YAMAHA ナイケン

NIKEN雪道チャレンジ!

No.
203
NIKEN雪道チャレンジ!

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※公開中の誌面内容はNo.203(2019年2月23日)発売当時のものになります

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前2輪、LMW機構という類まれな車体構成を与えられ、絶大なフロントタイヤのグリップ力を誇るヤマハ・ナイケン。このバイク、冬の道にも強いんじゃない!? そんな疑問から旅は始まった。圧雪路に立ち向かうため特注タイヤチェーンも用意。果たして厳冬期チャレンジはトラブルなくフィナーレを迎えられるのか!?

文:谷田貝洋暁/写真:武田大祐

ナイケンと一緒に日本の冬に真っ向勝負だ!

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白銀の世界を求めて、いざ厳冬期の長野へ

冬。それは僕たちバイク乗りにとってとてもリスクが高い季節だ。スリップを起こしやすくなる低い路面温度、体を強張らせる外気温。山間部ともなれば、路面凍結に積雪などなど、ライダーの旅心をなえさせる要素が盛りだくさん。日夜走り回る旅好きライダーだってどうしたって愛車のオドメーターの伸びが鈍るもんだ。

 

しかし、ヤマハから前二輪という、とんでもない強烈な個性を与えられたマシンが登場した。その名もナイケン。トリシティ125、155に続く第3のLMW機構を搭載したオートバイであり、こいつとならば、ライダーの苦手な冬とも戦えそうじゃない!?

 

LMW、リーニング・マルチ・ホイールとは、複数輪(マルチホイール)でありながら、オートバイと同じように車体を傾けて(リーン)コーナリングする特性を持つヤマハの乗り物の総称だ。

 

このナイケンに初めて乗ったのは、昨年ヤマハさんが開催した、ジャーナリスト向けの試乗会。コースを貸し切った完全クローズド環境だったこともあり、その前2輪からくる絶大な接地感と安定感に僕自身、かなり調子にのった(笑)。それこそヒザを擦りながら手放ししてみたり、バンク中に無理やりトラクションコントロールを介入させてリヤのすべり具合を確認することになったり…。自身の技量を超えた走りができるナイケンに度肝を抜かれた。

 

しかし、その後一般公道でツーリングに連れ出してみると、ガラリと印象が変わったのだ。クローズド環境の試乗会では無茶をしたこともあって、旅先でも目を吊り上げて走ることになるのかと思えば、案外ツーリングペースでの走りも楽しい。…というか、不思議なくらい目が吊り上がらない。

 

むしろ「公道ですから紳士的に…」なんてくらいの自制心が働くのである。この妙な心境の変化にはたまげてしまった。というのも僕は、典型的というか、なんというか、バイク乗り的思考をする人間だ。KTMの開発哲学である“READY TO RACE”じゃないが、生身の人間では絶対に到達しえない速度に快感を覚え、ワインディングに差しかかれば、コーナーをスムーズに駆け抜けることに集中する。そんな因子を多分に持っている。胸をはって言うことじゃないが、ゴールド免許はいまだお目にかかったことがない。

 

…話がそれた。さて、ナイケンでワインディングをクルーズしながら、この不思議な心境変化を分析してみたのだが、ひとつ思い当たったことがある。初めてビックバイクを手にしたあのときの心境変化に酷似しているのだ。僕のバイクデビューは400㏄の単気筒モデルだった。決して速いマシンじゃなかったが、それだけに走れば目を吊り上げる、そんな乗り方ばかりしていた。ところが、あるとき1000㏄ビッグバイクに乗り替えると、不思議と400㏄のマシンに乗っていたときほど目を吊り上げて走ることがなくなった。もちろん1000㏄だからアクセルを開ければ怒濤の加速。400㏄のマシンとは比べものにならない速度が出せるのだが、不思議と飛ばす気にならないものなのだ。圧倒的なパワーの余裕が僕の中の何かを変えてしまった。そんな気さえしたのだ。

 

ナイケンも同じな気がする。「そんなに目を吊り上げなくても、ねぇ…」そんなふうに思ってしまう自分はなんだか、ナイケンから提供される圧倒的な余裕になんだか負けた気さえする(笑)。人は心の弱い生き物である。ひとたび居心地のいい湯船に浸かってしまうと、なかなか出られないものだ。そんなことに一度気づいてしまうと、逆手に取りたくなるのも人のさが。

 

ならば、冬を相手にナイケンとどこまでやれるか試してやろうじゃないの。僕のなかで今回の雪道チャレンジが鎌首をもたげた瞬間だった。人生にはときとして挑戦が必要なのだ。

 

LMW機構の安定感は日本の冬に通用する!?

勢いにまかせて厳冬期チャレンジを決めてしまったが、実際、編集部にナイケンがやってきたとたん心がなえた(笑)。普通の道なら、なんてことない車格のナイケンなのだが、雪道を走ることを想定すると、存外車格が大きく、そして重さを感じてしまったのである。

 

「こいつと雪道を走るのか…」。エンジンは116馬力を発揮する845㏄の並列3気筒を全長2150の車体の搭載。重さは燃料込みで263㎏もある…。“ナイケンと雪道を走ってみたい”と自分で言いだしておきながらなんだが、正気の沙汰じゃない。

 

実は僕、同じLMW機構を持つトリシティでも雪道走行をしたことがある。そのときに感じたLMWの雪道適性への手応えをもって、このナイケンとのチャレンジに臨ことしたのだが、ここまで大きくて重いとねぇ…、どうなるんだろ? ちょっと、いやおおいに後悔しはじめる(笑)。

 

でもね、すでにサイは自分で投げてしまった! というのも、東京・世田谷にあるバイクショップ・風魔プラス1さんを通じて、ミズノチェンさんに、ナイケン用のタイヤチェーンを制作依頼してしまったのだ。なんせナイケンのリヤタイヤはその幅190㎜もあるビックサイズ。もちろん既存製品のタイヤチェーンの既存サイズに適応するワケもなく、特注することになったのだが、「ナイケンへの装着前例がないので、効果のほどは保証できませんよ?」とのこと。まぁ、そうだよね。ということで、この記事を読んで同じようなチャレンジをしようとする方は、自己責任でくれぐれもお気をつけあそばせ!

 

次ページ:ビーナスラインへ突入する前にナイケンというマシンについて解説!

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※記事の内容はNo.203(2019年2月23日)発売当時のものになります

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