中型クラスで人気の高い250㏄フルカウルモデルは、各メーカーが新型モデルを送り込んでいるカテゴリだー。このクラスを活性化させたカワサキだが、第三世代のニンジャ250を発表した! 加えてニンジャ400も、だ。
文:吉田 朋/写真:武田大祐・今枝あき
ライバルに対抗すべく2度目のリニューアル
今回のモデルチェンジで方向性が同じになった
普通二輪免許で乗れる現行モデルの中で、人気が高いカテゴリーは“フルカウル”モデルだ。レーシーなフルカウルを身にまといながらも、扱いやすさとリーズナブルな価格でビギナーにもオススメで、テクニックのあるベテランライダーが乗れば、扱いきれる楽しさを味わいながらハイペースで走れることなども人気の要因の一つである。また国内に限らず、バイクブームにわく東南アジア諸国でも高い人気を集め、そのため各車両メーカーはこのクラスの開発に力を入れている。2017年はホンダからCBR250RR、スズキからはGSX250Rが送り出されたことは記憶に新しい。
そもそもこの流れを作ったのは2008年にカワサキが送り出したニンジャ250Rだ。このモデルから徐々にフルカウルモデルの人気が高まり、他メーカーもモデルを投入し始めた。それに応じてカワサキは2013年にニンジャ250として、一度目のフルモデルチェンジを敢行。多くのライダーから支持を集めたが、その後も各車両メーカーがライバルを投入した。その過程で“いずれモデルチェンジをして戦闘力が高められたニンジャ250(以下=250)が登場する日は遠くない”と思っていた。その考えは間違っておらず、10月末に開催された東京モーターショーで新型が発表された。しかもニンジャ400(以下=400)も同時に、だ。
筆者は東京モーターショーで実車を目にして驚いた。というのも同じ“ニンジャ”の名が与えられ、フルカウルを身にまとっていたものの、これまで250と400は方向性が異なっていた。ところが新型250と400はまるで双子のよう!? 250はJP250などのレースにも使われたことからもわかるとおり、スポーツ色の強いモデルだった(もちろん街乗りからツーリングも楽しめるが)。一方、400はアップライトなバーハンドルを装備するなど、ツアラー色の濃いモデルだった。そのためモデルチェンジの際もこの方向性は変わらないと思っていたからだ。
ショーに展示されていたのは“海外向けモデル”となっており、簡単なスペックが添えられていた。250は旧型より最高出力や最大トルクが向上し、400はホイールベースや車体重量などからスポーツ色が強められていることがうかがえた。各部のパーツを見ても、従来モデルよりスポーツランが楽しめるであろうことが感じ取れた。ただ実際に乗れるのは“2018年になってから”と思っていたが、早くも新型に乗る機会を得たのだ。
250は高回転域の伸び、400は軽さが際立った
今回の試乗場所は大分県にあるサーキット“オートポリス”だ。全日本ロードレース選手権も開催される本格的なコース。まずは外周路を、その後本コースを使っての試乗会となった。
まずはライディングポジション。250は旧型と変わらない感じだが、400は大幅に違う。ただしどちらもフルカウルモデルとしてはアップライトな乗車姿勢になるので、街乗りからロングツーリングもこなせるといったところだ。このあたりは初代250から受け継いだものである。
またがった状態から車体をまっすぐにすると、250・400ともに先代よりも少ない力で済む。先代でも苦労するということはなかったが、女性ライダーにとってはプラスになる部分だ。ガソリンタンクの容量が減り、軽くなったことも影響しているだろう。またどちらも先代より車体重量が減っているため、取りまわしでも有利になっており、とくに400はそれが顕著。先代よりも約40㎏も軽くなっているからだ。
外周路を走行したうえで感じたのは“400がいい”ということ。もちろん250も悪くない。他メーカーのライバルと比較しても劣っているとは感じない。しかし排気量差はいかんともしがたく、とくに外周路では低中速を多用することもあって、トルクフルな400の方が余裕を持って走れた。先代まではキャラクターが違うため同一レベルでの比較は難しいが、新型では排気量差を顕著に感じてしまったのである。ただどちらも軽量な車体もあって、キビキビとした走りを楽しめた。
続いて本コースでの試乗で感じたこと。先代の250は高回転域で“もう少し伸びてほしい”と感じることもあったが、出力が向上したこともあってその不満はない。これならばライバルたちとタイムを競い合えるだろう。400はそれにも増してパワー&トルクがあるので余裕の走りが楽しめる。
ただこれは250であれ、400であれ“出力&トルクが先代よりあるから”という言葉だけでは片付けられない。フレームをはじめとする車体まわりもしっかりと見直されていることも見逃してはならないポイントだ。とくにサーキットを走ったうえで感じたのがフロントまわりのよさだ。250ベースで見ると大径化した正立フロントフォークとフローティング化されたフロントローターの恩恵が大きい。先代よりもスピードが乗るものの、コントロールしやすくストッピングパワーが増したフロントブレーキと、その負荷に負けないフロントフォークのおかげで不安なくスポーツランを楽しむことができるのだ。ちなみに250と400の車体まわりは、見た感じ共通する部分が多い。違いといえば250がバイアスタイヤで、400がラジアルタイヤであること(ちなみにリヤはワンサイズ太い)。サスペンションの仕様は異なるかもしれないが、400だからと言って不満を感じたり、250だからと言ってオーバースペックだとも思わない、絶妙さを感じたしだい。
どちらも街乗りからサーキットまで幅広い場面で楽しめる。余裕を取るなら400、車検を考えるなら250…。国内仕様の価格や発売時期は不明だが、どちらを選ぶか…。ユーザーにとっては悩ましいところだろう。
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※記事の内容はNo.189(2017年12月22日)発売当時のものになります