2020年モデルの新型ストリートトリプルRSはルックスを変更し、3気筒エンジンはMoto2の技術でアップデート。その走りを富士スピードウェイの本コースとショートサーキットで堪能した。
文:濱矢文夫/写真:吉田 朋
完成度が高まってごきげんに走り回る
ストリートトリプルRSのスタイリング
走る楽しさのレベルを確実に上げてきた
ストリートトリプルが最初に発売されたのは2007年。初めて乗ったときのことを思い出す。水冷並列3気筒エンジンの低中回転域のトルクと、400㏄と思えるくらいコンパクトな車体の組み合わせは、ネイキッドモデルとしては抜群のスポーツ性能で、走りの楽しさはとても印象的だった。
世代を重ねながら675㏄から765㏄に拡大したストリートトリプルがまた進化を遂げた。トライアンフは現在Moto2のエンジンサプライヤーであり、この765㏄の3気筒エンジンに手を加えてレースに供給している。新型ストリートトリプルRSのエンジンは、このMoto2を開発しているチームが担当したという。大きな目玉は、厳しい環境規制であるユーロ5をクリアしながら、中間域のトルクとパワーをさらに上げてきたことだ。
場所は富士スピードウェイのショートサーキット。スロットルを開けていくと、5種類のライディングモードの中で比較的穏やかなロードモードを選択していても、押し出すように前に進む。最終コーナーの立ち上がりから短い直線への加速では、ウイリーコントロールが裏で仕事をしてるのだろう。荷重が抜けたフロントタイヤが跳ねるようにちょんちょんとステップを踏みながら立ち上がり、短い直線を矢のように加速する。どこでも意に反するみたいなトリッキーなところが見当たらない。トルク&パワーが9%向上したというミドルレンジから高回転域までスムーズにつながり、恐れずにスロットルを開けていけた。
初期型からすばらしいと感じていた独特の身軽な動きと旋回性、そしてトラクション性がさらにグレードアップした感じである。ブレンボのラジアルマスターとラジアルマウントしたモノブロックキャリパーを使ったフロントブレーキは、ソリッドな手応えで抜群に効いて、フロントフォークを思いっきり沈み込ませながらスパッと最初のコーナーへ。車両重量188㎏は、このブレーキング・コーナーリング・切り返し、すべてでプラスの効果をもたらす。コンパクトな車体全体で曲がるような動き。リーンしてから意識せずに自然にリヤに荷重が移るので、履いていたピレリのディアブロスーパーコルサSP・V3をしっかり路面に押し付けていられる。スポーツモードにすると、さらにレスポンシブルになるが、怖い、ではなく愉快だ。バイクとのコミュニケーションが良好でいつも手の内にあるような感覚。
1速と2速がクロスしていて、減速比は全体的にショート。富士スピードウェイ本コースのホームストレートではしっかり伏せて250㎞/hに届かないくらい。以前はオプションでアップのみだったクイックシフターが、アップ&ダウン対応で標準装備されたことにより、本コースではクラッチレバーを触らずに周回できた。以前から思っていたけれど、この車両を作ったスタッフは相当な走り好きだろう。スポーツライドが好きな人が作ると“こうなる”というのが感じ取れるのだ。
そんなコースでも楽しめる走りがありながら、サーキット内の移動路をゆったり乗ることが何の苦にもならない。それどころか仲介トルクのおかげで、高いギヤでずぼらに流して走るのもラクだ。意図的に低回転域でスロットルをオン・オフしてもギクシャクする動きが抑えられている。ポジションもきつくないし、ごきげんなロードスターだ。
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※記事の内容はNo.212(2019年11月22日)発売当時のものになります