GASGAS EC300【競技専用モデル】

連載新車体感 ニューモデルインプレッション

No.
184
連載新車体感 ニューモデルインプレッション

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※公開中の誌面内容はNo.184(2017年7月24日)発売当時のものになります

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ガスガス EC300は2ストロークモデル。コーナリング脱出時のエンジンの吹け上がりが楽しいのだ

 

18年モデルより、ガスガスのエンデューロ、モトクロスモデルの取り扱いが、新体制となってスタート。フルモデルチェンジしたこのスペイン生まれのエンデューロモデル・EC300の試乗の機会を得た。

文:谷田貝洋暁/写真:楠堂亜希

スタイリング

エンデューロマシンとは?

モトクロスマシンとエンデューロマシン、オフロードバイクであることは変わらないのだが、実は大きな違いがある。飛んだり跳ねたりするモトクロスが専用のコースを使うスプリントなら、エンデューロは、山中の小道を使ったマラソンというイメージである。そのためエンデューロマシンは絶対的なパワーより、狭路での扱いやすさや疲れにくさが追求される傾向にある。

 

ガスガス EC300をモトクロスコースで試乗インプレッション

 

モトクロス遊びもしたいエンデューロライダーに

スペインのバイクメーカー・ガスガス。日本国内ではこれまで、トライアルマシンを扱うマーチと、エンデューロマシンやトレールマシンを扱う販社が違っていたが、18年モデルのエンデューロモデルの導入から、マーチ(京都府伏見区)が総輸入販売元となってスタートすることになった。

 

ガスガスのエンデューロモデルは、ヘッドライトなしでクローズド専用のXCシリーズと、ヘッドライト付きでナンバー登録も視野に入れ、ウインカーなども付属するエンデューロモデルのECシリーズがある。このたびマーチが国内導入する18モデルのエンデューロマシンはECシリーズ。300cc(103万8000円/発売中)、250cc(102万8300円/9月出荷予定)、200cc(101万8000円/10月出荷予定)と順次発売される予定だ。なお日本国内におけるナンバー登録は、300以外のモデルが可能となる。

“プロジェクト・フェニックス”と名付けられた今回のモデルチェンジでは、ブランニューモデルといっていいほどの変更点が盛り込まれた。エンジンひとつとってみても、クランクシャフト、シリンダー、シリンダーヘッドなどを刷新。最適化が行なわれた結果、パワー曲線をみれば、17モデル比でトルク、パワーともに大幅に進化しているのがわかる。車体に関しても大きな変更が加えられている。まずハンドリングの改善をねらってフレームのねじり剛性を落とすとともに、20%もの軽量化を達成。スイングアームも7%の軽量化をはかりながら刷新されている。サスペンションも、今回からKYB製となり、ガスガス専用設計が行なわれているという。

 

今回試乗したのは18年モデルのエンデューロ用のEC300。2ストロークエンジンを搭載したハイパワーなマシンであるが、今年は完全なリニューアルが行なわれ、まったく新しいモデルとして生まれ変わった。

 

ガスガスのエンデューロモデルに乗るのはおよそ3年ぶりのことであるが、当時の印象は“限られた上級者向け”のモデルというものだった。というのも全般的に扱いにくいキャラクターに感じたのだ。パワーバンドがハッキリとした2ストロークエンジン独特の扱いにくさがあり、この4スロトーク全盛の時代にちょっとオフロードをかじっただけの僕の技量ではアクセルが開け切れなかったのだ。走らせたのはコンパクトなモトクロスコースでそれなりに開けて走っていた記憶があるのだが、見事にカブらせてしまったニガ〜イ記憶がある。セッティングが合っていなかったのか、そもそもそのあたりがシビアだったのか? とにかくエンンデューロマシンを初めて買うような人が視野に入れるバイクではなさそうだ…と思った記憶がある。

今回試乗するのはEC300。2ストローク300ccという、ちょっとこれまた手にあまりそうな排気量のモデルである…のだが、走り出した瞬間、そのエンジンパワーの扱いやすさ、3年前のモデル(それ以後もモデルチェンジはしているが…)とはまったく違うモデルに仕上がっていることに驚く。

 

低速からしっかりとトルクがあり、アイドリング発進もラクラク…とはさすがにいかないが、かなり低速でも粘ってくれるエンジンに仕上がっている。王者KTMやハスクバーナのエンジンと同じ方向性の粘り強さを感じる。これなら僕のようなライダーが乗ってもかぶりそうもない。3年前の苦い思い出を払拭すべく、まずはモトクロスコースへコースインした。

