ドゥカティのネイキッドモデル“モンスター”シリーズの最小モデルが797だ。最新型ではあえてシンプルな構成とし、より身近なミドルネイキッドとして私たちの前に登場した。
文・写真:岩崎 雅考
シンプルだからこそ見えて来る世界がある
ロングセラーシリーズの熟成が生む乗りやすさ
世界最高峰のロードレース、MotoGPやSBK(世界スーパーバイク選手権)で活躍するスポーティなカテゴリーに強い印象があるドゥカティ。じつはムルチストラーダやディアベルなどさまざまなカテゴリーに車両をラインナップしていて、そんななかで、もっともオーソドックスなネイキッドシリーズが、モンスターだ。デビューしたのは1993年。当時国内ではネイキッドに光が当たりだしたころである。ただ、国産メーカーが昔ながらのオーソドックスなスタイルのネイキッドをラインナップしたのに対し、モンスターはイタリアらしいオリジナリティあふれる新しいスタイルで登場して大きな反響を呼んだ。その後は25年もの長きに渡りモデルチェンジを繰り返しながら現在に至り、ネイキッドバイクのアイコンともいわれている。
今回紹介する797は、2017年にラインナップに加わった空冷エンジンを搭載したモデルで、外見上の特徴はハイブリッドフレームコンセプトにより小さくコンパクトになってきたトレリスフレームに、デビュー当時のようなフレームコンセプトを採用したことだ。まさにモンスターのアイデンティティ復活である。空冷ならではのフィンと相まって、時流となったネオレトロ感も漂っている。
さて実際の車両に目を移すと、1435㎜とどちらかというと400㏄クラスに近いホイールベースに、車重がわずか193㎏と軽量コンパクトな車体は、バイクに慣れていないライダーにも安心感を与えてくれる。また、L型ツインらしいスリムさも、ライダーにフレンドリーだ。ただ、805㎜のシート高が体格の小さいライダーには少しばかり気になるポイントになるかもしれない。ポジションで絶妙さを感じたのはハンドルの設定で、モンスターらしくハンドル幅が830㎜と幅広ながら、体格の小さいライダーが乗車しても不満を感じることはなかった。
エンジンはLツインらしいドコドコ感を低回転域で持たせつつ、十分なトルクがあるので、多少ラフなアクセルワークでもエンストすることはなく、アクセルを開けていくに従って、ドコドコ感が消えてスムーズさを増していく。その間の加速もスムーズで、803㏄の排気量があるおかげで、高速道路の制限速度まで難なくスピードを増してくれるし、さらなる余裕もあるので高速移動もラクラクだ。ブレーキは効き具合を把握しやすく、必要にして十分な制動力を有しているので、コントローラブルといえる。サスペンションは首都高速の継ぎ目を通過しても衝撃がほとんど気にならないソフトなセッティングながら、シャーシ全体で見ると車線変更などでクイックな動きをしても、車体がしっかりとついてくる剛性感も持ち合わせている。ハンドリングもライダーが思い描いたラインを意識することなくトレースしてくれるので、素直で扱いやすい印象だ。
ビッグバイクビギナーにその乗り味を聞いたところ、乗る前は不安があったけれど5㎞も走らないうちにその扱いやすさから不安は消え、気持ちよく走ることができたとのこと。そう、扱いやすいという点でビギナーから楽しめるバイクといえるのだが、電子制御によるライダーアシスト機構がさほど採用されていない点も、バイクの挙動を知ることができてビギナーに勧めたくなるバイクなのである。バイクとしてシンプルな構成は、ライダーを成長させてくれることは間違いないし、長く付き合っても長きにわたって熟成されて今に至るパッケージは乗り手を飽きさせることはないだろう。
モンスター797のディテール
モンスター797の足つき&乗車ポジション
SPECIFICATIONS
- 全長×全幅×全高
- 2,099×830×1,085(㎜)
- 軸間距離
- 1,435㎜
- シート高
- 805㎜
- 車両重量
- 193㎏
- エンジン型式・排気量
- 空冷4ストロークデスモドロミック 2バルブ L型2気筒・803㎤
- 最高出力
- 54kW(73㎰)/8,250rpm
- 最大トルク
- 67N・m(6.8kgf・m)/5,750rpm
- 燃料タンク容量
- 16.5ℓ
- 燃費(WMTC)
- ─
- カラーバリエーション
- レッド、スターホワイト・シルク、ダークステルス
- 価格
- 111万9,000円(レッド)、113万9,000円(スターホワイト・シルク、ダークステルス)、+は5万円高
CONTACT
- 問い合わせ先
- ドゥカティジャパン
- 電話番号
- 0120-030-292
- URL
- https://www.ducati.com/jp/ja/home
※記事の内容はNo.199(2018年10月24日)発売当時のものになります