水冷692.7㏄の単気筒エンジンをスリムなトラスフレームに搭載したストリートモデルがデビュー。スヴァルトピレン(黒い矢)の名のとおり、シャープな走りを見せてくれたぞ!
文:横田和彦/写真:増井貴光・吉田 朋
ビッグトルクを操る楽しさが味わえる
SVARTPILEN701のスタイリング
ビッグシングルの魅力が詰まったネイキッド
100年以上に渡る歴史を持つハスクバーナは、80年代に入るとイタリアのバイクメーカーに売却される。その後BMWに譲渡されるなど数奇な運命をたどるが、2013年にKTMグループの親会社が買い取る。そして新生ハスクバーナは2015年に今までにない個性的なスタイルの新たなストリートモデルを発表した。そのなかの1台が692・7㏄という大排気量の単気筒エンジンをトレリスフレームに搭載したヴィットピレン(白い矢)701だ。低いセパレートハンドルや独特な形状のタンク&シートのデザインなどが高い注目を浴びた。そして今年、その兄弟車であるスヴァルトピレン(黒い矢)701がデビューした。
軽量・高剛性のスリムなトレリスフレームやストレートに吹け上がる単気筒エンジン、足まわりの構成などは先に発売されているヴィットピレン701とほぼ共通。異なるのはストリートトラッカーイメージのアップハンドルやフォークよりにセットされたヘッドライト、テールカウル&サイドカバーの形状、カラーリングなど決して多くはない。それでいながら、まったく別のバイクのような存在感がある。そこはデザインの巧みさであろう。
ポジションは一般的なネイキッドに比べるとやや腰高な印象。スリムで軽いことから支えるのは苦にならないが、小柄な人は慣れが必要かもしれない。セルボタンを押すとエンジンは元気に目を覚ます。ライドバイワイヤシステムを採用していてピックアップは良好。巨大なピストンが動いている割にアイドリング付近では振動が思ったほどじゃないのはエンジン内のバランサーがうまく働いているからであろう。とはいえ回転を上げると迫力のあるサウンドとともに振動が伝わってきて、ライダーをその気にさせてくれる。
軽いクラッチをつなぐと、後輪が軽い車体を蹴飛ばすように加速する。他のエンジン型式では味わえない、ビッグシングルらしいフィーリングだ。低回転域のトルクはあまり強くないのでドコドコ走るタイプではないが、回転が上るときの爽快感はほかにはない独特のモノ。それに魅せられてビッグシングルを好む人も多い。シフトアップ&ダウンに対応した標準装備のオートシフターも走りの楽しさを盛り上げてくれる。好感を持ったのはブレンボ製ブレーキだ。調整式のレバーでコントロールしやすく、ライダーが思った速度で的確に減速できるのだ。
ここでアクセルやブレーキの操作に対してダイレクトに反応する車体を操るのにアップハンドルが有効なことに気付く。セパレートハンドルのヴィットピレン701とは操作感が異なるので好みが分かれるところだが、ハンドルへの積極的な入力によって車体を自由にコントロールできるバーハンドルは、より混雑した市街地向きだと感じた。そのぶん高速道路では空気抵抗が大きくなってしまうのだが。
そう聞くと高速道路は苦手と思われるかもしれないが、意外とストレスは少ない。車体と足まわりがしっかりしているので、軽量にも関わらずハイスピードでギャップを通過しても安定性がキープされるのだ。体全体で風を受けてしまうことや単気筒エンジンから微振動が伝わってくる回転数があるのは致し方ないが、そうムリせずともツーリングは楽しめるはずだ。
だがスヴァルトピレン701が本領を発揮するのは、機敏な動きが必要となる市街地やワインディングロードであろう。そういったシチュエーションでは大型バイクとは思えない軽快さを披露してくれる。ほかにはない“ビッグシングルならではの刺激的な走り”を体感することができるのだ。
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※記事の内容はNo.208(2019年7月24日)発売当時のものになります