FからRへ、ホンダのミドルスポーツがスタイルや装備を一新した。現行CBRシリーズの流れをくんだルックスに、コンパクトで取りまわしやすい車格、磨き上げられた並列4気筒エンジンと魅力満載!
文:横田和彦/写真:岩崎雅考
よりスポーティに進化したミドルフルカウルスポーツ
CBR650Rのスタイリング
ルックス&走行性がスーパースポーツ寄りに
ホンダのミドルクラス・スポーツモデルがスポーティにモデルチェンジ。スーパースポーツの血統を受け継いだスタイルになって登場した。
先代にあたるモデルはCBR650Fなのだが、実はこのネーミングのFがポイント。実は昔からホンダには“Fコンセプト”というものがある。それは街乗りからワインディングロード、そしてスポーツ走行まで幅広く楽しめるオールラウンド・フルカウルスポーツモデルのことを指す。80年代後半~02年ごろまで販売されていたCBR600Fシリーズが源流だが、ミドルクラスのスーパースポーツブームの到来で03年にCBR600RRに主役をゆずる。レースを意識したRRはエンジン特性や装備類はもちろん、ポジションまで相当スパルタンに仕上がっていた。しかし排出ガス規制の影響もあって16年に生産が終了。入れ替わるように登場したのが先代のCBR650Fである。十数年のときを経て復活したFコンセプトモデルは、セパレートハンドルながら上体が起きぎみのポジションや、扱いやすいエンジン特性などにより多くの人に受け入れられた。だが今度のモデルチェンジで車名はFからRへと変化した。その意味はどこにあるのか見ていきたい。
まず大きく変わったのはルックスだ。Fではセンター1灯のヘッドライトを備えたカウルが、デュアルヘッドライトを搭載しエッジの効いたフォルムへと刷新。CBR1000RR顔となりスポーティなイメージが高まっている。それに加えセパレートハンドルがアッパーブラケット下に装着されていることなどから“これはかなりの前傾ポジションでは…”と思いつつまたがると、確かにFよりは前傾気味だが、あまりキツさは感じない。着座位置が高すぎず適度にスポーティなポジションになっている。しかも小柄なライダーでも体にピタッとフィットしそうなほどコンパクト。そのため取りまわしもバツグン。Fより4㎏ほど軽くなっていることもあり、まるで1クラス下のバイクのような感覚で取りまわせるのだ。
“コイツは見た目より全然フレンドリーじゃないか”と思いつつ気分よくスタートすると、走りもその印象を裏切らなかった。並列4気筒エンジンはモーターのように振動が少なく、パワーの出方も素直でコントロールしやすい。市街地でクルマの流れに乗っていてもギクシャクするそぶりを見せず思ったペースで走れる。前のモデルよりもスムーズさが増している印象だ。そのまま高速道路に乗りアクセルを大きく開けると、高回転域まで気持ちよく吹け上がっていく。これは並列4気筒エンジンならではの持ち味。CBR650Rにだけ搭載されているラムエアシステムの効果もあって、高回転の伸びはスポーツバイク好きにはたまらないフィーリングだ。
ワインディングに入ると、コンパクトな車体と足まわりのグレードアップが効果を発揮。ブレーキング時に車体が安定、とくにフロントまわりのしっかり感が伝わってきて不安なく減速できる。レバーを握るとそれに比例してブレーキが効いていくというコントロール性の高さも好感が持てる。細かいギャップもよく動くサスペンションがきれいに処理し、接地感も十分。アクセルの開閉にともなってライダーの耳に響く抑揚のある排気音もライディングを盛り上げてくれる。なんて楽しいんだと感激してしまった。
CBR650RはFをよりスポーティに進化させている。かといって無闇に速さだけを求めたワケではない。日常から逸脱しない扱いやすさと、多くの人にスポーツライドを体験させてくれる懐の深さを持ち合わせている。ホンダらしい、高次元でまとめあげられた上質のスポーツバイクである。
ヒラオ’s IMPRESSION
直4エンジンスポーツモデルのお手本だ
現行CBRシリーズのDNAを感じさせるアグレッシブなカウルデザインや、アッパーブラケット下にマウントされたハンドルなどが乗る前からスポーツ気分を高めてくれる。走りはじめてすぐに感じたのは車体の挙動。サスペンションの余計な動きがセーブされ、無駄なく必要なだけ動いてくれるフィーリングがスポーティなのだ。低回転域からの吹け上がりも力強さを増した印象で、マフラーからも歯切れのいいエキゾーストノートを響いてくる。スタイルだけじゃなく、走行フィーリングやサウンドもスポーツライディングを味わえるよう進化していると感じた。
ABE’s IMPRESSION
扱いやすくフレンドリーなミドルスポーツ
見た目の印象で足つきに不安があるだろうが、細めのタンクとシートにより身長が170㎝台であれば問題ない。セパハンがアッパーブラケット下に付いていることもあり、やや前傾姿勢なポジションだが長距離での移動でも疲れることはないだろう。エンジンは並列4気筒らしく低回転から高回転まで気持ちよく回り、どの回転域でもクセがなく扱いやすく、とくに中〜高回転は気持ちよく加速していく。ワインディングでのコーナリングは安定感がありビギナーでも安心して走りを楽しめそうだ。
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※記事の内容はNo.205(2019年4月24日)発売当時のものになります