2017年の東京モーターサイクルショーのスズキブースには、なぜかアウトドア用ウエアや小物を身に付けた、少年のような目をした大人たちの姿が多数。彼らが取り囲んでいたマシン。それはこのVストローム250だった!
文:片岡裕介
カッコよさ・性能・冒険心すべてが詰まった250だ!!
『250で』アドベンチャーそれが重要ポイント!
モーターサイクルショーにおいて多くの注目を集めていたVストローム250。当時スズキは会場内でアンケートを実施しており、5月に行なわれた技術説明会でその内容を公開した。そこにはVストローム250への期待を込めたコメントが並んでおり“すぐにでも購入したい”との回答が多数。さらに『高評価ベスト3』という項目には“スタイルがいい” “17ℓのガソリンタンク”そして“250であること”が挙げられていた。250であることが購入動機になっているというのだ。彼らの気持ちを代弁するならば「俺たちはビッグアドベンチャーじゃなく、スズキの250アドベンチャーに乗りたいんだ! 早くコイツを出してくれ!」というところだろう。
今回、チーフエンジニアの福留氏と二輪デザイン部の加藤氏、テストライダー竹山氏の3名から開発に関する話を聞かせてもらえた。ここからはややマニアックな話題も含まれるけれど、Vストローム250が気になる読者にとって興味深い内容になるハズだ。
『乗ればわかる』ではダメまずカッコよくないと!
編集部(以下:編)「先ほどの『高評価ベスト3』というアンケートでスタイルのよさが挙がっていましたが今回、スタイリングを決定する上でこだわった点などを教えてください」
加藤氏「みんな根本に『カッコイイものを作りたい』という思いがあるんです。バイクだけに限らず、ビビッとくるものがないと誰も買ってくれないと思うんですよ」
福留氏「ウチのバイクは乗ってみればいいって言われる伝統はあるんです。みんなに聞いたら足りないものはカッコよさだったので『じゃあ中身はいいんだからデザインもよくすれば鬼に金棒だ』となったんですね(笑)。『スズキのくせにカッコイイ』『どうしたスズキ』というネットの投稿も見つけましたが、実際にそうなんです!」
編「スズキのアドベンチャーバイクを語るうえでDRビッグの存在は外せないのでこれについて…」
加藤氏「入社して初めての仕事がDRでした」
編「じゃあ本家の人が手がけてるってことですね!」
加藤氏「Vストローム250に関しても、やっぱりクチバシだろ、っていうのがありました。順を追って解説すると、まず足つきをよくするためにシートを低くする。その一方で航続距離を稼ぐためにタンク頭頂部が高くなる。じゃあこの高低差のバランスをどこで取るか、となるとラジエターカバーなんですね。で、ラジエターカバーの大きさとタンクのラインでバランスをとるためにクチバシを下げているんですよ。650や1000のような『俺たちは大排気量だぜ』というイメージではなく、250はスマートさをアピールして元気に走り込むような感じにしたかったんです」
編「同じくアンケートの高評価ベスト3で17ℓタンクが挙がっていましたが、この17ℓという数字はどこからきたのでしょう?」
福留氏「とにかく旅バイクとして、インパクトのある数値にしたかったんです。量のインパクトって大きいですから(笑)。まずは17ℓという数字を最優先で考え、そこから燃費を掛け算すると500㎞以上。とにかく500㎞を超えられれば燃費いいよね、と考えてました」
編「そういえば、GSX比でリヤスプロケットの丁数を変えてあるんですよね?」
竹山氏「47丁です。もとは46丁でした(即答)。この数字は忘れられません」
編「なぜですか?」
福留氏「ショートにすると(46→47丁にすると)燃費は悪くなる、加速騒音は大きくなる、メカはうるさくなる。といったネガな部分があったからです(※)。でもテストライダーたちが乗った結果、47丁がベストバランスだというのです。ではそれを成立させるために何をしなければいけないかという課題がたくさん出てきまして…。せっかく燃費をよくしてタンク容量も大きくして世の中にアピールできるのに、安易にスプロケを47に変えてしまうと少し残念になりますよね」
※スプロケットをショートにすると、同じギヤ・同じ速度の場合エンジンの回転数が高くなる
編「でも結果的に47丁になったわけですよね。テストライダーの竹山さん、ここはどうやって説得したのですか?」
竹山氏「毎日のように(福留さんに)メールを送り続けました。で、乗ってもらいました。何人も乗ってもらって、比較してもらって…」
福留氏「やはりテストライダーたちの感覚が一番正解なんですよね。そこで走行性能を含めたトータルバランスを考えて考えて考えた結果、47丁という結論に至りました」
こうして開発者たちが切磋琢磨した末に生まれたVストローム250。しかしながら発表からずいぶん時期が経つというのにいまだ価格・発売日が未定とは…? 何ヶ月も前からおあずけ状態で『もう待ちきれない』というファンもいるだろう。本誌が書店に並ぶころには情報も公開されていると信じたい。もちろん誰もがあっと驚くような価格で…である!
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※記事の内容はNo.183(2017年6月24日)発売当時のものになります