かつて多くのライダーから支持を受け、のちに多大な影響を与えたアンダー400 にスポットをあてる連載企画。第2回はそのマシンの誕生により時代の流れを変え、新たなカテゴライズまで確立してしまった1 台を紹介する
性能至上の価値観を瞬く間に打ち破った西からの旋風
鮮烈な普遍的外観とロースペックで時代に挑む
バイクブームといわれた80年代は、年を追うごとにフルカウルの高性能マシンが中心となり、レプリカブームと呼ばれるようになる。各メーカーも毎年大幅なモデルチェンジを繰り返し、ニューモデルを続々と投入。新技術が次々と生まれた時代でもあった。
だが、そんな時代にスチール製丸パイプフレームに、空冷2バルブエンジンを搭載。最高出力46psと、当時の自主規制値である59psにはとてもおよばないスペック。また、スタイリングもシンプルなノンカウルで、リヤサスペンションはツインショックといった、レプリカ全盛の当時としては、時代へのアンチテーゼともとれるバイクが誕生。カワサキのゼファーである。
その誕生の背景として“レプリカばかりで乗るバイクがない”といった声がカワサキの社内で挙がったことがキッカケとなり、88年から正式にプロジェクトがスタート。“空冷4ストローク2バルブ4気筒エンジンで、ノンカウル。価格帯は50〜55万円で、名車Z1、Z2を踏襲するシンプルなスタイル”といったコンセプトのもと開発が進められ、翌89年5月にデビューをはたすのである。
だが雑誌などの予想は“時代錯誤なバイク”と、当初の反応はあまりよくなかったのも事実。しかし受け入れる側であるライダーたちの反応はまったく違ったのであった。初年度は5月発売ながら7,167台の販売を記録し2位。翌90〜92年までは年間販売台数トップの座に輝く。常人が制御できる範疇を越えたマシンに食傷気味だったライダーたちが、ゼファーの登場を歓迎したのだ。
KAWASAKI ZEPHYRの主要スペック
- 全長×全幅×全高
- 2,100×755×1,095(㎜)
- 軸間距離
- 1,440㎜
- シート高
- 770㎜
- 乾燥重量
- 177㎏
- エンジン形式・排気量
-
空冷4ストロークDOHC2バルブ並列4気筒・399㎤
- 最高出力
- 33.8kW (46ps)/11,000rpm
- 最大トルク
- 30.4N・m (3.1kgf・m)/10,500rpm
- タンク容量
- 15ℓ
- タイヤサイズ
- F=100/80-17・R=140/70-18
- 発売当時価格
- 52万9,000円
※本記事は『Under400』No.01(2006年5月8日発売)に掲載された当時の内容を再編しています