独特なフレームワークとステアリングシステムが採用されたイタルジェットのドラッグスター200。車体構成こそスクーターだが、そのスタイルはまるでスポーツマシンのよう。実際に試乗して、その実力に迫ってみた
文:濱矢文夫/写真:吉田 朋
他にはない個性が詰め込まれたスクーター!
ITALJET DRAGSTER200のスタイリング
奇抜に見えるけれどいつものように乗れる
もう手放しで“優勝!”と言いたくなるスタイル。このスタイルが選ぶ理由の80%であってもいいくらい。小さいころからロボットアニメを観て育った永遠の小学生としては、ワクワクしてたまらん。見た目の好き嫌いは幸福感と一緒で人それぞれだから、あまりほめてはいけないか。ただそこを差し引いても個性的なスタイルなのは確かだ。スクーターらしからぬ外装をつけ忘れたかのようなトレリスフレームに、慣れ親しんだフロントフォークは存在しないアグレッシブなルックス。近所の公園に昔からある見慣れたベンチのようなありきたりなモノじゃない。
硬質なシートに腰をおろして手を伸ばせば、アッパーブラケットに直付けされているセパレートハンドルのグリップは普通のスクーターよりバーが1本分くらい前にある。体は前傾とまではいかないが気持ち前かがみ。そのまま下を向くとフロントサスペンションのクッションユニットとなるピギーバックタイプのショックがトレリスフレームの間に寝転ぶように配置されているから新鮮だ。
このフレームと前後足まわりの剛性は一般的なスクーターとは異なる。感覚的にはスクーター版スーパースポーツだ。前後のサスペンションのバネレートが私の65㎏という体重には高いかなと感じた。またがって柔らかくストロークするそぶりはない。低速域だと段差とかでゆすられる動き、ピッチングモーションがはっきりと出る。“そんなにハードなの!?”と勘違いされそうだから補足すると、それでも通常の道ならお尻が持ち上がるような角があるような不快さはなかった。
スーパースポーツのような切れ味の走りが楽しめる!
お楽しみはここからだ。速度を上げて高荷重で動くと低速時よりサスの動きが感じられて、足がへこたれるようなところがなく、しっかりとした車体もあって動きがシャープでスパッと動いて気持ちいい。やっぱりスーパースポーツのよう。前に付いた片持ちスイングアームサスがサスペンションの働きを担当して、舵取りはフォークではなく1本のロッドが担当する。ちょっとややこしいけれど懸架・緩衝、そして操舵をまとめたフォークを使った車両と異なり操舵機能が切り離されている。
この仕組みもあり、他のスクーターよりフロントタイヤを路面に押し付け続けるのに長けたフィーリング。接地感の変化が少ないから安心できてカチッと効くブレーキをかけたときのノーズダイブも小さい。履いていたミシュラン・シティグリップ2のタイヤ表面がグニグニとした手応えに最初だけ戸惑ったが、セルフステアの入りなど違和感はない。慣れれば気にせず楽しく走れた。
水冷DOHC4バルブ181㏄エンジンは欧州車でありがちな出足がおっとりというところはない。日本製同排気量スクーターと発進加速やスムーズさは変わらない。このエンジンの魅力はフルスロットルを続けて高回転域に達したときの伸びだ。高速道路で100㎞/hを超えてから気持ちいいほどスルスルと速度が伸びていく。直進安定性も良好だ。
乗る前は“どんな乗り味なのよ?”と奇抜さに意識がいくだろう。しかし、進み出してしまえば特別なところはほとんどなく、スポーツスクーターとしておもしろい走りを味わえるぞ。
IMPRESSION by 吉田
“スポーツ”に重きを置いた作り込み
ドラッグスター200は一般的なスクーターとは違う。フロントグローブボックスがなく、シート下に書類プラスαのスペースがある程度。またがってみるとシートは硬い。コミューターとしての快適さ・利便性よりもスポーツに重きを置いているのだ。それは走り出せばわかる。他のスクーターと違って硬質な印象を受けるが、ペースを上げていくとちょうどいい。ハブセンターステアリングにはじめは戸惑うが、ブレーキもよく効き、慣れるとコーナリングが楽しい! エンジンもDOHCなので高回転でよく伸びる。“スクーターでもスポーツしたい!”という人にはオススメだ。
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※記事の内容はNo.258(2023年9月22日)発売当時のものになります