KTMのアドベンチャーシリーズのエントリーモデルに位置する1090アドベンチャーシリーズ。今回はフロント21インチホイールを備えたオフロードモデルの1090アドベンチャーR(2018モデル)に試乗する機会を得た
文:谷田貝洋暁/写真:関野 温
オフ車として作られた車体がクラストップの操作性を生む
ヤタガイ ヒロアキさんの投稿 2018年5月22日火曜日
1090と1290の2つのグレードが存在するKTMのアドベンチャーツアラー。1090アドベンチャーは1290アドベンチャーよりも低い数字が示すとおり入門機に位置するマシンだ。1090なんて数字はついてしまっているが、実は排気量1050㏄。というのも少し前まで、シリーズには1050、1190、1290と3つの排気量グレードが用意されていたのだが、17年モデルから1050と1190が統合され1050㏄の排気量をそのままにパワーアップを行ない、1090アドベンチャーという上位クラスの名前が与えられた。国内メーカーでは実排気量と車名の数字が大きく違うことはないけど、海外メーカーでは排気量と車名が違うことはままある。そこは深く考えないほうがいい。
さて、今回試乗した1090アドベンチャーは“R”と呼ばれるモデル。無印のスタンダードモデルがフロントに19インチタイヤとキャストホイールを装備しているのに対し、21インチのスポークホイールを装備。加えてタイヤもチューブレスタイヤではなく、ブロックタイプのチューブタイヤを履き、フロントフォークのストロークは、無印よりも35㎜も多い220㎜が確保されている。つまり“R”は特別高いオフロード性能が与えられたモデルというわけだ。
実際、走り出してみると車体はまぎれもないオフロードバイクに仕上がっている。確かに燃料込みで220㎏超の車体は重たくはあるが、スタンディングすればちょうどいい高さにハンドルがあり、ステップコントロールすれば、きちんとオフロードバイクの動きをする。
KTMは、南米で行なわれるダカールラリー(旧パリ・ダカールラリー)の2輪部門で17連勝という偉業を成し遂げているオーストリアのメーカーである。最近こそデュークシリーズをはじめとするロードスポーツモデルのラインナップが増えているが、もともとエンデューロやモトクロスといったオフロードバイクなどのマシン作りが得意。それこそ今現在も世界で一番オフロードバイクを売っているメーカーでもある。オフロード性能に取り組む姿勢は本物だ。“R”である以上、舗装路メインでフラットダートぐらいならなんとか走れなくはない…なんてついでの機能としてではなく、オフロードコースを軽々と走り、ガレ場やヌタ場も走りきる、きちんとしたオフロードバイクとして作り込まれている。おかげでサスペンションのセッティングはかなりシビア。今回の試乗ではキャンプ道具などの荷物を積んで高速道路走行もしてみたのだが、前後のサスペンションのバランスが積載荷重でくずれ前輪の接地感が希薄になった。まぁ、積載でリヤ荷重が増えたぶん、リヤショックにプリロードをかけて、前輪荷重を増やせば挙動は安定するのだが、それだけ足まわりに過敏で繊細なセッティングがほどこされているということだ。それだけにダートにおける走破性や扱いやすさは、アドベンチャーツアラーのなかでもトップクラス。
これだけデカく重い車体を操ってあえて不整地を走る。もちろん軽量な250㏄のトレールマシンの方が何倍も走破性が高く、取りまわしもラクで、操りやすいことはまちがいない。だが、あえてそんなリスクの高さを承知で危険を冒すことを人は冒険という。アドベンチャーツアラーで走れば、普通の林道ツーリングがものすごく冒険心に満ちた行為に感じることだろう。
1090アドベンチャー Rのスタイリング
1090ADVENTURE Rのディテール紹介
ヤタガイ ヒロアキさんの投稿 2018年5月29日火曜日
SPECIFICATIONS
- 全長×全幅×全高
- ─
- 軸間距離
- 1,580±15㎜
- シート高
- 890㎜
- 半乾燥重量
- 207㎏(燃料含まず)
- エンジン型式・排気量
- 水冷4ストロークDOHC4バルブ V型2気筒・1,050㎤
- 最高出力
- 92kW(125㎰)/─rpm
- 最大トルク
- ─
- 燃料タンク容量
- 23ℓ
- 燃費(WMTC)
- ─
- 価格
- 172万9,000円(税8%込)
CONTACT
- 問い合わせ先
- KTMジャパン
- 電話番号
- 03-3527-8885
- URL
- https://www.ktm.com/jp/
※記事の内容はNo.195(2018年6月23日)発売当時のものになります