845ccの並列3気筒エンジンを積んだMT-09がモデルチェンジし、外観はもちろん電子制御まわりをブラッシュアップ! 思い切りアクセルを開けられるマシンに仕上がっていた
文:谷田貝洋暁/写真:武田大祐
しっかり調教された新型、もうじゃじゃ馬とは言わせない!
新しくなった制御は悪条件下でこそ生きる
前回のモデルチェンジでトラクションコントロールが付き、今回のモデルチェンジでそのトラクションコントロールの制御に磨きをかけたMT-09。実は登場時からかなり気になっていた。というのも新登場した兄弟モデルのXSR900のトラコンの味付けが、なかなかぶっ飛んでいたからだ。
トラコンが入っているのに、アクセルをガバ開けすれば軽々と持ち上がるフロントタイヤ。ジャックナイフできるフロントブレーキ…。本来、安全を確保する道具であるべきABSやトラクションコントロールが見事にバイクの味付けとして成立しており、おかげで非常に楽しい試乗体験をさせてもらったのだ。
今回のMT-09もXSR900と同様に…、いや同型のエンジンながらMT-09の方が4馬力ほど最高出力が高いから…。そんな思いを持って試乗におもむいたのだが、この雨である(笑)。だがここで落胆してはいけないのが最近のトラコン付きモデルの試乗。雨で滑りやすくなった路面はむしろABSやトラコンなどの電子制御の介入具合を体感するいい機会。…と気持ちを切り換えることにしよう。
ということで、まずABS。思ったとおりかなりスポーティな味付けで、フロントタイヤのロックが感じ取れるぐらいスポーティな介入設定が与えられている。一瞬、ヒヤッとする滑り感があるのだが、必ずその後にABSが介入してくるので、その介入タイミングにさえ慣れてしまえば雨天でも普通にフロントブレーキを使える。
並列3気筒のエンジンは、「MT-09ってここまで扱いやすいバイクだっけ?」と思うぐらい見事に調教されている。初代はもとより、先代もここまでアクセルが開けやすくなかった印象があるが、キチンとアクセルを開けて楽しめる。フィーリングで言えば、馬力は違えどXSR900の感覚がやはり近い。トラコンの介入もXSRのそれと非常に近い印象だ。最近のヤマハのトラコンは、単なる安全装置としてではなく、エンジンの味付けの要素としているフシがある。ライダーが“リヤタイヤが滑った!”と感じるだいぶ前の段階から、点火時期調整やスロットル開度調整といった細やかな介入がはじまり、ライディングをアシスト。
今回のMT-09を走らせたのは安全が確保されたクローズドコースではあるが、土砂降りの中でロードバイクをここまで寝かせられるとはビックリだ。調子に乗っていつしかトラコンを弱に。よりアグレッシブな“Aモード”で走っている自分が恐ろしい(笑)。
そんな調子でアクセルを開け続けていると、いよいよ“ニュッ!”という明らかな挙動をともなってリヤが滑り出す。トラクションコントロールが付いていなければ即スリップダウンする場面だ。一瞬、ヒヤッとはするが、すぐさま強めのコントロールでグリップを取り戻してくれるから、それでもアクセルを開け続けていられる。KTMの690デューク(トラックパック仕様)でも似たような走り方をしたことがあるが、MTのほうがハナからリヤを流さないよう、きめ細やかな制御を行なっている印象を受ける。
まぁ、雨の一般道でここまでアクセルを開ける状況は普通ないだろうが、無茶をしても最後の最後でバイクに助けてもらえるという安心感はやはり絶大。たとえばツーリング中、突然の雨に見舞われても、おっかなびっくり走らなくて済む。これはビギナーライダーにとって大きなアドバンテージだ。
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※記事の内容はNo.182(2017年5月24日)発売当時のものになります