 

ガスガス EC300でジャンプ。しっかりしたフレームはジャンプもきっちりこなす

 

モトクロスコースで一番強く感じたことはエンデューロモデルにしてはずいぶんジャンプが飛びやすいということだ。最近のエンデューロモデルは、ウッズ、ワダチなど難所系で扱いやすさを優先したキャラクターにするのが時流。KTMしKり、ハスクバーナしかり、しなやかフレームや低速重視のエンジンパワー、ソフトなサスペンションを与えられている。実際、僕のようなヘタの横好きライダーがそんなモデルに乗ると難所でマシンに助けられること多々。まるで自分がうまくなったような錯覚に陥るくらいの乗りやすさだ。その一方で、硬めのサスペンションや車体が有利なモトクロスコースへ持ち込むと、ちょっとサスペンションが軟らかすぎてジャンプで飛びにくく感じることがあるのも事実だ。

 

ところがこのEC300は、アクセルワークひとつでスパッと飛び出せる気持ちよさがある。いくらエンデューロモデルとはいえ、購入して獣道ばかりを走っている…というライダーも少ないだろう。やはりコースインすれば、モトクロスコースも走るし、ハイスピードコーナリングはキメてみたいし、テーブルトップはちゃんと飛びたいと思うハズである。このEC300はそんなわがままなライダーの要望にもキッチリと応えてくれると感じた。

 

エンジンもかなり扱いやすくなっている。僕自身がモトクロスコースでアクセルを開けられないのは相変わらずのハズだが、周回を重ねてもいっこうにカブる気配がない。このあたりはライバルの2ストロークエンジンを徹底的に研究した結果だろう。

 

ヤタガイ ヒロアキさんの投稿 2017年8月19日土曜日

 

開けられなくてもかぶらないエンジンに、すっかり気をよくしたところで、シングルトラックのワダチがついた急登やタイトなエンデューロコースへマシンを持ち込んでみた。やはりそんな場面でもエンジンはかぶらない。急坂についたワダチにはまってバタ足での微速前身したりしてみたり、ごく低速域でスロットルのちょい開けちょい締めなど、これでもかというほどエンジンに負担をかけてみたのだが、かぶる気配がない。これくらいの打たれ強さがエンジンにあれば初心者も十分楽しめる。

逆に、ちょっと上級者向きだと感じたのが車体だ。これはモトクロスコースのでのタイトターンでもちょっと感じたことだが、ウッズなどでコンパクトに曲がろうと思ったときに、車体が大きく感じることがある。とくに速度が乗せられないまま、クイックに曲がろうとすると、フロントサスペンションにうまく加重がかかわらず、曲がりにくく感じるのだ。

 

現場にいた、オフロード専門誌や関係者に聞いてみれば、どうやらフロントフォークのサスペンションセッティングと、三つ又あたりの剛性設定に起因するものらしい。ガスガスは以前から、このあたりをカッチリさせる傾向にあるというのだ。確かに車体を見てみれば、フロントフォークを固定するアンダーブラケットがボルト3本留めになっている。エンデューロレースユースでは、ボルトを1本抜いて走るライダーもいるのだとか。

 

とはいえこの剛性感を始めとした車体の設定が、モトクロスセクションで気持ちよく走れる理由になっていることは間違いない。それをボルト一本で、両方のシチュエーションでキチッと楽しめるというなら、これから本格的にオフロードを初めてみようとするライダーには十分魅力的である。

 

まとめると、新しくなったガスガスのエンデューロマシンは、エンデューロバイクとしての性能を高めながら、モトクロス寄りのカッチリした車体に硬めのサスペンションがセットされており、ジャンプもスライドもキチンと楽しめる。つまりエンデューロもやるけど、普段はモトクロスコースでキチッと飛びたい、遊びたい!というファンライドを優先するライダーにはちょうどいいマシンなのではないだろうか。

 

ガスガス・EC300でジャンプ!
最近のエンデューロマシンはジャンプやスライドがしにくいが、ECなら気持ちよくジャンプで飛び出せて、着地も非常に安定していて楽しめる

 

ヤタガイ ヒロアキさんの投稿 2017年8月19日土曜日

GASGAS EC300のディテール紹介!

※記事の内容はNo.184(2017年7月24日)発売当時のものになります

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