前二輪のグリップ性を向上させ、さまざまな路面状況や乗り手のテクニックをアシストするLMWテクノロジー。このたびその効果を確かめる実証試験が行なわれ、その5つのテストをトリシティ125スペシャルサイトにて公開中。今回はその実証の内容を、本誌編集部員のインプレッションをまじえてわかりやすくレポートするぞ!
『旋回安定性』滑りやすい路面、前二輪の状態は?
LMWの最大の特徴は旋回時の安定性の高さ。というのもオートバイでは通常1つのフロントタイヤが2つになったことで、単純計算すれば接触面は2倍になる。つまりグリップ力が格段に増すというワケ。加えてトリシティの前輪タイヤの接地面の場所が、右と左に離れているおかげで、異なる路面の上を走ることになる。もし、左右どちらかのタイヤが濡れたマンホールや水溜りを踏んですべりそうになっても片方のタイヤがしっかりとグリップしていれば、前輪がスリップダウンして転倒する可能性は格段に減ることになる。
『操縦安定性01』2人乗り。坂道発進、Uターン時の状態は?
通常のスクーターはタンデムすると、どうしても後輪へ荷重が強くかかってしまい、フロントタイヤの接地感が希薄になる傾向にある。トリシティは、LMW機構をフロント側に搭載していることで、2人乗りした場合にも著しく前後の重量バランスがくずれて、後輪側へ偏るというようなことがない。つまり2人乗りしても、コーナリングでナーバスになる必要がないということだ。実際に走ってみても、一人乗りで走ったときとほぼ同じ感覚で旋回できる印象だ。また、急坂では勾配により後輪への荷重が強まるもの。前後の重量配分が50:50のトリシティなら、そんな場合にもフロントタイヤの接地感がなくなるようなことはなく、タンデムしていても安心して坂道を登ることができた。
『直進安定性』不意の強い横風。どうなる?
トリシティは、外乱の影響を受けにくい。これは実際にインプレッションのために走っていても非常によく感じた特性だ。とくに普通のオートバイに比べて、横風やトラックなどの追い抜きによる乱流の影響を受けにくく感じる。前輪が2つあることで路面へのグリップ力が上がっていることはもちろんありそうだが、タイヤが回転することで発生するジャイロ効果の影響がとくに大きそうである。ジャイロ効果とは、物体が回転するときに、回転軸を安定させようと発生する力のことで、回転する物体の大きさや重さ、また回転速度によってその効果の強さが決まる。速度を上げると車体が安定するというオートバイの特性は、このジャイロ効果の影響が大きい。なにせトリシティには、このジャイロ効果を発生させる車輪が3つもあるのだ。
『制動安定性』 直進時の強いブレーキ。どう止まる?
トリシティに乗っていて思わず感心してしまったのが制動力の強烈さだ。前輪側にタイヤとブレーキが2組あるのだから当たり前のことかもしれないが、ブレーキング時の路面に対する踏ん張り具合がものすごいのだ。トリシティにはタイヤのロックを防ぐABS仕様車もあるのだが、ワザとABSを作動させるつもりで、ガツンとフロントブレーキを握っても、ABSが作動することはマレなぐらい。そのぐらいLMWの制動力はもともと高いと感じた。また一方で、ブレーキング時の車体の安定感も特筆もの。タイヤの接地面が左右に大きく離れているおかげで、ブレーキング時にも車体が安定するのだろう、おかげで思いっきりレバーを握り込めて、ガツンと停まれるというわけだ。
『操縦安定性02』ちょっとした段差。どう乗り越える?
SPECIFICATIONS※[ ]内はABS仕様
- 全長×全幅×全高
- 1,905×735×1,215mm
- 軸間距離
- 1,310mm
- シート高
- 780mm
- 車両重量
- 152[156]kg
- エンジン型式・排気量
- 水冷4ストロークOHC 2バルブ 単気筒・124cm3
- 最高出力
- 8.1kW(11ps)/9,000rpm
- 最大トルク
- 10N・m(1.0kgf・m)/5,500rpm
- タンク容量
- 6.6L
- 価格
- 35万6,400円[39万9,600円](税8%込)
メーカー製品ページ
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/scooter/tricity/
CONTACT
- 問い合わせ先
- ヤマハ発動機カスタマーコミュニケーションセンター
- 電話番号
- 0120-090-819
- URL
- https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/
※記事の内容はNo.173(2016年8月24日)発売当時のものになります