ドゥカティのスーパースポーツブランドが復活し、日本国内でも6月に発売予定! そのスポーティーなフルカウルのスタイリングに秘めた乗りやすさとは? 和歌山氏がスペインからレポート!
文:和歌山利宏/写真:ドゥカティジャパン
最高にドゥカティらしいのに使えて、扱いやすい
ドゥカティといえばイタリアン。そして、イタリアンといえばパッションだ。ドゥカティのアイデンティティーともいえる真紅色のイメージどおり、その乗り味もほどばしる熱情が持ち味であることに異論はない。ところが、このパッションは多くの一般的なライダーにとって、クセモノでもある。
それは、どこか先鋭的であることが、パッションにつながってきたことも事実であるからだ。また、初心者を受け付けないような乗りにくさがあっても、乗り込むうちにそれを御する術を覚え、手なずけたことの悦びが大きなパッションになってきた側面もあろう。実際、10余年前に姿を消していた先代のSS(スーパースポーツ)には、そんなひとクセがあったことも否めない。
つまり、パッションとは、エキスパートライダーにとっては、駆ることのおもしろさとバイクへの愛着を高めてくれる魅力的な要素であると同時に、多くのビギナーを遠ざけるファクターになりかねないというわけだ。
となると、ビギナーが日常域で楽しめるフレンドリーさと、ドゥカティらしいパッションを両立することはできないのだろうか?
決してそんなことはない。幸い、昨今のドゥカティは、それらを両立させたモデルを登場させることに成功している。スクランブラーがその好例だろう。荒れた道も含め、オールラウンドに使えて、乗りやすく、それでいてドゥカティらしくスポーツマインドを刺激してくれる。とくに400ccのスクランブラー・シックスティ2は、より日本の現状に順応できるものとなっている。
そして、この新登場のスーパースポーツは、ロードスポーツとして、そんな二律背反の命題を満足させうるモデルなのではないだろうか?
足つき性は良好で、下半身もゆったりしている。ライポジは、上体が比較的アップライトに収まる。一般的なネイキッドモデルより前傾しているが、スポーツツアラー並みと言っていいだろう。また車重は、超軽量の最新鋭リッタースーパースポーツよりも10kg程度重いのだが、ハンドルがやや幅広で高めなため、取りまわしはそれらよりも軽くこなすことができる。
新しいSSの取っ付きやすさは、それだけではない。クラッチ操作は軽く、スムーズに発進していくことができるし、極低回転でもスムーズで粘りがあるので、街中でもストレスなく走れる。性能が日常域にうまく溶け込んでくれるのだ。
ドゥカティの以前の高性能エンジンだと、鼓動感が強烈であっても、それが災いして、ゴツゴツしてスムーズに走れないばかりか、回転が落ちすぎたときにはエンストしたりと、扱いにくさがあったものだ。でも、このSSにそんな気難しさはいっさいない。それでいて、Lツインの鼓動感をきちんと奏でてくれているのだから、走らせるだけでうれしくなってくる。
エンジンを、ハイパーモタード939やムルティストラーダ950にも搭載される937cc水冷4バルブユニットとしたことにも十分納得させられる。性能と扱いやすさがバランスしているわけだ。
そして、街中で扱いやすいだけでなく、下半身はヒザの曲がりが強くなく、高さが変えられるスクリーンの効果もあって、ツアラーよろしく長距離移動も快適だ。
ワインディングでも、中回転域のトルクが豊かで、エンジンを高回転まで回さなくても、スロットルで走りのリズムに乗ることができる。
そして、ワインディングばかりか、サーキットでも楽しめる。エンジン特性は中速型であっても、上限に向かって高トルクが持続、伸び感をも楽しめるし、最高出力は113psのほどよさである。それに、ハンドリングのポテンシャルは、スーパーバイクをしのばせる。
いや、そればかりか、スポーツバイクとして乗っているとき、トラスフレームから伝わってくる特有の硬質感は、ドゥカティそのものではないか? エンジンもライダーを急き立てることなく、性能を引き出そうという気にさせてくれる。これぞ、ドゥカティらしいパッションの世界である。
敷居の高さを感じさせることなく、多くのライダーを日常域に招き入れ、もっと楽しもうとするドゥカティエンスージアストをも裏切らないのである。
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※記事の内容はNo.180(2017年3月24日)発売当時のものになります