特集最新モデルの読み解き方
バイクのジャンルに注目
149
走り出した瞬間にその魅力に気付くはず
MT-07の開発者は、ただ単に「押し歩きがしやすい」とか「立ちゴケの恐さが少ない」といったメリットのためだけに、エンジンやフレームをゼロから開発したのだろうか。当然そんなわけはなく、軽さのメリットは他にもたくさんあるのだ。バイクの軽量化は、さまざまな要素を総合的に底上げすることになり、結果的に“バイクの楽しさ”に結び付く。これこそが、MTシリーズが独自に追求する世界観なのである。これは数値に現れるものではないので、体感するためには乗ってみるしかないだろう。
クラッチレバーを離していき、リヤタイヤに駆動力が伝わった瞬間、「バイクはスペックやメカニズムじゃない。トータルとしての完成度が大事なんだ!」ということが理解できる。軽い車体は、加速感という非常に重要なフィーリングを向上させる。排気量689ccのエンジンに179kg(ABS仕様は182kg)という車重の組み合わせは、ライダーの「楽しい!」という感覚を存分に呼び起こしてくれるのだ。エンジンは非常にトルクフルな味付けになっており、シフトダウンするのをちょっとサボりぎみに走っても、ズ太いトルクで「ボルボルボルッ!」と再加速についてきてくれる。
MT-07が搭載するエンジンは並列2気筒だ。3気筒エンジンを搭載したMT-09に比べると話題性には少々欠けるし、09のように走行モードを切り替えることもできない。そんなところから「MT-07って、09の廉価版でしょ?」「ダウングレード版でしょ?」などと思っている人がいるかもしれないが、この認識は大きな間違いである。MT-07は、“MTワールド”という大きな世界観を共通としているが、09とはまた違った領域をカバーしているのだ。09よりもさらに軽量スリムな車体にトルクフルなエンジンの組み合わせは、街中でも十分に楽しい。ABSなしで69万9840円という価格設定も魅力的だし、ビッグバイクビギナーにかなりオススメできる1台といえるだろう。いずれにせよ、こういった世界観を見せてくれるバイクは、現行モデルでいえばライバル不在ということになる。デザイン面なども含め、当然好き嫌いはあるだろうけれど、好きな人にとっては“ドはまり”する楽しいバイクに仕上がっていることは間違いない。
DETAIL
SPECIFICATIONS※[]のデータはABS
- 全長×全幅×全高
- 2,085×745×1,090mm
- 軸間距離
- 1,400mm
- シート高
- 805mm
- 車両重量
- 179[182]kg
- エンジン型式・排気量
- 水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒・689cm3
- 最高出力
- 54kW(73.4ps)/9,000rpm
- 最大トルク
- 68N・m(6.9kgf・m)/6,500rpm
- タンク容量
- 13L
- 価格
- 69万9,840円[74万9,520円]
CONTACT
- 問い合わせ先
- ヤマハ発動機カスタマーコミュニケーションセンター
- 電話番号
- 0120-090-819
- URL
- https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/
※記事の内容はNo.149(2014年8月23日)発売当時のものになります
スタッフのインプレッションなど、より詳しい情報は本誌でチェック!