2016年に登場したCRF1000Lアフリカツインが、モデルチェンジするとともに、24ℓタンクを備えたアドベンチャースポーツがバリエーションモデルとして新登場。今回は、このビックタンクのアフリカツインアドベンチャースポーツを1,000㎞のテストライドに連れ出した。
文:谷田貝洋暁/写真:武田大祐
新型アフリカツインとなら、憧れのテールスライドも新型となら実現可能!?
CRF1000L Africa Twin ADVENTURE SPORTS Dual Clutch Transmissionのスタイリング
より重くなってはいるがアフリカツインの軽さは健在
今回試乗したのは24ℓのビックタンクを備えたアフリカツインアドベンチャースポーツ。MTではなく、オートマチック機構を備えた、デュアル・クラッチ・トランスミッション(以下:DCT)車の方だ。
しかもステージは、オフロードコースである福島県のモトスポーツランドしどき。というのも先代のアフリカツインが16年に登場したときに、その試乗会で使われたのがこのコースだった。厳密に言えば当時とは季節もコンディションも違い、そもそもタイヤがノーマルだったりするのだが(試乗会時はブロックタイヤ)、同じ場所を走ってその違いをどう感じるかが知りたくなった。
というのもこの新型のCRF1000Lアフリカツインは、スロットルバイワイヤの採用でエンジンマネジメントを刷新。またバリエーションモデルとして登場したASは、車体もいろいろ変更されている。
まずタンク容量が18ℓから24ℓとなり、サスペンションストロークも延長。最低地上高も20㎜アップした。それ以外にもデザイン変更やエンジンガードやクラッシュバーが装備されたことで13㎏もの重量増になっている(DCTモデルで比較)。
16年の試乗会で感じたアフリカツインの軽さと扱いやすさは、さらに大きく重くなったアフリカツインアドベンチャースポーツでも健在なのか? また電子制御技術はどこまで進化したのか? そのあたりをきっちりオフロードコースで見極めたくなったのだ。
正直、車体はかなり重くなっている。これはダートに持ち込む以前に、満タン給油して走り出した瞬間にその重量増を感じた。車体の前方が重くなったことに加えて、フロントフォーク全長も22㎜長くなっているから、より足回りをたわませるようなストレスが増えたのかもしれない。ただこのあたりは走るほどに慣れて気にならなくなってきた、…ものの、オフロードコース走行にあたっては燃料を1/4ぐらいになるように計算しながらコースへ向かった(笑)。燃料満タンでのコース走行は難しそうだということが、それまでの試乗でなんとなく感じられたからだ。
前後のタイヤ空気圧を100kPaまで落としてコースイン。テクニカルなミニコースでは、やはり軽くコンパクトに感じるアフリカツインのキャラクターは、アフリカツインアドベンチャースポーツになっても健在であることを確認できた。もちろん重くなっているから、そのぶん気は使う。それを差し引いたとしても、車格からすればずいぶん扱いやすい。
それならば!…と先代のSTDアフリカツインで、気持ちよく跳べたセクションにもトライしてみるが、こちらはそう簡単にはいかなかった。どうやらこのアフリカツインアドベンチャースポーツは見た目どおり、フロント側が重たいようで、着地でフロントが前下がりになりやすい。普段、このあたりはアクセルの開け方でコントロールするのだが、アクセルワークを変えたぐらいではどうもフロントが持ち上がらない。そもそもノーマルタイヤでは、踏み切りのための推進力がキッチリ得られないからだが、前のめり着地でフロントフォークが底付きし始めたところでジャンプは諦めた。調子に乗ると僕の技量では派手に前転してしまいそうな気配を感じたからだ。
ヤタガイ ヒロアキさんの投稿 2018年4月29日日曜日
↑CRF1000L アフリカツインアドベンチャースポーツでテールスライドに挑戦! 新しいトルクコントロールシステムのおかげでドリフトも思いのままなのだ
ヤタガイ ヒロアキさんの投稿 2018年4月29日日曜日
↑ノーマルタイヤにもかかわらず、モトスポーツランドしどきの名物“大坂”も登り切るオフロード性能
↑アドベンチャースポーツはなにせタンクが24ℓ。燃料を半分にしてコースインしてみたのだが、やはりフロントが重くノーマルタイヤの駆動力ではとびきりで前下がりになる印象だ
トラコンが補助輪代わり!? テールスライドに挑戦!
だが、ジャンプのためにアクセルをガバ開けてしていて気づいたことがある。それまでの3段階から7段階設定に増えたトラクションコントロールがダート走行にも対応するように進化しているようなのだ。先代のアフリカツインのトラクションコントロールはあくまで安全装置の域を出ず、ダートで遊ぶような場合には介入がわずらわしく感じ、いっそ切りたくなるような設定だった。
ところがである、新型で走りながら、7→6→5…とトラクションコントロールの介入具合を減らしていくと、2あたりから駆動力の制御が入りながらもリヤの空転を許容する設定になっていることに気付く。一番介入度が低い1にすれば、かなりリヤタイヤがスリップしながらも、空転がひどくなるときっちり制御が入り、トラクションを回復してくれる。おかげでいつも以上に思い切ったアクセルワークが可能なのだ。
コーナリング中にアクセルをワイドオープンしてみれば、テールがスライドしながらも、空転が強まるとトラクションコントロールが介入してスリップダウンを防ぐじゃないか!
こうなるとマシンをどこまで信用できるかだ。実は僕、この手のスライドコントロールが超苦手。スタンディングでのスライドコントロールにあこがれはするものの、極力グリップ走行を心がける派…なのだが、走っているうちに「こいつとならイケるんじゃない?」なんて冒険したくなるのだから、よほどトラコンの出来がいい。だからこそ、マシンを信じてアクセルを開ける気になったのだ。おかげでカメラマンのOKが出るまでアクセルを開け続けることになったのだが、もちろん転倒は一度もナシ。何度も繰り返すうちにスタンディングでのスライドのコントロールは、内足荷重の操作に秘密があることも頭と体で理解できた。言うなれば、トラクションコントロールを補助輪代わりにすることでスライドを体験、その理屈まで理解できたってワケ。トラクションコントロールがなければ、絶対到達できなかった世界を垣間見ることができたのだ。いやぁ、電子制御技術のすごさをあらためて実感。こいつとなら今までと違う景色を見ることができるぞ!
次ページではCRF1000L Africa Twin ADVENTURE SPORT DCTのディテール&足つき紹介
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※記事の内容はNo.194(2018年5月24日)発売当時のものになります