250㏄と思い込ませるBMWトリック
マスの集中化を感じる後傾単気筒エンジン
このG310Rが搭載するエンジンは、後傾エンジンである。後傾エンジンとはその言葉のとおりシリンダーが前ではなく後ろへ傾いたエンジンのこと。傾きが逆なら吸排気のレイアウトも逆で、通常のエンジンが後ろから混合気を取り込んで、排気ガスを前から吐き出すところをまったく逆にレイアウト。つまり前方吸気、後方排気のレイアウトを採用している。
その効用はというと、第一にマスの集中化が挙げられる。金属の塊であるエンジンはバイクの中でもかなりの重量物だ。そのエンジンをより重心に近づけてレイアウトすれば、物体としての運動性、…つまりコーナリング特性が高まる。それにエンジン前後長を短くできることで、フレームレイアウトの自由度がアップ。長めのスイングアームが使えるようになり、直進安定性も運動性と同時に確保できるのだ。限られたホイールベースのなかで、マスの集中とスイングアームを長く確保するこの発想は、現代のMotoGPマシンと同じだ。
実際、G310Rで峠道を走っていると、この後傾エンジンによる軽快感を非常によく感じる。コンパクトで小まわりが利き、それでいてマシンも振り回せるからスポーツバイクとして単純に楽しいのだ。
近いのはYZF‐R25か、ニンジャ250か、CBR250RRか? このスパッと切れ込む車体の軽さはKTMのデューク系にも通じるな…。なんてことを考えたところでハっと気付いたのである。G310Rは1つクラスが上の排気量だったと。
正直、走っている間にいつの間にか250㏄だと勘違い。つまり、それほどまでに軽快というワケ。これこそが後傾エンジンの恩恵である。
ただ気になる点もある。それはリンクレスのリヤサスペンション。ここまで運動性が高いからこそ目立つのだが、スポーツ走行していると、リヤタイヤの接地感が少ないのだ。グリップのいいラジアルタイヤを履いているにも関わらず、リヤタイヤにどれだけ荷重がかかって、路面をつかんでいるか? という路面からの情報が少々希薄。だから、どこまで攻めるかの判断がしにくい。とくにステップが擦り始めるあたりのバンク角ではそれが顕著。もう1段か2段くらいプリロードをいじることで接地感が増えれば、さらに安心してアクセルが開けられるようになると思ったのだが、残念ながら車載工具に調整用のレンチがなかった。
これから購入する人はこのあたりも含めてお店に相談してみるといい。いずれにせよ、そんな些細なことが気になり出すほどスポーツできる楽しいマシンであることは間違いない。スポーツ走行の入門車としてもとてもバランスがいいと思うぞ。
ヤタガイ ヒロアキさんの投稿 2017年6月29日木曜日
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※記事の内容はNo.184(2017年7月24日)発売当時のものになります