ムルティストラーダファミリーに加わった950Sは、装備と価格のバランスがすばらしい一台だった。電子制御技術と持ち前のすぐれたシャーシが生み出す4 Bikes in1のバランスは、兄貴分1260シリーズ、あやうし!と言えるでき映えだったのだ!
文:松井 勉/写真:ドゥカティジャパン
濃厚・ムルティストラーダを、毎日、どこでも楽しめる950S
ムルティストラーダ950Sのスタイリング
回すのが楽しい?回るから楽しい!
ドゥカティの冒険バイク、ムルティストラーダ。“4つのバイクを1台で”というコンセプトを掲げ、スポーツ、ツーリング、市街地、オフロードを、持ち前のシャーシ、幅広いトルクバンドを持つLツインエンジン、そして電子制御技術を駆使することで場面に合わせ変身する高機能バイクとして人気だ。第三世代の現行ムルティストラーダもその哲学を踏襲している。ファミリーには1260㏄エンジンを搭載する3モデル、そして弟分として950がある。そこに加わった950Sは、1260Sと同等の装備を持ちながら、兄貴分より82万4000円も低いプライスで日本市場にやってくる。これは、1260系が気になるけど、価格面で躊躇していた人にとって、大きなニュースである。ムルティストラーダの強味は、950系も1260系も多岐にわたり車体を共有している点だけに、予算をオプションに振り向け、自分だけのムルティストラーダを作るのにバジェットを使える、とも考えられる。
950Sの追加装備として、電子制御サスペンション、フルLEDヘッドライト、クイックシフター、クルーズコントロール、TFTカラーモニター、ハンズフリーキーなどがある。正直、この装備差が950の価格+23万円で埋まるとは思えない。ドゥカティ・ジャパンの人が言うとおり“戦略的価格”である。
その気になる950S、バレンシアに飛んで乗ってきた。圧倒的なパワーとトルクで走る1260とは違い、950系の持ち味は回して楽しい、回せるからおもしろいエンジンにある。
今回の試乗コースは道の荒れた市街地から始まった。電子制御サスペンションは状況に合わせて瞬時にダンパーの減衰圧を変えるから乗り心地がすばらしい。そして日本よりも流れの早い高速道路でも厚手の絨毯の上を歩くようだ。エンジンにパンチ不足はない。5000回転あたりからの加速が気持ちいいし、高い回転を保てばスポーツできることがすぐにわかる。
その予感が確信になったのは峠道での身のこなしだ。下りのカーブへの進入時にブレーキングを強めにしてもフロントフォークが沈みすぎることがなく、安定感が高い。そこから旋回させるのもラクラクだし一体感がある。
そんな場面で気分を満たすのがクイックシフターだ。パン、パンと決まる操作に気分が高まり、なによりライダーをクラッチ操作から解放してくれることと、変速が早いから圧倒的に路面へのトラクションが途切れないので、そもそも安心感が高まることがうれしい。950S、持ち前の装備で、走る楽しさの純度が上がっている、というか、楽しみながらあっという間に一日320㎞を走破した。
結論をいえば、この価格でここまで楽しいなら満足度は高い。1260との価格差分をオプションにつぎ込んでしまうのも賢い買い物かもしれない。タンデム、タンデム+荷物がマスト、という人以外なら自信を持って950Sはオススメできる。それにムルティストラーダの質感にはやっぱり電子制御サスが似合うから!
充実のメーカー純正アクセサリーで使い方に合わせてカスタマイズできる
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※記事の内容はNo.204(2019年3月23日)発売当時のものになります