この乗りやすさは初心者に本気でオススメできる
「まずは電子制御サスの介入しないように設定してあるユーザーモードで走ってみて、それからモード3から2、1へと、モードを試してみてください」
そんな開発者の助言に見送られて試乗会場から走り出す。とはいえ、今回は一般公道試乗会。レーシングライダーでもない一般ライダー代表のボクに、ホンダの最高峰のスポーツマシンの性能なんて引き出せないよ…。なんておよび腰で試乗をスタートさせたのだが、まず驚かされたのがコントローラブルなエンジン特性だ。
この手のスーパースポーツバイクは総じて、ハイパワーすぎてアクセルが開けにくく、コーナリングからの加速などでは、少なからずアクセル操作がナーバスになるもの。だが新型CBRにはそれがない。もちろんパワーがないという意味じゃない。アクセル開け始めの特性がとても穏やかで、交差点での右左折など、ナーバスな場面でもスッとアクセルを開けられるのだ。
“これがスロットルバイワイヤか!”。技術説明会で聞いた言葉が頭をよぎる。今回のモデルチェンジでは、時流に合わせて電子制御まわりを徹底強化。 このライドバイワイヤもそのひとつで、ライダーのアクセルの操作を電子信号に置き換えて、その信号がインジェクションシステムのバタフライバルブを開けたり、インジェクターにガソリンを吹かせたりしている。
何がスゴいのかというと、ライダーのアクセル操作に対して、電子的な補正がかけられること。つまり低速コーナーや交差点など、アクセルを開けにくい場面でもバイクが出力をコントロールして、気持ちよくアクセルを開けさせてくれるというわけだ。
ホンダの最高峰のスポーツモデルを捕まえて、街乗りがしやすいというのもどうかと思うが、そう感じたのだから仕方ない。従来モデルより16kgも軽く、コンパクトになったおかげで車体も扱いやすいし、アクセルも開けやすいとくれば、当然、街乗りやツーリングにも使いやすくなるというわけだ。
ただ、ポジションだけはかなりスポーティ。昔のレーサーレプリカほどではないにせよ、“ニーグリップなり、ヒールグリップなりで下半身を固定し、腹筋と背筋で上半身を支える”というスポーツモデルの乗り方が必要になる。コレばっかりはライダーの方で身に付けるしかないだろう。
そんな街中の乗りやすさに気をよくしてワインディングへ。もちろんくだんのモード切り換えスイッチも試してみた。俗な言い方をすればモード3が“弱”で、モード2が“中”、モード1が“強”。パワーの出方はもちろん、サスペンションの減衰特性やトラクションコントロールの介入度、またエンジンブレーキの効き具合などが細かく設定されている。
街乗りで好印象を得たモード3から、モード2、モード1とよりスポーティな設定へと切り換えると、明らかに出力はパワフルになり、エンジンブレーキの利き方にも変化が現れる。だが、決してジャジャ馬化するところがいっさいないのが不思議である。
試乗にあたっては狭くアップダウンがきつく、さらに路面状況がすこぶる悪いような場所でも走ってみたが、「お前に俺が乗りこなせられるのか?」なんてマシンに拒絶されることはなく、いつでもどこでもバイクがライダーの意志に寄り添ってくれている。そんな安心感がつねにあった。
最近の電子制御満載のバイクのポテンシャルを享受するには、“どれだけマシンを信じられるか?”がとても重要になる。マシンを信頼するために、もう少しマシンを寝かせてみよう、もっと大きくアクセルを開けてみようと、いろいろ試しながらマシンへの信頼度を高めていくのだが、コイツは走れば走るほど、どこまで信頼していいのか?その限界点がわからなくなってくる。
「あっ、そこでアクセルを開けます? ではトラコンの介入はこのくらいでいかが?」なんて、こちらの要求に、どんどんマシンがライダーに寄り添ってくるのだ。おかげで安心感がものすごく強いのだが、逆に「こんなに信用して大丈夫なのか?」と不安になるほどだ。
さらに限界値が高められるサーキットで走らせたらいったいどんなに楽しいだろう? 走っているうちにそんな疑問が自然にわいてくる。公道ではこのマシンの底が知れないことだけは十分理解できた。しかも、それがけっして乗りにくいモノではなく、誰もが楽しめるようになっているから恐ろしいのだ。
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※記事の内容はNo.181(2017年4月24日)発売当時のものになります