KTMのエンデューロモデルは2020年機種でチェンジ。そのなかでも目玉なのが、2ストロークの150がキャブから燃料噴射になり生まれ変わったこと。それはどんなバイクなのか、乗った感想をわかりやすくレポートしていこう。
文:濱矢文夫/写真:関野 温
どんなところでも自由自在だ
150EXC TPIのスタイリング
扱いやすいパワーとフットワークの軽さ
このバイクは、純粋にオフロードを楽しむというだけでなく、そのままクロスカントリーレースやエンデューロレースに出られる性能を持っている。オフロードに興味を持っていない、経験のないライダーからすると、どんなのか想像も付かないかもしれない。
ギザギザの大きなタイヤを履いたこういうスタイルを見ると、“モトクロス”という単語が出てきやすいけれど、モトクロスは大きなジャンプや連続する山など、人工的に作った周回コースで速さを競うレース。この車両は自然の地形を使い設定されたコースで速さを競うために作られたものだ。
土で作った人工コースのモトクロスと違い、山、川、谷、林、草原、石、岩、いろんなシチュエーションを、それもより長時間走らないといけない。そういうところで重要なのは単純なエンジンパワーだけでなく、より扱いやすい特性だったり、車体の軽さであったり、どんな地形にも対応できるサスペンションであったりするわけだ。街中や高速道路など舗装された公道も乗ることもできるデュアルパーパスやトレールと呼ばれるのとも違う。
エンジンは143.9㏄の2ストローク単気筒。オンロードモデルでは90年代にほぼ絶滅した2ストロークが、このカテゴリーではバリバリの現役である。2020年モデルでKTMのエンデューロカテゴリーはモデルチェンジ。フレーム剛性やサスペンションなど大幅な手が入った。2ストロークの150はこれまでもあったけれど、このタイミングで、250や300で採用していたTPIと呼ぶ燃料噴射装置を初採用した新型が登場。
手間とコストをかけて、なぜ2ストロークにこだわるのか。それは同排気量の4ストロークより軽くでき、パワーも勝るからだ。オンロードより立体的に動かなければならないオフロードでは、軽さが重要である。事実、この車両は、燃料なしで96.8㎏しかない。
2ストロークというと扱いにくいイメージを持たれがちだけど、エンデューロの2ストロークにそれはない。低中回転域はトルクもあって穏やか。尖ったところがまるでない。2ストロークのすぐれた特徴として、スロットルを閉じてもすぐにエンストしにくい、いわゆる極低回転の粘りがあるからラクだ。同じ2ストロークの250/300EXCのようにスロットルを開けたらトルクが瞬時にどっと出て、前荷重を抜くことができるヒット感は弱いけれど、トルク自体は足りているので、逆にこれを乗りやすいと感じる人もいるだろう。それでも、クラッチレバーを使わずにスロットル操作と体重移動だけでフロントタイヤは持ち上がる。そして高回転域になるとパーンと高周波に音が変わりグイグイと進む。トルクが急激に高まり突き抜けるようにダッシュするが、どこかに飛んでいくような怖さはない。このジキルとハイド感、2面性が楽しい。
車体は250とそんなに変わらない大きさのはずなのに、確実に小さく感じ、軽さも味方して狭い林間でも思うままに動ける機動性はすばらしい。標準設定でもサスペンションは初期の当たりが柔らかく、どこまでも突っ張った感じがない。トレールモデルだと減速して丁寧に進むようなところでも、加速しながらイージーに進める高性能さはたまらならい。オンロードでいうならとことん走りを突き詰めたスーパースポーツだ。
150EXC TPIのディテール
SPECIFICATIONS
- 全長×全幅×全高
- ―
- 軸間距離
- ―
- シート高
- 960㎜
- 車両重量(燃料除く)
- 96.8㎏
- エンジン型式・排気量
- 水冷2ストローク 単気筒・143.99㎤
- 最高出力
- ―
- 最大トルク
- ―
- 燃料タンク容量
- 9ℓ
- 燃費
- 38.1㎞/ℓ
- タイヤサイズ
- 80/100-21(F)・140/80-18(R)
- 価格
- 102万2,073円(消費税8%)、104万1,000円(消費税10%)
CONTACT
- 問い合わせ先
- KTMジャパン
- 電話番号
- 03-3527-8885
- URL
- https://www.ktm.com/jp/
※記事の内容はNo.210(2019年9月24日)発売当時のものになります