2018年4月より、MT-09トレーサーという名前から、トレーサー900へと改名。“名前と外観の変更だけで、乗り味はかわってないでしょ?”と思っているアナタ。大間違いです! 走らせてみるとずいぶんと印象が変わっていたのだ!
文:谷田貝洋暁/写真:武田大祐
スイングアームの延長でキャラクターを大幅変更
TRACER900のスタイリング
あれ?トレーサーってこんなに大きかったけ?
時流のアドベンチャーツアラー風のスタイリングと並列3気筒エンジンを搭載して2015年に発売されたトレーサー。途中、2017年には出力がそれまでの110㎰から116㎰になったり、スリッパークラッチ追加、トラクションコントロールモード追加などをふくむモデルチェンジはあったものの、キャラクターを根底から変えるような変更はこれまでなかった。
今回のモデルチェンジでもそれほど変わってないんだろうな?なんて印象だった。
というのも、外観を変更しているものの、その変化はちょっとわかりにくいのだ。箇所でいえばヘッドライトまわりやシュラウド、タンクまわりやテールまわりのカウルなどなど。オーナーかよっぽどのマニアでなければ、「コレ、新型? 旧型? どっち?」と言いたくなるぐらいである。
でも、これが走らせてみると大違い。一言でいうと、従来モデルに比べて大柄に、車格が大きくなって安定性が増している。取りまわしたり、またがったりしたときももちろんなのだが、もう走ってみたほうがよくわかる。新型の方がひとまわり車格が大きくなったかのよう。コーナリング時の挙動はキビキビというより、安定感が増した、そんな印象を受けるのだ。
この走りのキャラクター、激変の秘密はスイングアームの変更だ。新型のトレーサー900は、キャスター角(24°)&トレール(100㎜)を変更することなく、スイングームを延長。従来モデル比で60㎜、当たり前だが軸間距離も1440㎜から1500㎜へと60㎜延長されている。
たかが60㎜と思うなかれ、バイクの軸間距離60㎜の違いは、もう別のバイクといっていいほどキャラクターが変わるものだ。そこで今度は前後のタイヤにかかる分布荷重(空車状態)を調べてみると、従来モデルがフロント50.5:リヤ49.5だったのに対し、フロント51.9:リヤ48.1とずいぶんフロント荷重が増しているようだ。
どちらかというと、従来モデルのトレーサーは、アドベンチャーツアラーライクなスタイリングとは裏腹にキビキビとワインディングを駆け抜けるアルペンマスターのような、スポーティなキャラクターの印象が強かった。それが、どうやら今回のモデルチェンジでよりツアラー的なキャラクターが強められたようである。とくに高速道路ではその恩恵を顕著に感じた。シート形状やハンドル形状の見直しによるポシジョン設定の変化によるところもあるかもしれないが、ハイスピードレンジでの巡航走行がものすごくラクになって、力を抜いて走っていられるそんなふうに感じるのだ。
今回の試乗では、通勤からワインディングまで3日間ほど、トレーサーで走り回ってみたが、丸1日バイクで走っていても疲れない。長旅にはこんな相棒を選んでおくと、どこへでも走っていける、そんな気がしてくるものだ。
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※記事の内容はNo.201(2018年12月22日)発売当時のものになります