2018年の125/150のフルモデルチェンジに加え、電気とエンジンが組み合わされたハイブリッドも登場したPCXシリーズに、今度は電気だけで動くPCXエレクトリックが一般販売はなく、企業向けのリース物件として登場。プレス向けの発表試乗会が行なわれたのでインプレッションをお届け!
文:谷田貝洋暁/写真:武田大祐
先進技術のPCXについに電動モデルのエレクトリックが登場!
PCXエレクトリックのスタイリング
走行音がしないと風の音がよく聞こえる
なにせ試乗時間がたった15分である。しかも、この試乗のために用意されたのは駐車場にパイロンで作られたコース。とにかく撮影優先でぐるぐると回り、最後の10分足らずの時間でなんとか一般道にも出てきた。そんな十分とはいえない状況でのインプレッションであることを最初にことわっておきたい。
さて、エレクトリック。やはり電動バイクで一番とまどうのはスタートの瞬間だ。イグニッションをオンにして、セルスターター(ないけど)ボタンを押すと、「ピッ」というアラーム音とともにメーターに“READY”という文字を表示。これで発進準備完了。もちろん、エンジン音がない、無音状態である。
そこからアクセルを開けると、スルスルと後輪が回り出すというわけだ。エンジン車と違って電動バイクのキモはスタート時の出力特性。というのも、通電すればすぐさまトルクを発揮するモーターはこのアクセルの開け始めでドンツキ感が出やすいのだ。
だがこのPCXエレクトリックは、出足の加速もスムーズだった。それどころか、一番ライダーがナーバスになるコーナリング後のアクセルオンでの場面も非常に扱いやすく、思ったとおり加速をしてくれるから乗りにくさは感じない。むしろ、その乗り味はかなり上質と言えるものだ。スロットルボディには、ワイヤーの一切ないスロットルポジションセンサーのAPSを採用しているそうだが、アクセル操作に対する出力制御にまったく違和感を感じない。
一方、気になったことがひとつ。ぐるぐるとパイロン周回を重ねるうちに気づいたPCXらしい小回りのよさが、このエレクトリックではちょっとスポイルされているということだ。聞けばバッテリー搭載スペースを確保するためにホイールベースが65㎜ほど長く設定したとのこと。おかげでエレクトリックのキャラクターには、PCXらしいキビキビ感よりも、安定感を先に感じる乗り味になっている。
しかもエンジン車ならユニットスイングにあたる部分がまるまるモーターに置き換わっているわけである。普通のエンジン車とは、かなり勝手が違いそうだ。開発陣に話を聞いてみると、スイングアームとメインフレーム間にパワーユニットハンガーとよばれるパーツを増設。その取り付け部分にラバーブッシュを組み込むことで、エレクトリックモーターならではのダイレクトなトルクをソフトにして乗り心地をよくするような工夫を盛り込んでいるという。
フルLED化に、アイドリングストップ機構、ハイブリッド化などなど。先進技術がいち早く注ぎ込まれるPCXシリーズだが、まさか電動化する時代がくるとは、さすがは21世紀といったところか。
しかも、乗ってみれば十分加速もいいし、扱いにくさも感じない。60㎞/h定地走行テスト値で41㎞という航続距離だけがネックになりそうだが、この数値は、あくまで60㎞/hで走り続けた場合の数値。ストップ&ゴーを繰り返す実際の公道では50~53㎞ほどの移動が可能とのこと。
さてこのPCX。現在は企業、個人事業主、官公庁に限定したリース販売だけとなっているが、2019年春からは、首都圏におけるバイクシェアサービスと、観光地でのレンタルサービスの実証実験もスタートするとのこと。機会があれば、無音で風を切る経験をしてみるのもおもしろいだろう。
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※記事の内容はNo.201(2018年12月22日)発売当時のものになります