【LSS2025展示車両】Honda GB350 C

車両インプレ・解説

メーカーイチオシ！バイクセレクション2025

HONDA, 126㏄〜400㏄

令和の街に溶け込む昭和のスタイル

発売以来安定して人気を保ち続けるGBシリーズ。一周回って新しい、クラシカルなスタイルは、おしゃれにバイクを楽しみたいライダーにピッタリ。そんなシリーズに、細部までこだわったよりレトロな仲間が加わりました

ホンダ広報さんのオススメポイント

単気筒エンジンのトルクフルで小気味よい鼓動感とロー＆ワイドを強調したクラシカルなスタイリングのロードスポーツモデル

GB350 Cのスタイリング

現代によみがえった
鉄のかたまりバイク

最初にGB350が日本に登場したのは21年のこと。クラシカルでおしゃれなルックスや扱いやすいサイズ感、手の届きやすい価格帯などから、瞬く間に人気モデルとなりました。しかし、時はコロナ禍。この人気高騰と部品供給の遅れなども相まって、注文してから納車までかなり待った方もいたとか。それでも人気は衰えず、多くのライダーの心をひき付けました。その発売の少し後にはスポーティな装いに少しカスタム要素が加わったGB350 Sが登場。そして、少し間を開けて24年秋には、よりクラシカルな装いの、このGB350 Cがラインナップに加わったのです。

見てのとおり、簡単に“レトロ”というくくりで表現できない、ノスタルジックな雰囲気をかもし出すスタイルが特徴です。今どきのコトバでたとえるなら“エモい”というのがピッタリでしょうか。近年ちまたでは“昭和”がブームにもなっているそうで、この“C”のカラーリングも、そんな波にもしっかり乗っている最先端のバイクです。

エンジンとフレームはシリーズ共通で変わらないものの、外装パーツはすべて新設計。深くて長い前後のフェンダーはじめ、サイドカバー、パイピングをアクセントにしたセパレートシート、それにこれまでよりなだらかな面を組み合わせたオリジナルのガソリンタンクまで新造しています。しかも、ほかのシリーズモデル同様、フェンダーやサイドカバーは重厚感ある金属製。その外装フィニッシュも古典的な手法にならった塗装仕上げです。さらに塗り色は、日本で1950～60年代にかけて流行ったようなカラーを選択しています。これでもか！というくらいクラシカルな演出です。バイク全体がかもし出す雰囲気、一つひとつのパーツを徹底的に現代に再現されてます。

今のバイクなんだ、と現実に引き戻されるのは、キャストホイールと液晶表示を組み合わせたメーターパネル、LEDの灯火器くらい。薄っぺらい、模倣、なんてコトバではすませられない材質からこだった念入りな演出で飾られています。Cの魅力の大半はこの姿がかもし出すノスタルジックテイストと言っていいでしょう。バイクにあまり関心がない人でもこの雰囲気にひかれます。ただ骨格やエンジンはGBです。走りにも趣があります。かつてGBの試乗でも書いたのですが、のんびり回るシングルエンジンのパルス感、やさしい乗り心地と余裕ある自然体のライディングポジションが生み出す“おおらかな”走行フィーリングが走っての特徴であり魅力です。

スペックだけでは測れない
あふれる魅力

これはGBシリーズ共通の特徴で、マフラーの構造上の違いからいくらか表情に差があるものの、エンジンの応答が全回転域をとおしてやさしいのです。やさしいといっても、頼りないとかダルい感じではありません。ラフに扱ってもガツンっとしたショックはなく、しっかり意思どおりのパワーを立ち上がらせてくれるのです。言い換えればとても扱いやすいということですが、スロットルを操作するのにともなって、楽しい反応がついてきます。それはシングルというより“単気筒”と表現したくなるような音や身震いを総合した深みのある鼓動です。

街中を走るような時に使う低めのエンジン回転域では、歯切れのいい排気音を響かせます。ハンドルやタンクに伝わる振動と一緒になった鼓動感ではなく、深みのあるダンッダンッという音に合わせて加速時の心地よい振動が車体に伝わってくるのです。歯切れがよく、かなりいい音です。

大排気量のVツインが発するような、重厚で炸裂するような迫力とも違います。ずっとさわやかなんだけれど、音圧がしっかりしているから、アピールはかなり強力です。

そんな息吹きを感じながら、街中でクルマの流れをリードしたり、回転を上げて気ぜわしく発進する250㏄スポーツたちとは一線を画し、力強くトルク感を感じながら加速していきます。

20psのトップパワーですが、350㏄の排気量が発生する低中回転域のトルクをバカにしてはいけません。必要十分以上の実用生と動力性能を発揮してくれるのです。絶対的な力量差を感じるとしたら、100㎞/ｈ以上の高速巡航からの追い越しとか、高回転域まで引っ張って峠道でスポーティに走ろうとした時でしょう。しかし、GB…、とくにCには、そのようなスポーティな出力特性は要求していません。

足まわりが柔らかいので乗り心地もかなりいいほうです。街中によくある鋪装のパッチや段差からの衝撃もカドの取れたやさしいタッチで乗り越えてくれます。もっとも得意なのは60～80㎞/ｈくらいでののんびりした走りです。乗り心地もしっとりしてるし、エンジンは心地よい表情で回ってくれます。強い風圧にあらがって力む必要もありません。気分はとても“おおらか”になってしまうのです。

そんなGBです。しかもこの姿をまとったCです。逆に、無理にエンジンを回して力を求め、柔らか目のサスに鞭打って目を三角にして…といった愚考はおきません。

ノスタルジックな雰囲気をまとって出かけよう

Cに触れた当初は、古めかしいデザインで若者を意識したバイク、くらいにしか思っていませんでした。ところが、“どうやって乗ると楽しいんだろう？”と得意な速度域や道路を考えながら走っているうちに、なんだかリラックスして、楽しくなっている自分がいました。スタンダードのGBでもいいのかもしれないし、カフェレーサーっぽくアレンジしやすいSでもいいのかもしれませんが、やはりこの姿のCだからこそ、のどかな時代のツーリングライダーのような気分になりやすいのかもしれません。空冷単気筒のトコトコという振動が身体の芯まで心地よく響いてくれるのです。

バイクというと、やはりクルマに比べると機敏で、五感をフルに使って楽しむ乗り物。このGB350 Cは、この姿を手に入れたことで、乗り手をタイムスリップさせることができるようです。ただのクラシカルでおしゃれなストリートバイクではありません。GBシリーズが持つおおらかな走行フィーリングが合わさったことで身体に受ける風…流れる空気まで古きよき昭和の時代にいざなうような、やさしい走り心地も濃い魅力として加算されています。

このクラシカルな雰囲気にひかれ、選択肢に挙げるバイクですが、選択候補に挙がらないバイクだとは思いますが、乗ってみると実用的で、かつおもしろい表情が楽しめるということも知ってほしいのです。