カタログやメーカーのHPを見ても載っていない、でも街で見かけることもある…。絶版車の中でも“旧車”と言うには古すぎない、1990年代のバイクたちをフィーチャー。武骨さを感じさせる造形と、力強い走りが持ち味のVRX。”乗って心地よく、操って楽しい、見ても美しい”という、モーターサイクルの原点に立ち帰った、シンプルなコンセプトの1台だ
V型2気筒を積んだミドルクラスネイキッド
かつて一世を風靡したレーサーレプリカは影を潜め、ネイキッドがシーンの主役に躍り出た90年代半ば。ライダーの趣向は以前に比べて多様化し、SR400/500をはじめとする、原点回帰ともいえるモデルが販売台数の上位に顔を現す。確固たる中核ジャンルの存在しない混沌とした時代にVRXは登場する。
メッキパーツを多用した外観に、大柄なプロポーション。また、シリンダーヘッドなどがバフ仕上げされた、造形的にも美しいVツインエンジンを搭載する、ロードスポーツとしては斬新なメカニズム。その方向性には“乗って心地よく・操って楽しい・見て美しい”というバイクの原点に立ち帰ったテーマが、開発コンセプトとして掲げられていた。
乗り味に関しては、マシンがライダーをリードするのではなく、入力に対して応えてくれるシンプルさが魅力。存在感を主張するVツインエンジンの造形やデュアルマフラー、インチバーなどの装備も所有感を高めている。
基本的な性能と質感の高い外観を持つVRX。現在のシーンを見渡しても、近似するモデルが見当たらない希有な存在といえるだろう。
足つき&乗車姿勢
タンデムスタイル
HONDA VRX Roadstarの主要スペック
- 全長×全幅×全高
- 2,235×760×1,105(㎜)
- 軸間距離
- 1,510㎜
- シート高
- 770㎜
- 乾燥重量
- 205㎏
- エンジン種類・排気量
-
水冷4ストロークOHC3バルブV型2気筒・398㎤
- 最高出力
- 24.3kW(33ps)/7,500rpm
- 最大トルク
- 34.3 N・m (3.5kgf・m) /6,000rpm
- タンク容量
- 11L
- 燃費(60km/h低地走行テスト値)
- 37.0㎞/L
- タイヤサイズ
- F=120/80-17・R=140/80-17
- 発売当時価格
- 52 万9,000 円(税抜き)
Buyer’s Guide
スティード400にも搭載されるV型2気筒エンジンは、クセのないオーソドックスな乗り味とスリムな車体でビギナーにもオススメのバイク。ただし、カスタムされた車両が多いことや、そもそも1995〜99年と短期間の販売でタマ数自体が少ないことから、程度のいい車両はあまり多くないのが現状。とくにノーマルで状態のいい車両はなかなか出ない。価格帯は40万円程度〜50万円台が相場となっている。
VRX Roadstarが発売された1995年の出来事
- WTO(世界貿易機関)発足
- 阪神淡路大震災発生
- 地下鉄サリン事件
- コギャル現象始まる
- ウインドウズ95発売
- 小室ファミリーヒット曲連発
- ヒット曲 相川七瀬『夢見る少女じゃいられない』、ドリームズ・カム・トゥルー『LOVE LOVE LOVE』
- ヒット映画 『耳をすませば』、『ダイ・ハード3』
- ベストセラー 松本人志『松本』『遺書』、ヨースタイン・ゴルデル『ソフィーの世界』
- 新語・流行語大賞 「無党派」「NOMO」
※本記事はNo.053(2006年8月24日発売)に掲載された当時の内容を再編しています