1960年代後半に誕生したイタリアのオートバイメーカー“ファンティック”。その歴史の中でもっとも有名なキャバレロの車名が復活した。いくつかあるモデルの中から、今回はフラットトラック125に試乗。その走りはいかに?
文:濱矢文夫/写真:南 孝幸
本格的なダートトラックマシンだ!
CABALLERO FLAT TRACK125のスタイリング
スタイリッシュかつ個性的なハンドリング
この春より日本に上陸したファンティックのキャバレロには、スクランブラーとフラットトラックの2種類があり、これは後者の125㏄版。大きな特徴は、前も後ろも外径が19インチのホイールで、130/80という同サイズのタイヤを履いていること。
フラットトラックというのは、ダートトラックとも呼ばれるアメリカを中心に盛り上がっているレース。逆ハンでリヤタイヤを大きくスライドさせながら、土のオーバルコースを周回して競う。知らなくても、どこかで写真や動画を見たことがあるかも。これは、そんなフラットトラックレース車のエッセンスとスタイルを取り入れたストリートバイクということになる。その競技車両では、フロントだけでなく、リヤが19インチというのは定番。だから競技が好きな人からすれば本格派だ。
間近で見ると、車体が大きめで、倒立フロントフォークを支えるブラケットやスイングアームピボット部分がアルミの削り出しであったりと立派。ヒードガード的なサイドカバーやラジエターシュラウドのディテールもなかなかで、とても125㏄には見えない。
古い話だけど、ヤマハTWやSRやらをカスタムして乗る、ストリート系と呼ばれるジャンルが90年代に盛り上がったことを思い出した。この流行の根っこの一つに、80年代に発売されたホンダFTR250というフラットトラックレーサー風モデルの存在があった。だから新しいジャンルではないけれど、存在感のあるタイヤが前後で踏ん張り、最低地上高が高く、ナローですっきりしたスタイルが実に新鮮だ。
積まれている水冷4ストロークOHC4バルブ単気筒エンジンは、モトーリ・ミナレリ社のもの。それに燃料噴射装置ではなくキャブレターが装着されている。低中回転域からトルクが出で、排気量的に決して速くはないけれど、ギヤのつながりがよくて速度がのっていく。6速ギヤを駆使しながらスロットルを大胆に開けて走れば、もどかしさなんてなく、スイスイっと前へと進んでいくのが楽しい。足まわりの剛性が高く、動きもしっかりしていて、出せる範囲の速度でへこたれることはない。ブレーキの効きもバッチリ。だから積極的に動いても愉快だ。
同じサイズのタイヤを前後に履いたハンドリングは独特。とくに曲がろうとするときが一般的なバイクと少し違う。正直なところ一番最初は戸惑った。それは間違いなくタイヤのサイズ、ラウンド形状、トレッドパターン、剛性、重さに起因していると思う。しかし、独特でクセはあるけれど、難しかったり危なかったりはしない。しばらく乗って慣れてくると最初の違和感はかなり薄れ、自由自在に操れるようになった。特別なテクニックを使ったのではなく、難しく考えず、バイクが曲がろうとする動きを邪魔しなければいいだけだ。そうすれば素直にいうことを聞いてくれる。雨の中でも運転をしたけれど問題なく、出せる速度内でのスタビリティも十分。
原付二種だけど、それより上の排気量の車両に見劣りしないサイズやディテール。レトロ感もあるスタイリッシュなルックス。いろんな機種が並んだこのクラスに、またおもしろい車両が加わった。
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※記事の内容はNo.207(2019年6月24日)発売当時のものになります