サグ出しと減衰調整。サスセッティング変更でコースでの走りが激変!
文:濱矢文夫/写真:武田大祐
チートとも言える高い潜在能力を開放するのだ
いくら現役モトクロッサーであるCRF450Rをベースにしたとはいえ公道用の市販車。そのために保安部品の取り付け、エミッションや騒音の規制クリア。時間単位でメンテナンスしなければならないレース用とは違い、一般的な公道モデルとして使える耐久性にするなどストリート・リーガルのマシンとして手を加えている。それでも約70%をモトクロッサーから引き継いでいるというのは開発した人の熱意を感じずにはいられない。
違いはハンドリングにもある。この排気量クラスの市販トレール車では抜群に軽い車体だけれど、いろいろ取り付け変更したりでモトクロッサーより重くなっているのは事実だが、その差とは別に専用の味付けもほどこされている。スタンダードの状態でシートに腰かけるとリヤサスペンションが柔らかく沈み、車体の姿勢はややお尻下がり。フロントの荷重が弱まって直進時の安定性やコーナーでの挙動は穏やか。これは幅広いライダーが怖がらずに林道や街中、高速、峠道など舗装路で安定して走れるセッティングにしたからだろう。おかげで身長170㎝の短足(筆者)でも両足が届くほど低いシートも手に入れることができた。ただ、その半面、ダート走行である程度の技量を持ったライダーにとってはコーナーでの旋回性や切り返しで市販トレールらしい動きの重さを感じてしまう。
フレームやサスペンションの能力は基本的にモトクロッサーのまんまだから、異世界召喚物語風に言えばチートな強力スキルが隠されている状態なわけだ。今回はオフロードコースを速く走るために、隠されたそれを開放することにした。まずやったのは通称“サグ出し”と言われるもので、サスペンションのプリロードをライダーの体重に合わせたものにする作業。これによってサスペンションの動きがより適切になり、路面追従性が上がり運動性能が高まる。具体的にはメンテナンススタンドなどで車体を持ち上げサスペンションが伸びた状態から、ライダーがまたがったときの沈み込み量をホイールトラベル値の3分の1にするのがベストとされている。詳しくは下のカコミで説明するが、まずはまたがったときに約100㎜沈むようにプリロード調整。結果、リヤはスタンダードの状態からかなりプリロードをかけないといけなかった。サグ出し後にまたがると、シート高は確実に上がって、もう両足では届かないほど。足つきも競技車両に近づいた。残るはダンピングの調整だ。前後とも伸び縮みが細かくアジャストできるので、コースを走ってはピット・インして調整という作業を何度も繰り返して決めていった。
サグ出し及び減衰調整で最適化!
サグ出しはプリロードをライダーの体重に合わせたものにする作業。これで適切なバネの動きと車体姿勢にする。バネ単体を変形させる力=スプリングレートとは違うから混同しないように。車体を持ち上げサスが完全に伸びた状態から、ライダーが乗った時の沈み込み量がホイールトラベル値の3分の1くらいにするのがベストと言われる。アクスルから上の任意の場所にテープなどを貼り付け、そこまでの距離を測りながら調整する。だからひとりでやるのは大変。友達を呼ぶべし。
足つき&乗車ポジション
作業を終えた車体は、モトクロッサーとまではいかないが、スタンダードの状態が嘘のように動きが俊敏になった。サグ出し、ダンピング調整のおかげで、しっかり路面をとらえて、加速するときのトラクション性能も向上。スタンダードだとどうしても倒し込みがワンテンポ遅れて、旋回も外側に大きくふくらみがちで、チグハグだった小さな半径のコーナーが左右に連続するセクションで、軽くリーンしてピタッとインにつけられ、早めにスロットルオンしてすばやく抜けられるようになってニンマリ。荒れた路面や連続した小山に高速で突っ込んだときの安定感も格段に向上してスロットルを開けながら抜けられる。ジャンプ後の着地のリバウンドが抑制され思いっきりいける。もうスタンダードとは別物って感じで楽しいったらありゃしない。やっぱりこいつのポテンシャルは並のトレール車とは違うね。
ヤタガイ ヒロアキさんの投稿 2018年11月22日木曜日
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※記事の内容はNo.201(2018年12月22日)発売当時のものになります