SUZUKI GSX-8S

2023年8月11日

2023年モデル GSX-8S SUZUKI スポーツモデル並列2気筒エンジン大型二輪免許

最近盛り上がりをみせている並列2気筒スポーツモデルにスズキも新開発エンジンで参戦してきた。注目のモデル“GSX-8S”に試乗！どんな走りで魅力はどういうところだったのか、乗って感じたことを詳しく説明しよう

文|濱矢文夫／写真|南孝幸

純粋に操って走るのがすごく楽しい

SUZUKI GSX-8Sのスタイリング

やりすぎていないところが魅力である

なんと気持ちよく回るエンジンだろうか。なめらかに高回転まで上昇し、比例してメーターの速度が増えていく。新開発された並列2気筒エンジンは、現在の主流になっている270度クランクを採用している。アプリリア・RS660やヤマハ・YZF-R7といった、スーパースポーツモデル系も同じく270度だ。270度にすることでアクセルワークにリニアに反応する加速フィーリングと、すぐれたトラクション性を得られるのが主な理由である。

ショートストローク775㏄のGSX-8Sはトルクの息が長く、右手と加速が直結したようなフィーリングで、アクセルを大きく開けると気持ちが高揚する。2軸のバランサーの採用によって振動を抑えた効果で、かすかなパルス感でビュンビュン回るから、いわゆる2気筒らしさみたいな部分は小さい。自分であれこれ説明しといてなんだが、微に入り細に入り気筒数がどうだとか、仕組みがどうだとか気にせず、リヤタイヤのグリップを失いにくいこともあって、胸のすく加速が単純にアクセルを開けるだけで楽しめるイージーさが魅力。ライド・バイ・ワイヤを採用した制御は、低いギヤの低速域から過度な応答を抑えて、どこでも使いやすい。

それをスチール製フレームに搭載。前後KYB製ショックユニットを使ったハンドリングは、素直そのもの。曲がるのはエンジンと同様にイージー。スペックでの車両重量は202㎏と軽い。そのおかげもあって右へ左への操作でも実に機敏な動き。“ヒラヒラ”と表現したくなるけれど、そこまでではなく、ほどよい。さっと向きが変わりながらも落ち着いた安定感。正真正銘のリアルスポーツバイクだけれど、尖ったところがない。スポーツにこだわっているが、やりすぎていないのだ。このニュアンスが伝わるかなぁ。

三つのドライブモードを選択できて、Aがもっともレスポンシブルで、Bがそれよりマイルド。Cはかなりマイルドというかおとなしい。日常的にずっとAでも問題はなし。その日の気分、路面や交通の状況で選択すればいいだけで、どれだと難しいとかはない。最高出力80㎰はずば抜けてないから、心躍る速さを生んでいるのはきっとトルクの出し方だ。

この試乗文が20分の1くらしかスペースがないと“よく回りスピードが出るエンジンで、ネオクラシックカテゴリーとは違うスタイルで軽快にスポーツライディングが堪能できる正統派”なんて簡単に終わるところ。でも、それでは言葉足らず。本質は微妙な加減の巧みさの中にある。106万7000円の戦略的価格だが、当然ながら足まわりなどにかけられるコストの制限があったろう。それでも使えるコンポーネンツを最大限まで活用して、全部のベクトルがブレずに同じ方向を向いてでき上がっているように感じる。

シャカリキになって走ると、サスペンションをもっとこうしたいと思う部分も少し顔を出す。でもそれはよくできた仕上げに対して、もっとよくしたいと思う単なる個人的なワガママかもしれない。多くのライダーが乗ってワクワクできる高いレベルのほどほどさが光る。制御しやすく、おもしろいと思える走りだ。“よくできている”と素直に述べたい。