パラレルツインエンジンを搭載したホンダCBR400Rが新しくなった。スタイルを洗練させタイプ設定だったABSを標準装備。しかし、乗ってみるとその変化の本質は走りにあった。
文:横田和彦/写真:関野 温
走りのレベルが確実にアップした新型CBR400R
CBR400Rのスタイリング
マイナス部分がなく全体を底上げした
変わったとわかりやすいところは見た目がCBR250RRのイメージを受け継いだような攻撃的デザインになったところ。そして外観だけでなく、液晶メーターが単色から多色化されたことなども含め、前モデルからディテールの処理が上質になった。クラスが一つ上になったみたいだ。
アッパーブラケットの上に取り付けてあったセパレートハンドルが、アッパーブラケット下になり、グリップ位置が低くなった。燃料タンクの上に手の位置がくるような印象だったものから、燃料タンク上面より少しだけ下に。それでもCBR250RRほどの前傾にはなってはいない。走り出してのファーストインプレッションから数時間走行後でも“キツい”とは思わなかった。スポーティな姿勢になりながら、快適性と操作性を失っていないちょうどいい感じ。逆に前モデルがフルフェアリングのスポーツ車としてはちょっとアップライトだった。
ここまでのスタイルやポジションについては個人の体格や好みもあり、どんな人にもポジティブなものにならないかもしれないけれど、ちゃんと他に誰でも納得がいく“よくなったところ”がある。それは中身。そう走りだ。鋼管ダイヤモンドフレームや、水冷DOHCパラレルツインエンジンという構成は引き継いで、基本は変わっていない。でも、走り出してすぐに違いがわかった。スロットルを開けていくとより明確なパンチ力を実感。高回転まで回したときのスムーズさや、回転のツキのよさ、メリハリが増した。バルブのタイミングとリフト量を変え、インジェクターを変更し、3000~7000rpmのトルクを3~4%向上させたという。スリッパークラッチを採用して、クラッチレバー操作がかなり軽くなったことも見逃せない部分だ。
もっとも印象的だったのが、前後サスペンションの変化である。実に好ましいものになった。低速走行時でもしなやかに動いて前後のタイヤは路面をなめていく。フロントブレーキを強く効かせフォークが縮んでからブレーキをリリースしたときのダンピング、収まり具合が実によくて、以前はハードに攻め込んだ走りをすると前後に揺すられる動きが残ったけれど、それが気にならなくなった。だからコーナーリングをしていく一連の操作では、タイヤグリップをきっちり把握できながら、安心、安定性のある気持ちいい旋回を味わえた。路面のうねりやちょっとした段差のいなし具合も進歩。試乗後に正立フロントフォークはそのまま使うがさらに作動性を上げ、リヤショックはコストをかけた分離加圧式のものに変更したと知って納得した。
旧CBR400Rが決して悪かったわけではない。タイプの違う3モデルとフレーム、エンジンを共有しての車体価格からすればバランスよくまとまっており、汎用的という面では大きな不満はなかった。この新CBR400Rは、そこからマイナスするところがないまま、スポーツバイクのスタイルに見合う走りへとレベルアップさせた。これは結果的に快適性にもつながっている。外見だけで中身はそのままだと思っていたら大きな間違いだ。走りの質が確実に上がった。バイクの本質として、見た目の変化よりとても重要なことだ。積極的にワインディングを走りたくなる。装備の充実も含めこれで僅かな値上げでおさめたのは大きく評価したい。これぞ正常進化。
YOKOTA’s IMPRESSION
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※記事の内容はNo.205(2019年4月24日)発売当時のものになります