HONDA CB250R

特集やっぱり乗りたい!250cc
CB250R ホンダ開発者インタビュー+インプレッション

No.
197
特集やっぱり乗りたい!250ccCB250R ホンダ開発者インタビュー+インプレッション

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※公開中の誌面内容はNo.197(2018年8月24日)発売当時のものになります

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コンパクトなボディを持つCB250R。トラディショナルなスタイリングと先進装備の組み合わせが目を引くが、スポーツバイクに近いディメンションによる乗り味も斬新だった!

文:横田和彦/写真:関野 温

思いのままに操る醍醐味が味わえるスポーツ・ネイキッド

CB250Rのスタイリング

 

 

CB250Rの登場とニューモデル発表の事情

エポックメイキングなニューモデルが登場したとき、メーカーは「今回のバイクはこんなトコロがスゴイんですよ!」と広報や開発者がメディアに対して詳しく解説する発表会を行なう。それによって我々はニューモデルのコンセプトや特徴など多くの情報を仕入れ、みなさんに伝えていく。そこで開発者の想いや細かい工夫など、意外なトピックスを耳にすることもめずらしくない。

 

しかし、すべてのバイクに対して大々的な発表会が行なわれるわけではない。さまざまな事情があるのだろう、後日試乗車だけが用意されるということもある。そういった場合、我々はメーカーが発表するプレスリリースなどを見て新型車の内容を判断することになる。だがそれも事細かに書かれている訳ではないので、情報の伝達には限界がある。ぶっちゃけて言うと、こちらとしても大々的な発表会がない時点で「それほど注目点がないモデルなのかな?」なんて思ってしまうこともある。もちろんそんな思い込みはいけないのだけれど、やはり大々的な発表会があるモデルとないモデルに扱いの差を感じてしまうのが人情だろう。

 

実は今回紹介するCB250Rも発表会が行なわれなかったバイクのひとつ。兄貴分にあたるCB1000Rに対しては行なわれたのだが、125/250はプレスリリースと製品説明書での発表のみだった。それ自体はめずらしいことではない。シリーズとしてはトップモデルが重要な存在であることが多いからだ。そんな経緯もあってボクはCB250Rについて当初は「スタイリッシュな250ネイキッドが出たな〜」くらいにしか思っていなかった。新しいネオレトロ系のフォルムは好みだった。しかし内容については正直あまり深く突っ込んで見てはいなかった。ところが試乗直前にかかってきた編集長からの電話によってその印象は大きく変わったのだ。

 

コイツはフツーのネイキッドじゃない!?

「これってよく見たらメチャクチャ軽いし、ABSシステムにIMUを搭載してるんだって!!」と興奮気味に言う編集長。ちなみにIMUとは加速度などを計測し車体姿勢を推定する慣性計測装置のこと。CBR1000RRなどのスーパースポーツには欠かせないシステムである。当然高価なものだが、それを250クラスに採用するというのは相応の理由があるに違いない。

 

編集長の声に押されてあらためてスペックを細かくチェックしていくと、車重はCB250F比でマイナス16㎏! コリャすごい。他メーカーのネイキッドと比べても、このクラスでは最軽量レベルだ。しかも新設計フレームに装着される倒立フォークはCBR250RRより太く、スイングアームはスチール製ながら凝った形状のガルアームでラジアルタイヤを装着しているなんて、並の250スポーツモデル以上の装備じゃないか。チェックが甘かったことを反省する。実はコイツ、すごいバイクなのかも知れないぞ。個人的に「軽さは正義」という考えを持つボクは期待が募るのを感じた。

 

ワクワクしながら実車とご対面。おおっ、思った以上に小さいぞ。エッジが効いた独特の形状をしたガソリンタンク(正確には樹脂製のカバー)周辺にギュッと凝縮するようなカタマリ感があり、いかにも走りそうなオーラが漂っている。やっぱりバイクは実際に見ないとわからないよなー、とつぶやきながらまたがる。シートスポンジの角が内ももに当たるあたりに少し違和感を覚えたが、そのまま座って車体を起こす。「軽い!」アップハンドルなので力を入れやすいというのもあるが、ひとクラス下の印象だ。軽いのはいいが、ちょっと気になったのはステップバーの位置。ちょうど足を降ろした所にあるので前後どちらかに避けなければいけない。信号待ちのたびに気になるかな、と思いつつエンジンを始動。CBR250R(MC41)から続くDOHC単気筒エンジン(オンからオフまで幅広く使われていて、もはや名機と言ってもよいだろう)が響かせる歯切れよい排気音は耳に心地よく、アクセル操作に対して弾けるように反応する。元気なエンジンという感じがスポーツバイクらしくて好ましい。

 

クラッチを握りギヤを入れ走り出す。車体が軽いこともありスタートダッシュは軽快。単気筒エンジンにとってはあまり得意ではない低回転域でもギクシャクしにくく、そこからアクセルを開けると素直に吹けあがっていく。

 

ハンドリングは軽く、挙動にもダイレクト感がある。あっちに行きたいなと思ってちょっと荷重移動すると、すぐノーズがそっちに向いてくれるのだ。これはスポーツバイクと同じ前後50対50の重量配分になる車体設計や、ハンドルとライダーが近いポジション設定などによるものであることは間違いない。そのため、街中での信号から信号までの短い区間や交差点をキビキビと駆け抜けるのが楽しくなってくる。まさにファンバイクだ。

 

かなり軽い操作感なので高速道路での走りが気になったが、実際に走ってみると軽いためか風などによる外乱の影響はやや受けやすいものの、前後タイヤの接地感は高く安定感も十分。ダイレクト感あるパワーフィーリングによって法定速度+αの追い越しも難なくこなしてくれる。リヤシートが小さく積載量が少なめだが、市販のシートバッグなどをうまく利用すれば旅バイクとしても活躍しそうだ。

 

また個人的に期待していたワインディングでの走行性能はかなりスポーティな印象。サスペンションのストローク感が短くブレーキング時のノーズダイブが少なめ。といっても剛性感があるので不安は感じない。寝かし込みはクイックだが感覚に従順なもの。アクセルを開けるとエンジンのパワーがタイヤに伝わり、路面を押し出す感じもリアルに伝わってくる。コーナリングが気持ちよくできるのは快感の一言。バイクに乗る楽しみが増す印象だ。

 

なにより驚いたのは、IMUを搭載したABSシステムだ。何度も急制動をかけて試したのだが、誤解を恐れずに言えば“しっかり止まる”。このクラスにありがちなロックが解除された瞬間にズルッと前に進んでしまう感覚が最小限で収まるのだ。しかもブレーキが一番強力に効くポイントを有効に使う印象なので、かなり短い距離で止まることができる。このシステムはフロントブレーキをかけることが不安なビギナーにとって心強い味方であると同時に、パニックブレーキなどでもかなり有効に働く安全装備だろう。唯一、ブレーキレバーのストローク感が短いのが気になったので、せめてレバーに手のサイズに合わせられる調整機能をつけてもらいたかったと感じた。せっかくいいブレーキシステムなのだから、有効に活かしたいのだ。

 

おもしろくてつい長時間乗り回してしまった。その結果、かなり思い切った設定のスポーツ・ネイキッドであることが実感できた。クラス最軽量の車体をレスポンスにすぐれたトルクフルなエンジンでライダーの意のままに走らせる。バイクが持つ楽しみの根本である「思いどおりに操る感覚」がバッチリ味わえるのだから、CB250Rは極上のファンバイクなのだ。

 

 

次ページではCB250Rのディテール&足つき紹介

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※記事の内容はNo.197(2018年8月24日)発売当時のものになります

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