる一端をになっている。

 

そんなバックグラウンドがあるからサーキットのピットに新型ストリートトリプル765RSがたたずんでいることにまったく違和感がない。それどころかフルカウルスポーツを上回るオーラを感じるのは気のせいではないはずだ。“早く乗って走り出したい！”。そう感じさせる存在感である。

 

 

新型ストリートトリプルは、スタンダードモデルのRと上級バージョンのRS、そして世界限定765台というMoto2エディションがリリースされる。その中から今回試乗したのはRS。オーリンズ製のフルアジャスタブルリヤショックやブレンボ製スタイルマキャリパーなどを装備するモデルだ。先代から進化したポイントは、エンジンパワー（123→130㎰）とトルクの向上、車体ディメンションの改良、最新の電子制御システムの搭載などである。それらによってネイキッドスポーツの中でもトップレベルの性能に仕上がっているという。

並列3気筒サウンドがハートを高揚させる！

 

セルボタンを押すとショートマフラーから低音サウンドが響く。レスポンスは良好。聴いているだけで気分が盛り上がる。軽いクラッチを握りギヤを入れてスタート。なめらかに生み出されるトルクによってスムーズかつ力強く加速していく。大きくアクセルを開けてパワーバンドに入れても車体がフラつくことはない。実に安定したフィーリングだ。それはペースを上げていっても変わらない。前後のサスペンションがよく動いているのに加え、並列3気筒エンジンを核とした車体の適度な重量感が安定要素になっているのだろう。ハイスピードでのコーナリング中の挙動も不安を一切感じさせないもの。気持ちよくコーナーを駆け抜けていくことができる。

 

ペースを上げていくとアップハンドルによるポジションの影響か、ややフロントの接地感が薄れていく感覚が伝わってくる。といっても破綻するような感じではなく、ちょっとフワフワするかなという程度。同時に用意されていたローダウン車（オプションのローシートで28㎜、リヤショック上のカラー外しで10㎜の合計マイナス38㎜）の場合はさらに後ろ下がり感があるので、速度域が高くなるとハンドルの軽さが増す印象。しかしそれもサーキットなど超高速域での話。ストリートでのまとまり感は秀逸で、ネガな感じは受けない。僕のような小柄なライダーにしてみれば足がつきやすいというのは精神的に楽になる。より幅広いライダーが新型ストリートトリプル765のフィーリングを楽しめるというのはすばらしいことだと思うのだ。

 

“公道走行可能なMoto2マシン”というコンセプトを持つ新型ストリートトリプル765。並列3気筒だけが持つ独特のフィーリングをぜひ体感してもらいたい。

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※記事の内容はNo.252（2023年3月24日）発売当時のものになります