ヤマハ・YZF-R25がビッグマイナーチェンジを果たした。エンジンとフレームは従来モデルを継承するも、カウルのデザインを大きく変え、倒立フロントフォークを新たに採用。その走りは、一体どう変わったのだろうか?
文:横田和彦/写真:岩崎雅考・吉田 朋
YZF-Rの血統を誇示するスパルタンなフォルムを新採用
YZF-R25のスタイリング
クロスレイヤード・ウイングを採用した新型カウル
アッパーカウル中央のダクトは、走行風をラジエターに導く。タンクカバーとインナータンクを新設計。最大幅で31.4㎜拡大し、重厚感のあるルックスとマシンホールド性を実現。カウルには、ヤマハ独自のエアロダイナミクス思想“クロスレイヤード・ウイング”が盛り込まれている
人気のYZF-R25が“劇的”マイナーチェンジ
今、250㏄スポーツバイクがおもしろい。各メーカーも力を入れてモデル展開を行ない、市場は百花繚乱の様相。ユーザーとしてはうれしいが、愛車選びに迷ってしまうかも? だが、そんな混沌とした250㏄戦国時代に覇を唱えるマシンが登場した。それが新型ヤマハ・YZF-R25だ。
大きくイメージを変えたカウル、倒立フロントフォークの新採用など、堂々たるモデルチェンジを果たした。だが、意外なことに“フル”モデルチェンジではない模様。車体を目にするとニューモデルにしか見えないが、エンジンとメインフレーム、リヤの足まわりといった大物パーツが、従来モデルから継続使用されていることが理由らしい。けれど、ここはとにかく新しいYZF-R25の登場を喜びたい。
その新型、最初に目をひくのは劇的な変化を遂げたカウルだ。YZF-Rシリーズの兄貴分であるR1やR6とイメージを共有するフォルムになって、高級感と所有感が大幅アップ。他にないツヤ消しカラーもスタイリッシュだ。小型化されたヘッドライトはLEDを採用するなど、装備にも手抜かりはない。このカウル、当然スタイルだけがウリなワケではない。各部の空力特性を煮詰めた結果、約8㎞/hの最高速アップを達成しているというから驚きだ。空力面のモディファイだけで、この性能向上はすごい!
マシンにまたがると、視界に映る風景も大きく変わっている。フルLCD化されたメーターの存在感もさることながら、ワイドになったタンクカバーが大型車的な落ち着きのある雰囲気をかもし出している。タンクカバーは最大幅で30㎜強広げられているのだが、ステップに足を置くと、自然に内モモと接する形状でニーグリップしやすい。ハンドル位置は従来モデル比で22㎜ダウン。よりスポーティなライディングポジションをとれるようになった。ただ上半身の前傾がキツイというレベルではないので、歓迎できる変更だ。
そして、走りをどう変えたのか?が気になる倒立フォーク。まず、静止状態でフロントフォークを押してみると、従来モデルに比べダンパーが効いていることがわかり、走り出すとフロントの剛性感が高められていることが感じられる。直接的なメリットは、フロントの安定感にすぐれ、マシンをより操りやすくなったこと。コーナーでもストレートでも安心感が高い。高速道路では直進安定性がしっかりと確保され、レーンチェンジで適度な手応えがある。そして、コーナリングではタイヤの接地感がしっかり伝わってくる。
倒立フォークは、構造上正立フォークに比べ剛性が高い。新型の場合フロントまわりの剛性が縦&横で約30%アップしているとのこと。剛性は高ければ高いほどいいというものではないけれど、新型に限っていえばデメリットは感じられない。このすぐれたシャシー性能はフロントフォークだけが高性能化して得られたものではなく、車体をパッケージで考え、全体を見直して実現したものだ。ヤマハのMotoGPマシンYZR‐M1を思わせる、大胆な肉抜きがほどこされたアッパーブラケットは剛性バランスを考慮した設計。スイングアームは従来モデルから変わってはいないが、リヤショックユニットはスプリングとダンパーの設定が見直されている。
高い安定感が自由な走りをもたらす
ここに来て、ヤマハがなぜYZF-R25を“フル”モデルチェンジしなかったかが理解できた気がする。18年モデルで手を加えたエンジンは、初期型で感じられた中間回転域のトルクの谷を解消したうえで、高回転域でパンチ力を持たせるという見事なモディファイを実施。シャーシは本来、高いキャパシティを有していた。こうしたファクターは変える必要がなかったということなのだ。変更が不要な部分はそのままに、進化させるべき部分はしっかりと手を加える。これぞ正常進化といったマシン、それが新型YZF-R25だ。
さて、すばらしい進化を遂げたYZF-R25だが、ライバルたちと比較して速いのか? 否か? という点が気になるはず。単純にスピードを比べても、影響しあう要素があまりに多すぎて断言するのは難しい。けれど、誰もがマシンの潜在能力を引き出せる順応性についてはナンバーワンだといってしまおう。峠で怖さを感じず、イージーに走りきれてしまう。長距離を走って、身体が疲れていないことに気付く。新型YZF-R25は、そんなさり気なく高性能なマシン。見た目以上の進化を感じられた1台だった。
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※記事の内容はNo.205(2019年4月24日)発売当時のものになります