オフロードレースのクロスカントリーやエンデューロで高いシェアを誇るヤマハの4ストローク競技車両“YZ250FX”が2020年モデルで大きく変わった。旧型と乗り比べて、その違いが具体的にどういうところなのかをレポート
文:濱矢文夫/写真:関野 温
走りがはっきりとレベルアップした!
YZ250FXのスタイリング
すべてのシーンにおいて乗りやすさが増している
日本のクロスカントリー・エンデューロレースでトップクラスのシェアを誇る4ストローク競技用車両がYZ250FXである。モトクロッサーYZ250Fをベースにして、自然の地形を使ったコースを縦横無尽に走り速さを争うレースに向いた仕様に仕立てたモノ。そのYZ250FXが2019年にフルモデルチェンジをはたし、これをベースにしたのが2020年YZ250FXというわけだ。
レース用のバイクは、ちょこちょこ手が入るマイナーアップデートが多いが、これは根本から変わったメジャーアップデート版。2015年モデルとして初めてYZ250FXが誕生して以来、もっとも大きな変更になる。一人のオフロード好きとして、この新型が出るのを心待ちにしていた。なぜなら、ベースとなった最新のYZ250Fに乗って、軽快な運動性能とパワフルながら扱いやすいエンジン特性を気に入り“これをベースにしたFXが誕生したらすばらしいことになりそう”と思い続けていたからだ。
試乗したのはスポーツランドSUGOに設けられた、木々の間を縫いながら路面変化がある上り下りが存在するクロスカントリーやエンデューロでよくあるステージだ。ニクイことに旧型も用意されていて乗り比べることができた。これまでもバランスの取れた機種だったと前置きして、これが想像どおり、いや想像以上にレベルが上っていた。まず、なんといっても軽い。実際のところ車両重量は3㎏も軽い111㎏になっているけれど、それ以上に軽くなったように感じる。以前はコーナーに向けて倒し込むときが独特で、少し立ちが強く、リーンするときに重ったるさがあった。結果的にはちゃんとコーナーリングができるのだけれど、その感触がいつも顔を出していた。
そこが新型ではまったく気にならない。たとえば2本のワダチがある上りで、その途中で走っている左のワダチから右に移りたいときに、積極的に動くのをやや躊躇する旧型に対し、新型はどの場所からでも思いのままにライン移動が容易。いうならば、重いコートを脱いで裸になったような身軽さ。前輪に荷重がかかった下り坂でもその印象は変わらない。思いどおりの動きが簡単にできる機敏な応答性と従順さ。それは“より増した”というより“新たに手に入れた”という表現の方がしっくりくるほど。エンジンハンガーの剛性バランスや前後サスペンションを最適化した専用味付けの事実を明確に体感できた。凸凹したところをいなしながら進み伝わってくる全体の手応えがやさしくしっとりしている。
シリンダーが後ろに傾いた後方排気エンジンは、低回転域からレブリミットまで使いやすいのは変わらず、はっきりとしたパンチが加わった。スロットルを急開したときのヒット感がしっかりあり、フロントアップは右手をひねるだけでより簡単にできるメリハリが出た。このカテゴリーにはパワフルな2ストロークエンジンもまだ主力として残っているけれど、幅広い技量のライダーがどんなシチュエーションでもトラクションさせやすいイージーさは4ストロークに軍配が上がる。ネガティブな意味も含みながらヤマハ特有と感じていた部分がかなり小さくなり、ライバルの外国製モデルとの間にあった溝が埋まった。遜色ないものになったといい切れる。違いはあっても優劣にならない。逆にスマートフォンのパワーチューナーアプリで細かくエンジン特性をイジれるところなどのアドバンテージさえある。大変申し訳ないけれど、旧型に乗っている人は乗り替えをオススメしたい。それほどの進化だ。
YZ250FXのディテール
YZ250FXの足つき&乗車ポジション
SPECIFICATIONS
- 全長×全幅×全高
- 2,175×825×1,270㎜
- 軸間距離
- 1,480㎜
- シート高
- 955㎜
- 車両重量
- 111㎏
- エンジン型式・排気量
- 水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒・249㎤
- 最高出力
- ―kW(―ps)/―rpm
- 最大トルク
- ―N・m(―kgf・m)/―rpm
- 燃料タンク容量
- 8.2ℓ
- 燃費(WMTC)
- ―㎞/ℓ
- タイヤサイズ
- 80/100-21(F)・110/100-18(R)
- 価格
- 93万5,000円(税10%込)
CONTACT
- 問い合わせ先
- ヤマハ発動機カスタマーコミュニケーションセンター
- 電話番号
- 0120-090-819
- URL
- https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/
※記事の内容はNo.212(2019年11月22日)発売当時のものになります