特集ビギナービッグバイクデビュー
大型バイクの新風なるか!? YAMAHA NIKEN
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※公開中の誌面内容はNo.193(2018年4月24日)発売当時のものになります
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2018年中の発売がヤマハから発表されたナイケン。前2輪を二刀流になぞられてNIKEN(二剣)と名付けられたらしいが、どうやらすごい次元の走りをしてくれそうだ。しかもその恩恵がビギナーにも大いにありそうなのである!
文:谷田貝洋暁/写真:関野 温
大型初心者の救世主!?
NIKENのスタイリング
トラコンがホイルスピン防止、LMWが地面を捉え続ける
ヤマハのLMWモデル、トリシティに初めて乗ったときに驚いたのは、そのフロントタイヤの強烈な接地感だった。バイクという乗り物はその構造上、リヤタイヤは少々ロックしたり空転したところでなんとかなることが多いが、それがフロントタイヤとなると話はまったく別。急ブレーキによるロックはもちろん、スリップした拍子に荷重が抜けてフロントフォークが伸びきってしまったら、ほぼその状態のマシンをコントロールするのは不可能。出足払いをかけられたかのごとく、ステンと横転してしまうのだ。そんな状況で転んだ経験がなくても、雨の日のマンホールや橋脚の鉄の継ぎ目でフロントタイヤが“ヌッ”と一瞬だけ滑って肝を冷やしたことはないだろうか? あれこそがタイヤの接地感の変化に他ならない。そしてこのスリップが発生する一番の原因は路面との接地面が少ないこと。だったらタイヤを二つにして接地面を倍化したら安心じゃない? さらに左右の車輪の幅を広げることで、どちらかがスリップしても、片方がグリップし続けるようにすれば、多くの場合で転ばなくて済むじゃない? というのがLMW機構の根本的な発想だ。
実際、トリシティで走ってみるとこのフロントスリップダウンの恐怖がほとんどなくなることに気付く。確かに両方のタイヤが濡れたマンホールに乗ってしまったら状況は同じだろうが、通常の路上で左右二つのタイヤが同時に滑るような状況はごく稀。実際、雨天走行や砂利の浮いた交差点、落ち葉の積もったワインディグなどなど、通常のオートバイが苦手とする状況を走ってみたが、まったく滑る気配がないことに驚いたものだった。
またトリシティの試乗でもう一つ驚いたのは、その自然なハンドリングだ。実は、パラレログラム(写真参照)のような構造を備えた前2輪のモデルはトリシティが登場する前から存在していた。しかし、トリシティのハンドリングはどの前2輪モデルよりも自然だったのだ。それこそ普通の2輪と同じようなコーナリング感覚で曲がれることに驚いた記憶がある。というのも他メーカーの前2輪モデルは、旋回時に操舵感が妙に重くなるマシンが多かったのだ。この重さの大きな原因は、左右のタイヤのトレッド幅の変化。操舵の入力やバンク角が増えるほどにトレッド幅が変わり、ハンドリングが重くなる。ところがトリシティはテレスコピックを採用したことでトレッド幅がほぼ変わらないため自然なコーナリングが行なえるというワケだ。
もちろんこの構造は新型のナイケンにも採用され、さらにトレッド幅の変化を減らし、より自然なハンドリングを実現する工夫も盛り込まれている。
さらにナイケンには、ABSやトラクションコントロールといった電子制御装置も装備。急ブレーキによる握りゴケを防ぐABSの効能はもはや疑いようがないだろう。加えてトラクションコントロールは、言わばABSの真逆の装置。アクセルの開けすぎによる後輪の空転を防ぐシステムである。
フロントタイヤのスリップダウンを防ぐLMW機構に、ブレーキロックを回避するABS。そしてリヤタイヤのホイルスピンを防ぐトラクションコントロールがそろえば、技術のつたなさに起因する転倒は、ほぼこれらの技術でカバーできると言っていい。
バンク時にアクセルを開けすぎても、ブレーキをかけすぎても、タイヤが路面を捉え続けるナイケン。本年中には国内市場にも登場するようだが、その試乗が今から楽しみで仕方ない。
この機種には、さらに新しい試乗インプレッション記事が以下にあります。
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※記事の内容はNo.193(2018年4月24日)発売当時のものになります