心地よく景色もよく見える、バイクの面白さを再発見
取っ付きがよくても単なるお手軽ではない
モンスター797にまたがり、南フランス、コート・ダジュールの海岸線を走り出す。扱いやすさにホッとした気分にさせられ、気持ちよさにこれから丸一日、思いっ切り楽しんでみようという気分になる。
803ccの空冷2バルブユニットを搭載したモンスターというと、05年のS2Rや、10年に登場した796を思い出す。それぞれの時点で、私自身、かような想いにさせられてきたものながら、この797ははるかに高次元化されている。いや、ここまで心許せるドゥカティは、他になかったと言っていい。
まず、マシンとのフィット感がいい。これまでのモンスターはどこかアグレッシブな雰囲気で満ちていたものだが、この797はハンドル幅がさほどワイドでなく、ステップ位置も前方下側にあるので、ごく普通のストリードネイキッドに近い感じなのだ。おかげで、気負わずに平穏な気分をたもてて、周囲の状況もよく見える。
海外でよく見かけるラウンドアバウト(環状交差点)で一旦停止を余儀なくされても、足つき性がよく不安はない。クラッチ操作が軽く、エンジンもスムーズで粘りがあるので、再発進や極低速走行でもストレスがない。
そして曲がりくねった道を、道なりにリーンウィズでこなしていく。
何と軽快なんだろうか。それに、何と意のままにラインをトレースしていくことができるのだろう。Lツインのスリムさが昇華されている印象で、この人車一体感に感激するとともに、うれしくもなってくる。
このハンドリングは、軽快であっても、ヒラリ感と表現できる類のものではなく、むしろ車体にはガチッとした剛性感がある。でも、固さはない。不要なたわみ感がないだけに、マシンが意のままに追随してくれるかのようで、操る難しさも感じさせない。
となると、ビギナー向けのお手軽バイクのようだが、それだけではないのが797の大きな魅力でもある。
コーナーにアプローチし、もっと奥まで突っ込み、もっと曲げてやろうとするほどに、マシンはしっかり手応えを返してくる。寝かし込み過程において不安を催す領域もなく、リニアに荷重感と接地感が高まってくる。おかげで、自信をもってコーナーに挑むことができる。
前後のサスはストリートバイクらしくソフトに動き、その点でもフレンドリーである。フロントブレーキのキャリパーが、モノブロックのラジアルマウントタイプだと、ひと昔前なら効きに唐突さもあったものだが、これはコントローラブルでありこそすれ、尖った印象はない。それでも、あえてガツンとブレーキをかけると、スコンとフォークが沈んでしまうほどサスはソフトなのだが、コーナーを攻めても車体は安定しており、素性のよさを感じる。
このように、たとえ取っ付きがよくても、ライダーのスポーツ心にしっかり応えてくれるあたりは、紛れもなくドゥカティなのである。
エンジンの出力特性やスロットルレスポンスは、さらに上質になっている。だから扱いやすいし、心地よい気分が削がれることもない。日常域で意のままに向きを変えていけるのは、スロットルでマシンを操ることができるからでもあるのだろう。
そして、ピークトルクが発揮される5750rpmに向かってトルクが立ち上がっていく中回転域を使って、コーナーの立ち上がりラインに乗せていく。鼓動感をともなったトルクカーブに載せてトラクションを与え、連続するコーナーをこなしていくのが、もう最高である。
となると、走りに没頭したライディングハイの状態のようだが、決してそうではない。中回転域での走りは気忙しくなく、気分に余裕があって、何度か訪れたことのある地の景色をあらためて楽しむことができる。これは昨今の高性能バイクだと期待できない。
ただ、7000rpm以上に回しても、トルクカーブは下降しているだけに、回っていくだけで、あまり心地よくもない。もっとも、これは低中回転域が充実しているだけに、相対的に高回転域をプアに感じてしまうだけのことなのかもしれないのだが…。
いずれにせよ、日常域に照準を当てた特性であることは確かだ。そうであっても、6速ならトルクピーク回転数で、車速は120km/hほどに達していることも考えてもらいたい。ストリートスポーツとして十分な動力性能を備えているわけだ。
コート・ダジュールでモンスター797に乗り、バイク本来の愉しみを堪能してきた私だったのである。
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※記事の内容はNo.181(2017年4月24日)発売当時のものになります