近年はダート性能の高いフロント21インチホイールのアドベンチャーツアラーが人気。スズキのVストロームの長兄1050にも“DE”という、21インチホイールモデルが登場! …でもホントにダートを走れるのか?
文:谷田貝洋暁/写真:南 孝幸
DEでジャリ道がより身近になった!
SUZUKI V-STROM1050DEのスタイリング
21インチホイールでどう変わったのか?
結論から言ってしまおう。“意外とダートも走る!”というのが正直な印象だ。というのも僕は、もともとこのVストローム1050の21インチホイール化にちょっと懐疑的だった。ナゼか? そもそもとしてVストローム1050シリーズは、アドベンチャーツアラーではあるものの、そのキャラクターはほぼオンロードバイクである。ホイールサイズがフロント19インチ・リヤ17インチということもあるが、アルミツインスパーフレームなんていうごっついフレームを使っている。この剛性高めのフレームのおかげで、グリップのいいオンロードセクションでも応力をかけてグイグイ曲がっていけるのだ。
それこそVストローム1050シリーズの前身であるVストローム1000は、スズキとして初めてのトラクションコントロールシステムを搭載した際に“ステルビオ峠最強”なんてキャッチコピーを掲げていたくらい。ステルビオ峠とはイタリア・アルプスの峠越えの道で、九十九折れのヘアピンカーブで標高を稼ぐ。日本でいうところの日光いろは坂を巨大にしたような道だ。そんなクネクネ道で最強の称号を得るには、オンロード性能に焦点をあてた車体が不可欠。実際、この車体は乗った感じもかなり硬質。Vストローム1000はもちろん、前作のVストローム1050やXTでもダート走行をしたことはあるが、このオンロードに重点を置いた車体では、うまくタイヤが路面をつかんでくれず、かなり手強かった。19インチホイールのおかげで“純然たるオンロードバイクよりはマシ”という感じが、前作でダートを走った際の印象だった。
それがこのフロントホイールが21インチ化された“DE”だと、以前の19インチモデルのときの試乗記憶もあってか、思いのほかダートが走りやすいと感じる。オンロード性能重視の硬質な車体は相変わらずだが、それでもフロントフォークとスイングアームが長くなったぶんだけしなやかさを増し、路面に踏ん張る感じが強まった。新採用の、多少の空転を許容しながらトラクションコントロールを介入させる“Gモード”を使えば、おっかなびっくりではなく、きちんとスロットルを開けられるようになっているのだ。
ただちょっと問題もある。路面をつかむようになった車体とGモードに気をよくして速度を上げていくと、ちょっとばかしフロントフォークが心許なく感じること。Vストローム1050DEのフロントフォークの太さはインナーチューブ径でφ43㎜。これは800クラスの軽量級アドベンチャーツアラーに多いサイズだ。1000㏄クラスなら、φ45〜46㎜(ドゥカティ・デザートX)くらいの太さがほしいところ。実際、水たまりでできたギャップを勢いに任せて越えると、フロントタイヤが大きく振られたり、弾かれたりすることが増える。ストローク不足というよりフロントフォークが細すぎて、車重とパワーに耐えられていない感じの挙動だ。まぁ、250㎏超えのこの車体で、かなりのハイペースでダートを走れてしまうのだからすごいと思う。ただダートセクションでの速度は控えめにした方がよさそうな印象を受けた。
一方、このインナーチューブ径φ43㎜のしなやかな足まわりは、街乗りや高速道路でものすごくいい仕事をしてくれる。従来のVストローム1050は、ステルビオ峠最強なんて言っていたくらいだから、オンロードでもちょっとフレームが硬く、極低速では車格が大きく感じたり、タイトターンなどでは少々乗りにくく感じたりする場面もあった。ところがである。このしなやかなさを得た車体のおかげで、車体由来の硬質感が消えており、街乗りがものすごくしやすくなった。
一番驚いたのは高速巡航性能だ。長い足とワイヤースポークの21インチホイールがいい塩梅にしなっているのだろう。高速巡航時にしっとりとした安定感が出ていて、長距離を延々と走り続けるような場合にとてもコンフォートに感じる。これは、今までの峠道をギュンギュン走ることだけを考えていたVストローム1050にはなかった特性だ。たとえダートを走らなくても“長旅を楽にしたい”なら、スタンダードより今回紹介したDEをオススメしたい。
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※記事の内容はNo.254(2023年5月24日)発売当時のものになります